しつこく連絡を迫ったり、待ち伏せしたりするストーカー行為は法律で罰せられる。だが、どこまでがストーカー行為に当たるかの線引きは難しい。弁護士の上谷さくら氏は「法律が定める『つきまとい等の行為』には8つのケースがある。そしてできる限り証拠を残すことが重要だ」と指摘する--。

※本稿は、上谷さくら、岸本学『おとめ六法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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■「つきまとい等の行為」と認定される8つの行為

「ストーカー行為等の規制等に関する法律」は、「ストーカー規制法」と一般的に呼ばれます。

この法律は、同じ人に対してつきまとい等を繰り返す加害者に、警察署長等から警告を与えたり、悪質な場合に逮捕したりすることで、被害を受けている人を守る法律です。

ストーカー規制法で規制の対象となるのは、「つきまとい等」と「ストーカー行為」の2つです。

具体的に、次の8つの行為が「つきまとい等」として禁止されており、繰り返すと「ストーカー行為」になる場合があります。

■待ち伏せ、乱暴な言動、連絡がしつこい…

・つきまとい、待ち伏せ、見張り、住居等への押しかけ
例)学校や職場で待ち伏せ、尾行、自宅への押しかけやうろつき
・行動を監視していることがわかることを告げる
例)帰宅したとたんに「お帰りなさい」と電話する
・面会、交際などの要求
例)拒否しているのにしつこく面会や復縁を求める
・著しく粗野、乱暴な言動
例)自宅まで来て大声で叫んだり、罵ったりする
・無言電話、拒否したのに連続して電話、FAX、メール、SNS
例)しつこい電話やメッセージの送付、コメント欄へしつこく書き込む
・汚物や動物の死骸などを送りつけ、嫌悪感や不安を与える
・名誉を害することを告げる
例)名誉を傷つけるようなことを言う、そのような内容の文書を送り付ける
・性的羞恥心を害することを告げる、文書等を送付する
例)わいせつ写真を送りつける、電話や手紙で卑わいなことを言う

これらの行為は、刑法の脅迫罪や強要罪にあたる場合もあります。

ストーカー行為についてもっと詳しく知りたいときは、各都道府県警のホームページが参考になります。

■避難先のホテル代を補助してもらえる場合も

ストーカー被害にあっている場合は、遠慮せず早めに各自治体の「配偶者暴力相談支援センター」や警察に相談することがなによりも大切です。ストーカーは、性犯罪や殺人といった凶悪犯罪にエスカレートする可能性があるためです。

相談する場所がわからない場合は、「#9110」に電話をすれば、相談窓口となる最寄りの警察署につないでくれます。

自宅についても対策を立てましょう。

ストーカーに自宅を知られている場合は、避難先となるシェルターを紹介してもらえたり、ホテル代を補助してもらえたりする場合があります。ストーカーにあなたの自宅を知られていない場合は、身の安全を守るために、絶対に住所を知られないようにします。

住民票を置いている市区町村に相談すると、住民票の交付を制限する手続きをすることができます。

警察にストーカー被害の相談をすると、ストーカー規制法に基づいて、図表のような流れで対応がなされます。

図版=KADOKAWA『おとめ六法』

■「どこからがストーカー?」判断できない時は

【事例1】
どこからがストーカーになるのか判断がつかない。
【ANSWER】
自分だけで判断せずに、まずは警察に行って相談しましょう。仮に法律上のストーカーとはいえなくても、警察が相手に電話などで警告をしてくれるケースも多くあります。なお警察に行く際は、場合によっては事前に相談予約を取り、信頼できる友人や親族に同行してもらうとよいです。
【事例2】
ストーカー行為を受けている。ただ、相手は仕事や立場的に社会的な信用がある。警察はこちらの言い分を信じてくれない気がする。
【ANSWER】
まずはストーカー行為を受けている証拠を残すことが重要です。電話は着信記録を保存し、通話したときは録音しましょう。SNSの投稿はスクリーンショットなどで保存するとよいです。待ちぶせは、可能であれば防犯カメラを設置するなどして記録しましょう。こうした証拠があれば、警察もスムーズに動けます。後日、刑事事件や民事訴訟になった場合にも、これらの証拠はとても役に立ちます。

■「SNSでつきまとい」はブロックしてはダメ

【事例3】
SNSでつきまとわれている。ブロックすれば収まる?
【ANSWER】
いきなりブロックすると、拒絶されたと感じて逆上される危険がありますのでやめてください。居場所を探されたり、家に押し掛けてくる可能性もあります。返信するのも、ストーカーとの関係性を継続することになってしまうため、やめるべきです。ブロックも返信もせず、画面を保存して警察に相談してください。
【あなたを守る法律】
ストーカー規制法 第1条 目的
1 この法律は、ストーカー行為を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由および名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的とする。

筆者が5月に上梓した『おとめ六法』では、恋愛・くらし・しごと・結婚など6つの章だてで、女性に起こりうる様々なトラブルに「どう法的に対処すべきか」が解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてくださいね。

■アカウントに脅迫のコメントが届いたら

「脅迫」とは生命、身体、自由、名誉または財産に対して、害を加える旨を伝えて脅す行為です。これを、「害悪の告知」といいます。「○○されたくなければ××しろ!」といった具合に、金銭や行為を要求しなくとも成立します。害悪の告知には、「殺す」「刺す」「家に火をつける」「デマを流す」「個人情報を晒す」などがあります。

【事例】
SNSで有名人に対して否定的な投稿をしたところ、そのファンから批判のコメントやメッセージが殺到。中には「必ず殺す」などの文言もあった。
【ANSWER】
「必ず殺す」と書かれたメッセージは「生命に害を加える旨を告知して脅迫する」行為に該当し、刑法上の脅迫罪が成立します。警察への被害届の提出や、民事上の損害賠償や慰謝料の請求などを検討する余地があります。また、SNSの運営会社へ「報告」すれば、脅迫してきた人のアカウントを凍結できる場合があります。

■「訴える」「法的措置を取る」などと言われたら?

これらの場合は通常、脅迫にはあたりません。これらの行動は本来、正当に行使しうる権利で、「害悪の告知」ではないからです。ただし、実際に訴えるつもりがないのにそのように言うと、脅迫罪になるケースがあります。

写真=iStock.com/PeopleImages
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上谷 さくら(著)、岸本 学(著)、Caho(イラスト)『おとめ六法』(KADOKAWA)

SNSでの脅迫に法的措置を取るには、準備が必要です。脅迫する言葉が書かれたメッセージや投稿と、それらを送ってきたアカウントがわかるよう、スクリーンショットや印刷などをしておきます。

準備をしたら、警察署へ電話をして相談したい内容を告げれば、すべきことを指示してくれます。その指示に従って、必要な資料の提出や説明を行います。

民事上の損害賠償請求を行うには、SNSやウェブサイトの運営者を相手とする発信者情報開示請求を行います。開示によって脅迫者の氏名・住所がわかれば、裁判ができます。

【あなたを守る法律】
第222条 脅迫
1 生命、身体、自由、名誉、または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役、または30万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉、または財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

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上谷 さくら(かみたに・さくら)
弁護士 第一東京弁護士会所属
福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。保護司。
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(弁護士 第一東京弁護士会所属 上谷 さくら)