【お菓子連載・甘いときめき、小さな宝箱】
第14回「efuca.」ネコ、イヌ、ヒト……、絵柄もぜんぶ“生地”でできた愛らしいクッキーが人気の菓子ブランド

人気のデザイナーやイラストレーターを起用したお菓子のパッケージは、まるで小さな宝箱。デザインに込められた想い、ストーリー、そしてお菓子は宝石のようにきらきらと輝きます……。そこで、コンセプトから、味、デザインに至るまで、こだわりがギュッと詰まったブランドをピックアップ。今回は、お菓子作家で絵本作家でもあるイトウユカさんによる兵庫県芦屋の「efuca.」をご紹介。楽しいクッキーとモダンなパッケージが生まれた背景などを探ります。

●取材・文:中村美枝(JAM SESSION)

▼efuca.の成り立ち、コンセプトについて

今回はお菓子教室なども運営し、最近ではオンラインや動画でのレッスンも始めた「efuca.」の店主・イトウユカさんと、ギフトボックスのデザインを担当した、グラフィックデザイナーでアートディレクターの白本由佳さんにお話しを伺いました。

──キャンドルアーティストのマエダサチコさん主宰のキャンドルスクール「Vida=Feliz」のアシスタントを経て、お菓子作家として「efuca.」を設立されたそうですが、きっかけを教えてください。

イトウさん:「Vida=Feliz」のアシスタントは、私が東京で暮らすことになった2006年。友人のマエダさんに「雑用でもしますよ」と私からアプローチしてお手伝いさせてもらったことが始まり。その後、教室の生徒さんが増えたこともあって、正式にアシスタントになりました。もともとお菓子作りが好きだったこともあって、レッスン後のお茶の時間に私の作ったお菓子をお出しするようになったんです。すると「おいしい」「作り方を教えて」など、みなさんに喜んでいただけて。アシスタントをしながら、少しずつお菓子の注文を受けるようになりました。

アシスタントを始めて2年ほど経った頃。今後のことを模索していたら、マエダさんが「お菓子で独立してみたら?」と背中を押してくれて。2009年にお菓子作家として活動を始め、お菓子教室をスタート。同時にお菓子ブランド「efuca.」を立ち上げました。2012年に出産を機に拠点を神戸へ移し、今に至っています。

──動物や人の顔など、「efuca.」のクッキーは絵柄もクッキー生地でできていて、アイシングクッキーとは違うかわいらしさがありますね。

イトウさん:アイシングクッキーを作る方はすでにたくさんいましたから、マエダさんともいろいろ話して、クッキー生地だけでかわいらしさを表現できたらいいよねと。そこで、絵柄もすべてクッキー生地なら金太郎飴方式しかないなと、作ってみたのが始まりです。

──絵柄のアイディアはどのように生まれるのですか?

例えばカオクッキー。デザインはだいたい決めていますが、顔のベース作って、ヘアスタイルや洋服はそのときの気分で作ることが多いです。「この色のこのパーツを組み合わせたらかわいいかも」とか、そのときの気分なので、どんなものができるのか、自分でもわからずに作っているんです(笑)。

同じパーツでも組み合わせしだいで男の子にも女の子にもなる。配置が少しずれただけで、真顔だったり、笑みを浮かべていたり、表情が違ってきます。手作業なので、まったく同じ絵柄は作れないのですが、それがかえって楽しくて。生地をカットしていく工程にもいつもワクワクしています。

クスっと笑えたり、楽しい気分になれたりする、おもしろいお菓子があるとテンションがあがるというか、なんでもない日が特別になる気がするんですよね。私自身も作るのが楽しいので、お客様にもその楽しさが伝わるクッキーであれたら嬉しいです。

──客層はどんな方が多いですか?

20〜30代の働く女性が中心でしたが、『さがそ!〜おかしのくに』という絵本を作ってからは、お子さんや、そのお母さん層のお客様が増えました。ネコ好きな方や雑貨好きな方もいらっしゃいます。特に雑貨感覚で購入される方には、「味は期待していなかったのに、食べてみたらおいしくてびっくりしました」とよく言われます(笑)。

▼efuca.の商品・アートワークについて

──お菓子そのもののこだわりについて教えてください。

イトウさん:バターは白くて雑味のないカルピスバターを使っています。小麦はなるべく国産でおいしいものを吟味。野菜やフルーツのパウダーを使って味わいと、色を表現しています。以前、赤は着色料をたくさん入れないと色が出せなかったのですが、最近はビーツとフランボワーズのパウダーを組み合わせて真っ赤を表現できるようになりました。今後も工夫して、色を増やしていけたらと思っています。

でも、鮮やかなピンクとグリーンはどうしても着色料でしか出せなくて。日常のお菓子には向かないかもしれませんが、その鮮やかな色合いにワクワクすることが、心の栄養につながるなら、たまにはいいのかなと。特別な日のおやつ、プレゼント……。お客様に選んでいただけるよう、着色料を使ったものも一部ですが作っています。

──ギフトボックスのデザインは、ADC賞、JAGDA 新人賞を受賞した白本由佳さんが手がけられています。依頼のきっかけは?

イトウさん:教室だけでなく、店舗を構えてお菓子の販売を本格的に始めることになったとき、ギフトボックスやロゴのデザインをどうしようかと思っていたら、お菓子教室の生徒さんが知り合いの白本さんを紹介してくれたんです。

白本さんも独立された頃で、同じ年。共通点があって、ご縁を感じたんです。大きさはこれくらいという希望を伝えたくらいで、そのほかはほとんどおまかせ。好きに作ってもらいました。

ボックスは職人さんがひとつずつ手作業で作ってくれていて、箱として販売できるくらいのクオリティ。クッキーを食べた後は小物入れなどに使っていただきたいので、商品名などのシールをキレイにはがせるようにしています。

──白本さんに伺います。「efuca.」のギフトボックスのパッケージを手がけるにあたって、どんな点を大切にされましたか?

白本さん:初めに作った正方形の6種のボックスはもともと、「efuca.」のクッキーを「代官山 T-SITE」で販売するためのものでしたので、「代官山 T-SITE」になじむ大人っぽさと、「efuca.」のお菓子のようなかわいくて楽しい雰囲気が出せるデザインを心がけました。

箱自体は上下左右がないデザイン。90度まわすと配色のイメージが変わるように工夫をしています。その後もずっと「efuca.」のさまざまなクッキーに対応できるよう、クッキーと結び付くモチーフは箱のデザインに入れず、中身に合わせて替えられる帯を付けています。

──「パターンクッキー」は、白本さんがクッキーそのもののデザインも手がけられたと聞きました。意識された点、こだわった点を教えてください。

白本さん:6種のギフトボックスの制作と同時に、このクッキーのデザインを考えていました。「efuca.」のクッキーをグラフィカルなパターンで作ってもかわいいのではないかと思い、パターン模様をデザインしてみたんです。幾何学的でシンプルなデザインではありますが、焼きあがると少しふっくらし、ちょっと歪んだ形になるのがかわいいです。

▼ギャラリー


白本さんとコラボした「パターンクッキー(ギフトボックス入り)」1,500円(税込)。格子やストライプなどシンプルな模様が印象的。「着色料を一切使わず、野菜のパウダーやココアで色と味を表現しました。男性への贈り物に選ばれる方も多いですね」(イトウさん)


バレンタイン、母の日、ハロウィン、クリスマスなど季節の行事ごとに販売する「メッセージ付き おまかせBOX」7枚入3,200円(税込)、9枚入3,900円(税込)。「それぞれの行事をイメージしたモチーフを入れたクッキーと、その行事に合ったメッセージ入りクッキーを詰め合わせ。どちらのギフトボックスも白本さんのデザインです」(同上)


男の子、女の子、服装、ヘアスタイルもさまざまな「カオクッキー(ギフトボックス入り)」1枚626円(税込)。「それぞれのカオの、なんとなくの名前や性格を想像しながら作っています。キャラ設定して作ったほうが、なぜか表情が生き生きとして見えるんですよね」(同上)


「efuca.」の看板商品のひとつ、ネコのクッキー(ギフトボックス入り)1枚464円(税込)。「カオクッキーと同じく、金太郎飴のように生地のパーツを組み合わせて作っています。1枚のクッキーでも表と裏で微妙に表情が違ったりするので、どんな顔のネコが届くかお楽しみに」(同上)