なぜ廃止? リコールステッカーが姿を消した理由

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リコールステッカーって何だ?

2020年11月、クルマに関係するあるものがひっそりと姿を消していたことをご存じだろうか。それは、「リコール」…のステッカー。運のいい人は一度も縁がなく、クルマに詳しくない人は、その存在すら知らないかも?



そもそもリコール(制度)とは、自動車の設計・製造過程での不具合が原因でそのクルマが保安基準に適合しなくなるおそれがある、または適合していない場合に、自動車メーカーみずからがその旨を国土交通省に届け出てユーザーへ連絡し、無料で修理することを義務付けたもの。道路運送車両法第63条の3、「改善措置の届出(リコール届出)」に明記されている。ポストに「リコールのお願い」という郵便物が届き、修理のためディーラーへクルマを持ち込んだ経験がある人も少なくないはずだ。

これまでリコールにより対策を施したクルマには、その証しとして届出番号を記した“統一的な”楕円形のリコールステッカーが貼り付けられてきた。年式の古いクルマでは後部のウインドー、最近ではドアストライカー(運転席側Bピラーの下部)付近に見られるものだ。

ちなみにこの楕円形のステッカーは、改善措置の実施状況を認知しやすいよう、自動車メーカーが自主的に貼り付けていた。正確に言えば、「“統一的なリコールステッカー”を11月に廃止するとメーカー各社から報告があったと、20年の10月23日に国土交通省が発表した」となる。

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なぜ廃止できたのか?

廃止の理由は、「無線通信を経由したソフトウェアの更新によるリコール作業においてはディーラー等へ車両を入庫することなく改善措置が実施でき、ステッカーの貼付は、自動車ユーザーの利便性を損なうことなどの背景から、メーカー各社から、統一的なリコールステッカーの貼付を廃止する」というもの。

意外にも、コネクティッドカー(プログラム改善などを遠隔で行えるクルマ)の増加もその一因なのだ。また、各メーカーのホームページで簡単にリコールの確認ができるようになったことも廃止の理由としてあげられている。

従来、リコールステッカーは勝手にはがすことができず、継続検査(車検)のときに対策整備済みでなければ検査を通せないとされていた。でも、筆者は愛車をいわゆる“ユーザー車検”で自動車検査登録事務所(車検場)に何度も持ち込んでいるが、これまでにその有無を調べられたことはなかった。そんな、言わば実効性のないものだったから廃止は歓迎できる。ただし対策部品などに交換する場合も含めて、ディーラーへの持ち込みが必要なのは言うまでもない。

とはいえ、今回廃止されたのは“統一的な”リコールステッカーのみ。メーカーやインポーターによっては、以後も独自のステッカーの添付や識別記号などを施すようだ。実際、とあるインポーターが2021年1月に届け出たリコールでは、識別番号を記したステッカーをクルマに貼ると国都交通省に届け出ている。

〈文=丸山 誠〉