日々の生活の中でかかる女性への負荷を減らしていくためには、どうしたらいいのでしょうか(写真:プラナ/PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャ®」の大野萌子です。

このところ女性の自殺者が顕著に増えています。3月16日に厚生労働省と警察庁が発表した「令和2年中における自殺の状況」によると、2019年の自殺者は、男性が1万4078人、女性が6091人で、2020年は男性が1万4055人、女性が7026人でした。男性が微減なのに対し、女性が約1000人も増えていることがわかります。

一概に何が原因であったとはいえない部分がありますが、女性に負担がかかった1年であったことには変わりはありません。そして、それは今も続いています。まだまだ先が見えないからこそ、日々の生活の中での負荷を減らしていくために、まずは現状の把握をするきっかけになればと思います。

家庭内で孤独に抱える心身の負荷

もう1つ、ショッキングなデータをあげたいと思います。自殺者の中で急増したのが同居ありの女性だったということです(厚生労働大臣指定法人いのち支える自殺対策推進センター「10月の自殺急増の背景について」より)。実際に相談業務の現場でも、「夫も子どももいるのにどうしようもない孤独を感じる」「家族と一緒で幸せなはずなのに苦しくて仕方がない」という相談もたくさん受けました。


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昨年4月に、緊急事態宣言が発令され、その後、学校が一斉に休校になりました。パートナーが在宅になった方も多く、家庭の中での役割となっている食事の支度が、3回となりました。いくら簡単なもので済まそう、インスタント食品もあるじゃないかとはいえ、3度の食事を準備することは、かなりの負担です。

家事分担が進んでいるとはいえ、実際は、家事のほとんどを女性が担っているのが現状です。それに加えて、夫が家でリモート会議などをしていると、静かな環境を維持する必要があり、外へ出かけることもままならない中、子どもを静かにさせておくことに限界を感じるなどの声も多く聞かれました。単なる家事負担だけではない、心身への負荷がかかり、自分のリフレッシュもできないまま、悶々と過ごした方は多かったのではと想像に難くありません。

また、普段なら、気分転換になる買い物も、手早くササっと済ませなければという使命に変わり、消毒などの手間に多くの時間をかけた方もいらしたのではと思います。文字どおり、息の詰まりそうな日々の連続だったわけです。

外出も外食もままならず、友人とおしゃべりをする物理的な機会も失われました。オンラインツールなどの普及で、いくらでもつながれるというのはあながち間違いではありませんが、女友達と愚痴を言い合えるのは、パートナーがいないときにこそ、自由に行えることでもあります。

クローゼットの中から小声で泣きながらの相談電話を受けるなどのことも実際にありました。氷山の一角であると思いますし、追いつめられている方は多いと実感します。日々のちょっとした行き違いや不満を気兼ねなく吐き出す場は、必要です。

家庭を持つ女性たちは、家族も仕事もあるのに何に不満があるのかと攻撃を受けやすく、自分の不満がわがままなのでは、とさらに追いつめられてしまいやすい特徴があります。家事も子育ても、仕事もこなし、すべてを担うことは不可能です。限界を超えてなお、頑張りすぎることに危惧を覚えます。家事も育児も365日休みはありません。

言葉にして具体的な「意思表示」を

だからこそ、手を抜くことが大切です。そのためには、家族の理解も必要ですが、この一番身近な家族が協力しないということは珍しいことではありません。しかし、自分の意思を伝えることは大切だと思います。当然だと思っていると、大変なことにさえも気づいてもらえないのです。そのときには、ぜひ、具体的な意思表示をしてください。

家族なんだから「そのくらいわかるでしょ」「察してよ」という気持ちは、残念ながら伝わりません。例えば、「ちょっとくらい手伝ってよ」ではダメで、「掃除をしたいから、30分だけ、子どもを公園に連れて行ってくれる?」と伝えることが大切なのです。

また、外部の人の手を借りればよいとも簡単には言えません。人を介すれば、経済的な負担も多く、すべての人がそれができるわけではないからです。ただ、自分ひとりがやらなければならないという使命感からは、解放されてほしいと切に願います。

スーパーウーマンになる必要はないし、それで自分がつぶれてしまっては元も子もありません。小さな子どもがいたり、サポートの必要な家族がいれば難しいとは思いますが、今一度、ご自身のことを見つめる時間をもっていただきたいと思います。

緊急事態宣言が解除されたとはいえ、以前の生活が戻るわけではありません。自分自身に負荷をかけ、それに気づかずに、ご自身がやらなければならないと、使命感のようなもので頑張っている女性の方は本当に多くいると思います。まだまだ、限られた環境の中でできないことも多くあるとは思いますが、ご自身のひとり時間、楽しみ、リラックス方法をぜひ模索していってください。決して、ひとりで抱え込まないことを心から願っています。