0分山だけどすり減った市販タイヤとは違う! レース用のタイヤはなぜ「テカテカ」「ツルツル」なのか

市販車のタイヤとはもはや別モノ!
世界最高峰のフォーミュラカーレースであるF1を筆頭に、スポーツカーレースの最高峰シリーズ、WEC、さらに国内で最大の人気を誇るスーパーGTや国内トップフォーミュラのスーパーフォーミュラに至るまで、レーシングカーに装着されているタイヤは、すべて表面がテカテカでツルツルした状態だ。

私たちが日常で使用する市販モデルの装着タイヤと違って、溝はなく、普通のラジアルタイヤを基準とするならば、レース用タイヤはスリップサインが出た状態を通り越して、もはや“0分山”とも呼べるレベルにあるのだが、なぜ、レース用のタイヤは溝がないうえに、表面が“ツルツル”なのか?

市販のラジアルタイヤと同様に、レース用のタイヤも円形かつ黒い状態ではあるものの、じつはまったく別物で、レース用タイヤは特殊な構造となっているほか、使用されているゴムもレース専用に開発されたもの。さらにドライ路面においては排水の必要がないことから、いわゆるドライ用のスリックタイヤは路面との設置面を増やして、グリップを高めるべく、溝を排したデザインが採用されている。
加えて使用されている金型やゴムの関係により、新品の状態は光沢を持つことから、レース用のタイヤは意図することなく、ツルツルでテカテカの状態となっているのだ。
タイヤをめぐる駆け引きがレース結果を左右する!
ちなみにレース用のスリックタイヤは前述のとおり、溝を排してタイヤの設置面積を増やすことでグリップを高めているが、市販のラジアルタイヤは別の話で、仮に摩耗して溝がすり減り、路面との設置面積が増えてきたとしても、グリップが高くなるわけではない。某タイヤメーカーでモータースポーツ用のタイヤ開発を担うエンジニアによれば「劣化に応じてゴムのパフォーマンスが低下するので、溝が減ってスリックのような状態になっても、グリップは上がることはありません。かなり危ないと思いますよ」とのことだ。
ちなみにスリックタイヤに使用されているゴム、いわゆるコンパウンドは「ソフト」や「ハード」など、競技やメーカーに合わせて数種類がラインアップされており、スーパーGTのようにタイヤの競争が展開されているカテゴリーでは、さらに「ミディアム」、「スーパーソフト」など細分化。コンディションやチームの戦略に応じて選択できることから、タイヤをめぐる“カケヒキ”がリザルトを左右することも珍しくはない。
さらに雨天時には排水溝の入ったウェット用タイヤもラインアップされているのだが、排水用の溝のパターンを含めて、その種類はタイヤメーカーによって千差万別。溝の深さひとつでパフォーマンスが変わってくるだけに、タイヤマネジメントがレインレースにおける見どころといえるだろう。

なお、ジムカーナ競技の改造車クラスで使用されている“Sタイヤ”は、公道も走れるセミレーシングタイヤで、排水溝をレイアウト。ドライ路面でのグリップ性能とウェット路面での排水性を両立したタイヤでサーキットでも抜群のパフォーマンスを披露する。

さらに近年はSタイヤに変わって、ハイグリップラジアルタイヤがモータースポーツシーンで活躍しており、全日本ラリー選手権やジムカーナのPNクラス、トヨタGAZOOレーシングの86/BRZレースで市販の高性能スポーツラジアルが活躍。タイヤメーカーも最新モデルを投入するほか、サイズラインアップを増やすなど激しい開発競争を展開しているだけに、今後もモータースポーツの経験をもとに、タイヤのパフォーマンスは進化を続けていくことだろう。
