火中の栗を拾う−−。森喜朗氏(83)の後任で「東京五輪組織委員会会長」に就任する橋本聖子氏(56)には、その覚悟が求められていただろう。しかし彼女の人生を振り返ると、その生きざまは、過去も現在も、川に放たれた笹舟のようなもので……。

「今後、五輪に関する決断はすべて “橋本会長” にかかっている。『実施するかどうか』『無観客でやるかどうか』、これらはどんな決断をしても、世間から猛批判を受けることは必至だろう」(永田町関係者)

 2月18日、“女性蔑視” 発言で辞任に追い込まれた森氏の後任として、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長に、橋本氏が就任した。そして、この就任は、「貧乏くじ」であるだけでなく、大きな “火種” をはらんでいる。海外でも報じられた「セクハラ問題」だ。

 2014年のソチ五輪の閉会式後、選手団団長(当時)の橋本氏が、フィギュアスケート男子の高橋大輔選手(34)に酔って抱きつき、キスを強要したとされている。ある都庁関係者は、こう語る。

「橋本氏が組織委の新会長になる可能性が高いとIOCに打診した際、セクハラ問題の表面化からか、反応があまり芳しくなかったようです」

 現役時代に冬4回、夏3回と計7回の五輪出場を果たし、“スーパーウーマン” と呼ばれた橋本氏だが、「酒に飲まれてしまう弱点がある。高橋選手の件もそうだと思いますよ」と政界関係者は話す。

 一方、選手団本部役員として五輪に何度も参加し、橋本氏とも親交が深い元JOC国際業務部参事で、スポーツコンサルタントの春日良一氏は、「ソチ五輪では、彼女が選手団を率いて成功に導いた。そのことで高揚したんでしょう。本来はとても真面目な人だし、私にはIOCが問題視するとは思えませんね」と言う。

 橋本氏以外に、会長の適任がいなかったのも事実だ。

「橋本氏はIOCのトーマス・バッハ会長(67)とも、直接メールでやりとりできる仲。『若い女性がいい』という菅義偉首相(72)の意向も踏まえ、森氏から30歳近く若返る人に白羽の矢が立ちました。

 ただ、橋本氏はギリギリまで『できたら断わりたい』と話していました。セクハラ問題を蒸し返されることが、『子供たちに対して恥ずかしい』と言うんです」(政治部デスク)

 橋本氏には、9歳上の夫と6人の子供がいる。前出の春日氏は、「1998年に結婚したとき、披露宴に出席したんですが、彼女の夫は、とにかく縦にも横にも大きい人(笑)。さすがは、国務大臣のSPも務めた警察官です」と話す。夫は再婚で、彼の連れ子が3人いた。

「結婚後、彼女は3人出産しました。その子たちに『せいか(聖火)』『亘利翔(ぎりしゃ)』『朱李埜(とりの)』と、全員に五輪にちなんだ名前をつけました」(スポーツ紙記者)

スピードスケートでは、中学3年生で全日本選手権を初制覇。以降、10連覇を達成し、冬季五輪での日本女子史上初のメダルを獲得した(写真・比田勝大直)

 そもそも五輪がなければ、「橋本聖子」はいなかったと言っても過言ではない。

「彼女の名前の『聖』の字は、五輪の聖火からきています。生まれ年の1964年東京五輪の聖火に感動して、彼女の父親がそう名づけました」(春日氏)

 1992年のアルベールビル五輪で銅メダルを獲得したスピードスケートを始めたのも、父の影響からだった。

「なんとしても自分の娘を五輪に出場させたいと、彼女の父親は3歳からスピードスケートを始めさせたんです。競走馬の牧場主だった父親は、『娘が転ぶと、馬用のムチで叩いてでも立ち上がらせ、厳しく指導した』と話していました。五輪に出場してからも橋本氏は、つねに『父のために……』と口にしていました。

 彼女を見ていると『意志が弱い人なのでは?』と感じることがあります。1988年から始めた自転車競技も当初、本人は様子を見ていたんです。でも、周囲に『夏冬両大会に出たらおもしろい』と言われ、だんだんと押し切られてしまった」(スポーツライター)

 橋本氏を知る人の多くは、「責任感が強く、面倒見がいい」と話すが、その一方で優柔不断な “流されやすい人” の一面が見え隠れする。

「国会議員になったのもやはり、父親が『政治家になってほしい』と言ったからだと聞いています。本人は、そこまで政治家になりたくなかった。でも、義兄も当時自民党の衆議院議員で、森喜朗幹事長(当時)から激励され、受諾してしまったそうです」(春日氏)

 前出のスポーツライターは、「アルベールビル五輪後の取材で、今後について聞かれると『夢は普通の家庭に入って、専業主婦になることです』と答えていました」と話す。

 じつは本誌は、彼女の “慎ましい素顔” をたびたび見てきた。2018年の平昌五輪の最終日、公式グッズショップには長い行列ができていた。そこで、日本スケート連盟会長として視察に訪れていた橋本氏が、一般客とともに並ぶ姿を目撃した。グッズなら、頼めばいくらでも、もらえる立場だろう。

 また、まだ「老後2000万円問題」が尾を引いていた2020年1月、本誌は資産額が2000万円以下だった与党議員に「老後資産について」見解を尋ねた。そのときは橋本氏から、「夫と共働きなので、質素に暮らせば、生活に困ることはないだろうと考えています」との回答を受け取っている。

 今回、思わぬ “大役” を負わされた橋本氏。だが、まだ家庭には未成年の子供が2人おり、心の中にはつねに「夫とともに慎ましい生活を」という思いはあるはずだ。それだけに今回の “無茶ぶり就任劇” は、痛手だったに違いない。

「とにかく真面目な人なのは間違いない。ただ、どちらかといえば、彼女は “普通の人” なんですよ」(春日氏)

 火中の栗を拾わされたその姿は、「セクハラ女帝」には、ほど遠く見える−−。

(週刊FLASH 2021年3月9日号)