GO TOトラベルを再開するなら休祝日の前当日は対象外とせよ/日沖 博道
緊急事態宣言の解除が視野に入ってきたが、同時にGO TOキャンペーンの再開の是非が議論になるだろう。再開が感染拡大の第4波につながる懸念を口にする人も少なくない。
それでも小生は、日本経済の底割れ回避のためにはGO TOというカンフル剤も必要だという意見に与したい。特に地域経済の実態として観光に依存している比重が大きいため、GO TOトラベルの再開を待ちわびる地方の人々の気持ちは痛いほど分かる。
しかし再開は無条件でという訳には行かない。キャンペーンが感染再拡大に直結してはならないし、所詮は税金投入なので金額的に無尽蔵でなく、費用対効果を厳しく求めるべきだ。
その意味からも、GO TOトラベルを再開するなら、是非付け加えて欲しい条件がある。それは「休祝日の前日・当日は対象外とする」ということだ。いわゆるピーク時の利用を敢えて対象から外せという話だ。
ちょっと聞くだけでは乱暴な条件に聞こえるかも知れない。なんといっても、この条件では幼稚園児から高校までの生徒を抱える家族のキャンペーン利用は難しく、彼らは「不公平だ」と大いに不満の声を上げるだろう。しかし政策目的を取り違えてはいけない。GO TOトラベルの政策目的は「観光業の底支え」であって、「国民全般のレジャー促進」ではない。彼ら子育て家族の不公平感は別の政策で解消してもらえばよいと考える。
ではなぜこうした条件付けが必要なのか。それにはまず、武漢ウイルス感染拡大の第三波が声高に警戒されるようになる前の状況を思い出して欲しい。
全国の観光地がGO TOトラベルを利用した客でごった返していた。しかしよく事態を見ると実は、週末や祝祭日の前・当日だけが異常に人が溢れていた(人気観光地では通りのあちこちで、それこそ「他人と肩と肩がぶつかりそうな」状態だった)が、それ以外の日は「そこそこ」でしかない、という観光地が意外と多かったのだ。こうした状況を再度繰り返すことは健全ではない。
利用客は、施設内はもちろん戸外でも人混みによる「密」を警戒せざるを得ないので、十分にリラックスできない。ましてや本当に感染してしまえば目も当てられない。ホテルや旅館、土産物屋や飲食店などの現地の観光事業者は、週末や祝祭日の前・当日だけに客足が偏るので、余計な人件費の出費を余儀なくされるのに、月を通しての収入は大したことがないという残念な結果に終わる。それでも週末や祝祭日の前・当日に観光地を訪れた人は待ち時間が長くて十分なサービスを受けられず、不満を感じてしまう。誰にとっても望ましくないのだ。
休祝日の前日・当日をGO TOトラベルの対象外とすることで何が変わると期待されるのか。ズバリ、客足が分散されるのだ。スケジュールに自由度がある客は何としても平日に行こうとするので、どの観光地でも来客数がある程度平準化されると期待されるのだ。
すると先ほど挙げた「不健全な状態」がかなり改善されるだろう。観光事業者は本来の従業員だけで週を通して対応でき、利益を生みやすくなる。(臨時の手伝いが不要になるので)サービス水準は底上げされ、客の満足度は上がり、しかも感染リスクも抑えられる。いいことづくめだ。
しかも「巣ごもり」に飽きている反動で旅行に行きたい人々は多く、どうしても平日に都合がつかない人たちは結局「すべて自腹で」でも観光にはいくだろう(GO TOトラベル利用時より客室のランクは落とすかも知れないが)。GO TOトラベルによる人混みに恐れをなしていた人たちも、「少しは平準化するのならば」と重い腰を上げる可能性が出てくる。要は全体的に需要が底上げされる可能性がかなりあるのだ。
しかもある程度自腹出費の割合を増やしながらのキャンペーンとなるので、予算使い切りのタイミングが延びることになる。これは費用対効果を上げながら政策効果が長持ちすることも意味する。
つまり同じ予算で、地方を支える「度合い」も「期間」も改善されるということだ。これはかなり大きなファクターだといえよう。
所詮、GO TOキャンペーンは税金によるものなので、そこで使われる金額の分だけ将来の税金となって我々国民に返ってくる運命にある。だからこそ政策の中身と費用対効果が常に問われなければならない。
政府は漫然とキャンペーンを再開するのではなく、以上の事柄を踏まえ、GO TOトラベル再開にあたっては「休祝日の前当日は対象外」という条件付けを是非実施して欲しい。