「逮捕は知らなかった」ベガルタ仙台が社長会見で展開した責任逃れの“ご飯論法”
10月20日、道渕のDV事件について会見する、ベガルタ仙台の菊池秀逸社長(中央)ら
ベガルタ仙台所属の道渕諒平(26)によるDV事件。被害女性の体をあざだらけにする、その壮絶な内容は、本誌が10月20日に報じた通り。本誌の取材に対して、クラブ側は「同選手から二度と同様の行為をしないとの誓約書を取り、重い処分を科したうえで活動を継続させております」と回答していた。
しかし、本誌が記事を公開した数時間後、ベガルタ仙台は以下の声明を発表し、同日、記者会見を開いた。
《本日発売の週刊誌におきまして、当クラブに所属する道渕諒平選手に関わる記事が掲載されておりました。当クラブが認知していなかった事実など、クラブの秩序、風紀を著しく乱す内容が含まれていたことから、同選手に事実関係を確認した上で、10月20日付で契約解除を決定いたしました》
解雇の理由になった、「当クラブが認知していなかった事実」とは、何なのか。
会見でクラブは、被害女性からの連絡を受けて、DV事案を8月14日に認知した経緯を説明。そのうえで、9月7日に道渕が警察による任意同行を受け入れ、同日午後に釈放されたという事実を確認している一方、選手本人の弁護士からは「逮捕状を執行された。数時間後に釈放された」と連絡があり「微罪処分」であると報告を受けたと説明した。
しかし、クラブとしては、道渕が9月7日に逮捕されたという事実は認知していないとも話した。
「逮捕状を執行された」という報告は受けたが、「逮捕された事実は認知していない」というクラブ側によるこの説明は、極めて不可解なものだ。現行犯逮捕を除き、“逮捕” とは、“逮捕状が執行される” ことを意味するのではないのか。紀藤正樹弁護士(59)は、こう話す。
「逮捕と任意同行は、大きく違うもので、逮捕状が執行されたということは、逮捕されたという意味です。子どもたちに夢を与えるスポーツビジネスを行うクラブ側は、事件の全容、そして具体的に何が起きたのかきちんと社会に説明する義務があります。今後、選手や役員への処分を決めるためにもさらなる説明が必要でしょう」
「逮捕状は執行された」が「逮捕されたとは認知していない」というクラブ側の不可思議な説明は、「朝ごはんを食べましたか?」という質問に「(パンは食べたけど、お米の “ごはん” は食べていないから)食べていない」と回答する、いわゆる「ご飯論法」を彷彿させるものだ。
安倍政権が国会答弁で繰り広げた、あまりに屁理屈じみた “言い逃れ” を揶揄する言葉として広まった「ご飯論法」は、いつのまにかサッカー界にまで広がっていた――。