全固体リチウムイオン電池(写真:JAXAの発表資料より)

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と日立造船は2日、宇宙での全固定リチウムイオン電池の実証実験に関して、共同研究契約を締結すると発表した。

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■月や火星の探査で必要な民間との共同体制

 今後10〜20年のあいだに、月や火星への探査活動に関して国内民間企業も加わり海外と競争することが予想されるという。

 JAXAは革新的な宇宙探査技術の共同研究を行うため、2015年に「宇宙探査イノベーションハブ」を創設し、2019年にはその宇宙実証第1号として、「長距離空間通信を実現する光通信モジュールに関する研究」をソニーとともに実施。国際宇宙ステーション(ISS)・日本実験棟「きぼう」で、さまざまな成果が生み出されたという。

 JAXAと日立造船は、宇宙探査イノベーションハブの研究提案公募で、全固体リチウムイオン電池の共同研究を2015年から開始した。きぼうの船外に備え付けられた装置に全固体リチウムイオン電池を設置し、過酷な環境で稼働するかどうかが確認されるという。

 火星や月の表面では、ローバーや観測機器の活用が期待される。過酷な温度環境であるため、全固体リチウムイオン電池が耐えられるかどうかを確認するための実証実験が必要になる。

■次世代電池である全固体電池

 充電により繰り返し使用可能な「2次電池」で、現在普及しているのがリチウムイオン電池だ。だが、リチウムイオン電池を構成する電解液は可燃性をもつため、熱によって引火しやすいという欠点をもつ。とくに真空かつ温度変化が激しい宇宙環境では、従来のリチウムイオン電池の使用は困難だという。そこで、電極と電解質がすべて固体である「全固体電池」が次世代の2次電池として期待されている。

 JAXAと日立造船は今後、全固体電池の宇宙実証に必要な装置を開発し、検証試験を行う予定だ。秋以降にISSに運ばれ、年末から約半年かけて実証実験を行う予定だとしている。