Googleマップだけじゃない! 2021年版 使いやすい無料「ナビアプリ」とは?

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手軽に使えて音声認識も高精度なスマホの無料カーナビアプリ

 スマートフォン(以下スマホ)で使えるカーナビの最大の魅力は、アプリをインストールすれば誰でも利用できることだ。無料で使えるものも多い。

 スマホさえあれば、新たな機材を必要ともしないので、邪魔にならず使いたいときにいつでも使える。そのため、車載カーナビを使っていても、スマホにはナビアプリをインストールしている人は多い。

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 最近では国産車だけでなく、輸入車でもスマホのカーナビアプリを車載機で使える「CarPlay」や「Android Auto」への対応のディスプレイオーディオを標準装備したモデルも増えている。どのアプリが理想的なのかを迷う人も少なくないだろう。

 そこでナビアプリの現状を踏まえつつ、お勧めのナビアプリを提案してみたいと思う。

フェラーリ「FF」のApple CarPlay対応ディスプレイオーディオ

 そもそもカーナビアプリとは一体何なのだろうか。

 スマホにはさまざまなセンサーが内蔵されているが、カーナビ機能で利用されるのは位置情報取得用として使われるGPSレシーバーで、それ以外にアプリによっては内蔵するジャイロセンサーを併用する場合もある。

 ただ、大半のアプリではGPSだけで測位するため、車載カーナビのようにトンネル内やビルの谷間でも、常に安定して現在地を表示できるわけではない。とくにGPSの電波が反射しやすい都市部や山間では、誤差が出やすいことは知っておきたい。

 一方で、スマホは通信手段を標準で備えている。そのため、サーバーと通信でつながり、高精度な音声認識も利用できるのは大きな強みになる。

 たとえば目的地を探す場合、音声で目的地を読み上げるだけで即座に候補が表示される。しかも「お腹空いた」といった曖昧なワードに対しても、意味を理解して関係のある候補を表示できるのだ。また地図データも、サーバから常に最新版をダウンロードするため、データを更新する必要がないのも大きなメリットとなっている。

 最近はディスプレイオーディオとの連携も重要なポイントだ。それを実現する規格として用意されたのが、iOSなら「CarPlay」、Androidなら「Android Auto」となる。

 いずれも接続することでスマホ内にあるカーナビアプリを含む一部のアプリが、ディスプレイオーディオなどの車載機から利用可能となる。また、これと同様の別規格としてトヨタなどが用意した「SDL(スマートデバイスリンク)」がある。

 では、無料で使えるアプリの特徴と、それぞれのポイントをご紹介したい。

●Googleマップ

 Googleマップは、地図検索としても多用されることが多く、日常生活でも利用する機会が多いアプリだ。

ルート案内中は分岐した先の道路名と、別ルートを走行した場合の到着時間が案内される

 利用者から収集したデータを元に、交通情報をはじめ、各施設のおすすめ情報などを反映するなど、Googleならではの特徴を活かしたアプリとなっている。車載機との連携では、CarPlay、Android Autoのいずれにも対応。目的地検索は文字入力以外に音声コマンドによる入力が使えるのが便利だ。目的地を検索したら「ナビ開始」を選べば、即座にルートガイドがスタートする。

 Googleマップの案内ルートは、高速道と一般道をバランス良くガイドして、到着時刻も比較的高精度に案内することが多い。その案内機能はかなりシンプルだが、車線ガイドと同時に交差点名の読み上げもおこなうなど、その内容は必要十分といった感じだ。

 ただ、一般道での案内ではショートカットして案内することが多く、時折すれ違いが難しい極端に狭い道を案内することもある。

●Yahoo!カーナビ

 Yahoo!カーナビは、ヤフー地図とは別に用意された、いわばカーナビ専用アプリとなる。車載カーナビに匹敵するきめ細かなルートガイドが特徴で、交差点拡大図や曲がるべき交差点名も読み上げて案内し、交通情報も日本道路交通情報センター(JARTIC)からの情報に加え、ユーザーが利用している状況を反映するプローブ情報までも含む。

スマホを横にして使うと、地図と分岐点ガイドがバランス良く表示される

 とくに横向き画面では、進行方向に加えて分岐点までの距離と交差点名、車線ガイドを表示するなど、その充実ぶりが光る。駐車場の満空情報やオービス地点情報も備えているのも見逃せない。

 運転状況に応じた点数評価「ドライブ記録」を備え、このデータは安全運転をした際に契約した自動車保険のキャッシュバックなどに活かされる。

 ただYahoo!カーナビのルート案内は、近距離の場合はあまり問題にならないが、高速道路を利用する中長距離だと「おすすめ」で一般道を優先して案内されることが多い。その場合は「高速優先」を選んで対応するといい。また、CarPlayには対応するものの、Android Autoには非対応のままとなっている。

iPhone標準の「Maps」はどう? カーナビとして一番使いやすいのは?

●Apple Maps

 Apple Mapsは、iPhoneユーザーなら使うことが多い、iOSに標準装備されている無料のナビアプリだ。

トヨタ「ライズ」のディスプレイオーディオでCarPlayを起動。Apple Mapsは「マップ」と表示される

 以前は、日本版は交通情報も表示できないなどGoogleマップに大きく見劣りし、それがiPhoneユーザーのGoogleマップ利用に拍車をかけたといわれている。しかし、2020年8月以降、iOSのアップデートに伴って仕様を大幅に刷新し、街並みをリアルに映し出す「ルックアラウンド」や、交通情報の提供も始まった。さらに、リアルタイムの天気情報や、地元の人しか知らないであろうグルメ情報や買い物情報なども提供する。当然ながらCarPlayへの対応は果たしている。

 Siriを使った音声での目的地検索に対応しており、この使い勝手の良さは高く評価していい。目的地をレストランなどとした場合は「食べログ」の評価とも連携できる。

 目的地までのルートは基本的に実用的で、中長距離の案内でも一般道と高速道をバランスよく使っている。ただ、案内自体は全体的にシンプルで、車載カーナビとの比較ではもの足りなさを感じる。また、せっかく準備した新機能も全国にまで及んでおらず、それは整備されるのを待つしかない。

●TCスマホナビ

 TCスマホナビとは、トヨタ自動車が提供する無料のカーナビアプリだ。SDLに対応したことで、トヨタやスズキなど一部の車載カーナビやディスプレイオーディオで利用が可能となっている。

トヨタ「ヤリス」のディスプレイオーディオと連携した画面

 地図データはゼンリンデータコムが提供し、地図上にリアルなアイコンで施設をガイドする他、交差点ガイドも3Dイラストで車線ガイドまでサポートする。交通情報はトヨタが独自に収集したプローブ情報を活用。駐車場の満空情報やオービス地点情報も備える。2021年3月31日にサービスを終了し、新たなナビアプリに引き継がれる予定になっている。

●LINEカーナビ

 LINEカーナビは、LINEが提供するAIアシスタント「Clova」を活用した高精度な日本語音声認識と、トヨタのハイブリッドナビを組み合わせたものだ。

ルートガイド中でも、大きめのアイコンで音声コマンド入力が常にスタンバイしている

 最大のポイントは、アプリ上にマイクを起動するアイコンを常時表示させて、いつでも音声によるコマンド入力が可能となっていること。さらにスマホを見ることなくLINEメッセージの送信を可能とするなど、メッセンジャーアプリとの連携も魅力。これにより運転時の「ながらスマホ」を防止し、安全かつ便利に利用できることを特徴とした。SDLに対応する。

 ただ、2021年5月31日でサービス終了となる。

●ポータブル スマイリングロード

 ポータブル スマイリングロードは、損保ジャパン日本興亜が提供する無料アプリだ。本来なら有料となるNAVITIMEを無料で使えるようにした。

メインメニューはタイル式タグを使っているので使いやすくわかりやすい

 基本的な機能は誰でも利用できるが、機能をフルに使うには会員登録が必要となる。また、安全運転が評価されると保険料が最大20%割引される特典も用意されている。

 目的地を検索すると、ビル内のテナント一覧や周辺にある関連施設などが表示され、探しやすい。ルート案内中は方面案内標識や車線ガイドも表示するなど、無料とは思えない充実度が魅力だ。交通情報はVICSやプローブ情報を使い、渋滞考慮もおこなう。

 目的地はフリーワード検索/地図検索/住所検索と3つの条件の下で探せ、ルート条件も高速/無料の条件が選べる。また、損保ジャパン日本興亜の自動車保険契約者は、距離/ECO/安全の3つが探索条件に加わる。

 走行中に音声で事故多発地点や気象情報を案内するほか、駐車場の満空情報にも対応し、事故に遭ったときの緊急連絡先も登録しておける。ただ、目的地を検索したときにヒット率があまり高くはないようで、経由地の登録ごとに探索条件が設定できないのはマイナス点。保険割引の基準となる安全運転の評価が厳し過ぎるとの声も聞かれる。

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 アプリを実際にカーナビとして使うには、車線ガイドや交差点での案内など、ルート案内の親切度が重要となる。

 この視点で選ぶと「Yahoo!カーナビ」「ポータブル スマイリングロード」の充実ぶりが光る。ただ、Yahoo!カーナビはルート探索を終えた後「おすすめ」「高速優先」「一般優先」を状況によって選ばないと、長距離を延々と一般道を走るハメに陥るから注意が必要だ。

 スマイリングロードは比較的高い評価が与えられるが、機能をフルに活かすには保険契約が必要となる。「TCスマホナビ」「LINEカーナビ」も機能的には充実しているが、サービス提供期限が決定しているなかではお勧めできない。

 利用率が高い「Googleマップ」「Apple Maps」は、いずれもルート案内でもの足りなさを感じてしまう。いずれも、Yahoo!カーナビなどと比べたら、その機能差に大きな違いを感じてしまうはずだ。

 案内ルートについても、Apple Mapsはいまのところ不安は感じないが、Googleマップは一般道で対向車とすれ違えないような細い道路を案内されるのが怖い。

 こうした状況を踏まえると、保険契約者ならスマイリングロードがイチ押し。完全無料で使うならYahoo!カーナビが概ね高い評価が与えられると思う。