収入、恋愛、健康…。そういった、R25世代の大きな関心事のひとつに挙げられるのが、転職。つまり「キャリア」です。

そんなキャリアについての“哲学”“本音”を著名な方にお伺いすべく、新R25が立ち上げたのが連載「キャリ凸」。

本日お迎えしたのは、新R25二度目の登場となる厚切りジェイソンさんです。


【厚切りジェイソン(あつぎりじぇいそん)】1986年生まれ。アメリカ出身。2011年に来日し、2014年デビュー。2015、2016年には「R-1ぐらんぷり」でファイナリストに。お笑い芸人としての活動と並行して、IT企業で役員を務める。著書に『日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy』(ぴあ)など

「旭化成(日本大手)」→「GEヘルスケア(アメリカ大手)」→「Bigmachines(アメリカベンチャー)」→「テラスカイ(日本ベンチャー)」…日米の大企業、ベンチャー企業を渡り歩き、20代にして会社役員まで上り詰めたジェイソンさん。

「どうしたらそんなにスピード出世できるの?」
「実際、年収はどれくらい上がったの?」

などなど下世わ…否、誰もが知りたかったはずの質問を無邪気にぶつけてきました!

〈聞き手=サノトモキ〉

サノ:
ジェイソンさん、よろしくお願いします!

今日は…

ジェイソンさん:
木曜日…ですよね。


伝わりますか? さっそくのジェイソンジョークが

【Google落ちる→旭化成インターン】“人生フリーパス”のGoogleを目指すも、惜しくも「お祈り」

サノ:
気を取り直して、今日はジェイソンさんのキャリアについて気になることをガンガン突っ込んでいきたいと思います。

まずはジェイソンさんの経歴について教えてください!

20代で経営者や会社役員を経験したそうですが…どうやったらそんなキャリアになるんですか?

ジェイソンさん:
これは、僕がGoogleのインターンに落ちた話からしないといけないですね…


そういうの! 今日はそういう話を聞きたいんです

ジェイソンさん:
僕は大学を卒業したらGoogleに行きたかったんですよ。履歴書に「Google」と書けたらアメリカではその後のキャリアは実質フリーパス。

だからインターンを受けたんです。電話面接を10回ぐらい突破して…

サノ:
インターンの面接で10回も!!!

さすがGoogleや…

ジェイソンさん:
その後Google本社で10人ぐらいと面接しました。

最後の最後まで残ったんですけど、落ちちゃったんですよね。結局Googleにとって僕は、いくらでも代わりのいる人間だったんです。

そこで僕は、当時勉強していた日本語と、ITのスキルを掛け算して、「自分しか持っていない組み合わせ」を作ることにしました。

二度と不採用にならないよう、「代わりのきかない人間」になろうと。


こういう切り替えのはやさが、いかにも「デキる」人って感じがする

ジェイソンさん:
それで僕は1年間、日本で旭化成のインターンとして働くことにしたんです。

「プログラミング能力」「英語」「日本語」「アメリカの文化」「日本の文化」、これら全部に精通してる人となると、ぐっと数が減るだろう…と考えてね。

【旭化成→GEヘルスケア→米ベンチャー】大学に通いなおし、最強キャリアの礎を築いた

ジェイソンさん:
そして帰国して、GEヘルスケアという大企業に就職。3年間エンジニアをやりました。

そのころは日本語の勉強をして日本語検定1級を取得したり、コンピューターサイエンスを極めるために大学に通い直したりしてましたね。

サノ:
え? 仕事をしながら大学に?

ジェイソンさん:
そうだよ。会社で仕事して、お昼休憩の60分間で、90分ある大学の授業動画を見て、仕事終わったら宿題やって、キャンパス通って授業受けて…

っていうのを3年間続けたんですよ。21〜24歳くらいかな。


すご…21〜24歳なんて家帰ったらずっとYouTube観てたわ

サノ:
でも60分のお昼休みじゃ、90分の動画を見られなくないですか…?

ジェイソンさん:
そんなの、1.5倍速で見るに決まってるじゃん!!!!!

すごく大変でしたけど、その結果、英語が話せて、日本語検定1級を持っていて、世界屈指の大学院(イリノイ大学)からコンピューターサイエンスの修士号ももらってる…という状態になれた。

それでシカゴのベンチャーBigmachinesに転職したとき、24歳でも日本法人の社長を任せてもらえたんですよね。

そのときはもう、「君みたいな人が世界のどこかからくるのを、ずっと待ってたぞ!」みたいな感じ。年収とかも交渉しやすかったですね。

サノ:
24歳で社長かあ…

Googleでの挫折から、見事すぎる大逆転だ。

ジェイソンさん:
だから、僕のキャリアの哲学は、「“代わりのきかない人”になるために頑張る」。以上です。

僕はその考え方で動いてるから、一度も転職に失敗してません。

【米ベンチャー→テラスカイ】「出世したい」「金が欲しい」…20代で社長まで出世して気づいたこと

サノ:
あの、「キャリ凸」には外せない質問がありまして…

インターンに落ちてから、それぞれの転職で年収はどれくらい上がったんでしょうか?

ジェイソンさん:
え?

えー…これはどうしましょうかねえ。

サノ:
(どうだ、教えてくれるか…!?)

ジェイソンさん:
年収ね…まあ今はお金に困ってはいませんよ。


腹立つ濁し方してきた

サノ:
では聞き方を変えます。

少しでも年収を上げたい若者は多いと思うんですが、「転職で年収を上げるコツ」ってありますか?

ジェイソンさん:
…年収にこだわらないことじゃない?

20代のころは、給料はどうでもいいんですよ。



ジェイソンさん:
僕も20代前半までは、「お金が欲しい」「権力が欲しい」という欲望だけで動いてました。

でも、いざ社長になってお金と名誉を手にしたら想像してたような満足感はなくて、「あれ、こんなものなの?」。

むしろ、このままじゃ毎日同じことの繰り返しでゾンビみたいになっちゃうと思いました。

サノ:
すごい境地だけど…そういうものなんですね。

ジェイソンさん:
それで僕は、日本のITベンチャー企業・テラスカイに転職したんです。

「将来どう生きていたいか」を改めて考えたとき、僕は常に新しいを挑戦して、成長していたかった。

だから、知名度は低いけど、「アメリカや日本以外の国で事業を成功させる」という、今まで挑戦したことのないミッションをもらえるテラスカイを選びました。



ジェイソンさん:
転職はあくまでも、「将来なりたい姿」にたどり着くための手段であるべきです。

会社ってじつは、「現金以外の付加価値」がたくさんある場所なんですよね。そこでしか得られないスキルとか、いつでも相談に乗ってもらえる環境とか。

20代の今、「いくらかの年収アップ」と「現金以外の付加価値」、どっちが“将来なりたい姿”への投資になるのかは、きちんと考えたほうがいい。

「基本的には転職しないほうがいい」と思っている人のほうが、“いい転職”ができる

サノ:
でも、そこまで考えて転職するってすごくむずかしいですよね。

僕のまわりでも、「なんとなく今の会社がイヤだったから転職した」という人も多いですし…

ジェイソンさん:
残念だけど、「なんとなく合わない」で転職する人は、永遠に「なんとなく合わない」ですよ。


え、永遠に…?

ジェイソンさん:
「何の問題を解決するために転職したいのか」をはっきり言語化しないと、「転職して成功だったのか」もよくわかんないんですよ。

問題が解決されたかどうか、明確に答え合わせができない転職はダメです。

そういう人ほど、何度転職をしても「なんとなく合わない」って言います。

サノ:
でもたしかに、ジェイソンさんの転職経歴を聞いてても、毎度理由がハッキリしてたな…

つまり、「今何がイヤなのか」をわかったうえで転職することが大切だと。

ジェイソンさん:
わかるだけじゃ足りません。

その課題を今の環境で解決できないか、徹底的に試し尽くしてください。


「いいですか? こんなふうに自問してみてください…」

ジェイソンさん:
「今の仕事がイヤです」「…Why?」

「上司との人間関係がイヤなんです」「…Why?」

「こう扱われるのがイヤなんですよ」「上司に伝えたことはあるんですか?」「…それはないです」

ここまで考えて、「上司に伝える」を実際にやるべきなんですよ。

サノ:
ここで「Why!?」が出た

でもたしかに不満はあっても、「解決してみよう」と動いたことってあんまりないかも。

ジェイソンさん:
でしょう? 環境は変わらないと決めつけていませんか?

自分と合わない上司は、転職先にもいるかもしれませんよね。

今解決から逃げてしまったら、会社を変えたってどうせまた同じことで悩みますよ。

サノ:
うっ…これは百理ある…

ジェイソンさん:
ほとんどの人は、本気で潰しにかかっていないんですよ。「イヤだイヤだ」と言いながら、言われた通りにするだけ。解決できるということに気づいてない。

もし転職したい理由が5個あったら、ちゃんと一つひとつ潰していってください。



ジェイソンさん:
解決しようと実行して実行して実行して…「何をやっても今の環境では解決できない」と言い切れるまで実行する。

それでも残る課題があったら…そこからやっと、“転職のスタート”です。

「この会社では絶対に解決できない課題」を解決するために、環境を変える。これが“いい転職”なんですよね。

サノ:
たしかにそこまで話せたら、面接とかもめちゃくちゃ強そうだな…

ジェイソンさん:
だから、「基本的には転職しないほうがいい」という前提で考えている人のほうが、いい転職ができると思います。

転職を考える前に、まだ自分を磨ける範囲が残ってないか考え抜いてみてください。


これは金言だ

最後に…「ジェイソンさんが今20代なら、入りたい企業は?」

サノ:
最後に…もしジェイソンさんが今20代だったら、入りたい会社ってありますか?

ジェイソンさん:
「テラスカイ」!


そう来たか

サノ:
自分の(役員を務める)会社ですか…

ちなみに、なぜ?

ジェイソンさん:
テラスカイは、いい会社ですよ。常に挑戦したい分野を任せてくれるし、経験豊かで実力のある人に毎日相談できる環境もある。

なんだかんだ、もう8年いますよ。いい会社だと思ってなかったら、こんなに残ってない。


こう言い切れることが、転職の理想のゴールだと思いました

サノ:
今日はいろいろと学ぶことができました。ありがとうございます!

ジェイソンさんの哲学、しっかりお届けします。

ジェイソンさん:
よろしくお願いします!

テラスカイにも転職してほしいです! ぜひ来てください!

サノ:
お、おお!!

ちょっと考えておき…

ジェイソンさん:
あ、君じゃなくて、記事を読んでくれてる人です。


はい

・「代わりのきかない人間」になるために努力すべし
・今手にすべきは「いくらかの年収アップ」か「将来への投資になる付加価値」か考えるべし
・「この会社では絶対に解決できない課題」を解決するために転職すべし

ジェイソンさんが語ってくれた、転職の本質。

結局年収アップ具合は聞けずじまいでしたが、僕らが転職を考えるうえで大切なことばかり教えてもらえた気がします。

次は誰のキャリアに突撃するのか…ぜひ楽しみにしていてください!

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉