国内未発売のSTI「S209」に乗ってみたら、超絶魅力的モデルだった!|ワークスチューニンググループ合同試乗会|

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かつてはWRC、現在はスーパーGTやニュルブルクリンク24時間レースで奮闘するスバル系ワークスチューナーSTI(スバルテクニカインターナショナル)。モータースポーツ譲りのコンプリートカー「S」シリーズを台数限定で発売すると、ものの数分で完売するほどの人気ぶり、ほかにも体幹を鍛えるクルマづくりで誰もが運転がうまくなるという独自のチューニングアイテムもラインアップする。今回は、ワークスチューニンググループ合同試乗会で、WRX STIをベースに開発された北米初の「S」シリーズであり、国内未発売の「S209」に乗る機会を得た。その走りとはいかなるモノか……。
 


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VAB型の最終形態となるべく開発された意欲作「S209」 
アメリカ向けのSTIチューンドモデル。2018年に発売したWRX STIタイプRAとBRZ tSに続く第3弾は、STIコンプリートカーの最高峰「Sシリーズ」では初のアメリカ向けモデルとなるS209。当初は日本市場にも導入するつもりで開発していたものの、アメリカでの型式認証の取得に時間が掛かり、国内導入のタイミングを逸してしまった。
 
「EJ20でS209のような拡幅のクルマをやれないか? ということで検討していましたが、先に『ファイナル』が出てしまったので、残念ながら諦めざるを得ませんでした」と振り返る、STI開発副本部長の高津益夫(たかつ・ますお)さん。スバル時代はレガシィへのビルシュタインサスペンションの導入に関わり、VAB型WRX STIのPGM(プロジェクト ゼネラルマネージャー)を務めたのち、STIではS209の開発に携わるなど、車両とパーツの双方に精通している。
 
S209の概要は、エンジンが2.5LシングルターボのEJ25型。吸気系は量産車がプレート状のエアクリーナーなのに対し、より表面積が大きい円柱型の「マッシュルームタイプ」を、エンジンルームのギリギリに詰め込んで通気抵抗を低減。
 
これに大径ターボチャージャーや背圧の低い排気系を組み合わせて、燃料ポンプやインジェクターの容量アップ、EJ25自体にも鋳造ピストンとコネクティングロッド、強化バルブスプリングを組み込むことで、最高出力を量産車(310hp)の約10%アップとなる341hpまで引き上げた。
 
S209が狙うのはサーキット走行におけるラップタイムの短縮。タイヤは量産車の245/35R19に対し、265/35R19とワイド化。幅広タイヤを収めるために、車体側にもワイドフェンダーで拡幅処理を施した。
 
ゴールド塗装のBBS製アルミ鍛造ホイールは、「EJ20ファイナルエディション」とデザインこそ同じだが、幅広タイヤに合わせてリム幅が異なる(ファイナルエディションは8.5J、S209は9J)。ちなみにこのホイールを収めるため、S209は車体側で干渉する部分をカットして収めているので、そのままVAB型WRX STIに履かせるとハミ出てしまい、車検に通らない。
 
EJ20に対し、排気量でプラス463cc余裕のあるEJ25ターボの走りは、パワフルで豪快そのもの。2速発進も楽にこなせるほど低速トルクが充実していて、アクセルをほんの少し踏み込めば、シートバックに背中を押し付けられるほどの強烈な加速感が味わえる。
 
加えて、ワイドタイヤがもたらすコーナリングの安定感や抜群の接地感もS209の妙味。エンジンパワーに見合うワイドボディとしなやかな足まわり、ブレーキの強化など、迫力のルックスに負けないコンプリートカーならではのバランスのよさと、カスタム内容の濃さで、アメリカのスービー(熱烈なスバルファン)を魅了する。
 
EJ20ファイナルエディションの抽選販売が約24倍もの「狭き門」だったことを考えると、S209の導入が見送られたことはとても残念だが、STIではVABユーザーのために、S209に採用されたパーツを販売する。
 
フレキシブルドロースティフナーリヤはS209で初採用されたパーツで、のちにWRX S4 STIスポーツ♯(500台限定販売)にも採用された、トランクルーム内上部に装着するパーツ。左右Cピラーの付け根をつなぎ、テンションをかけることで車体後部のねじれを適度に抑え、リヤの追従性を高めることでハンドリングのレスポンスと操縦安定性を向上させる。発売開始以来1000セット以上も売れたヒット作だ。
 
「S209で『いい足』が出来たので、これをサスペンションキットとして発売する予定です」と高津さん。ビルシュタインダンパーとコイルスプリングの組み合わせで、EJ25とEJ20では「頭の重さ」が違うので、国内仕様向けにセッティングをやり直した。サスキットと各種フレキシブルパーツと組み合わせると、S209の乗り味に近付けられるとのことなので、VABユーザーには朗報だ。
 

 
BRZ用のSTIチタンマフラーが奏でる“いい音” 
STIスポーツにSTIの内外装&機能系パーツをフル装備したデモカー。注目はエンジニアの「作ってみたい」という要望をカタチにしたオールチタン製のパフォーマンスマフラー。円柱型プリサイレンサーとメインサイレンサーを並列に配したデュアル構造で、ステンレス製に対し、約40%軽量(重量7.9kg)。
通気抵抗も純正マフラーに比べて約13%低減。特に低~中回転域でのレスポンスや吹き上がりがよく、回転数の上昇に比例して雑味のない澄んだ音色を奏でる。後軸より後ろのリヤオーバーハングが軽くなることで、ハンドリングにも好作用をもたらしている。価格は55万円で前期(A~D型)、後期(E~H型)ともに各25本の限定販売だ。
 
 
インプレッサスポーツのSTIスポーツに登場のFF仕様。専用ダンパーがいい感じ!  
量産車と同じ工場でインライン生産されるSTIスポーツ。インプレッサSTIスポーツには、シリーズ初のFFが設定されている。
 
フロントには油圧の流路を2つ設けることで、ストロークの増減に合わせて最適な減衰力を発生させるショーワのSFRD(周波数応答型ダンパー)を装着。STIがSFRDを採用する理由は、コーナリングフォースを積極的に使うために、内輪側のサスをスムーズに伸ばしたいから。ダンパーが硬いとロールしたときに荷重が抜けて接地感が乏しくなるが、SFRDは内輪側が路面にベタッと吸い付き、細かい振動も吸収するので乗り心地も滑らか。
 
STIが目指す走りの方向性とSFRDの特性は相性がよく、他車種への展開も期待したい。
 
 
 
〈文=湯目由明 写真=山内潤也〉

STI(スバルテクニカインターナショナル)
https://www.sti.jp