ベテランの処遇は難しい。

プロは実力社会である。年齢は関係ない。力のある者がピッチに立つべきだ。

一方で、クラブが安定した成績を収めていくには、世代交代を考えなければならない。実績や経験を重視したチーム作りを続けていくと、若返りの時機を逸することになる。

ベテランと呼ばれる選手に、クラブはどこまで頼るべきなのか。これについては明確なモデルケースは存在しない、と言える。ひとつだけはっきりしているのは、どれほど偉大な選手でもいつかはポジションを失う、ということだ。失いたくなければ、それ以前に引退するしかしない。

ガンバ大阪と遠藤保仁のケースも、いつかは起こり得ることだったと言える。関西の雄のレジェンドは、ジュビロ磐田へ期限付き移籍した。

40歳になってもなお第一線でプレーする遠藤は、チームに必要な戦力だ。現役引退後を見据えれば、クラブの財産でもある。

ただ、40歳の選手を軸に据えたチーム作りが、どこまで現実的だろうか。一般論として健全ではない、と言うことができる。遠藤の起用法としてスタメンより途中出場が増え、途中出場の時間も短くなっていくのは、ごく自然な流れだとも言える。遠藤に頼らなくても勝てるチームにしていくのは、違った意味で彼へのリスペクトとも言える。

宮本監督と遠藤の間に確執があった、という報道もある。

監督は選手を選ぶ立場で、選手は監督に選ばれる立場だ。一つひとつの試合に対しては、監督なりの狙いもある。監督と選手の思惑は、必ずしも重ならない。

宮本監督は、キャリアの晩年にスタメンから外れることを経験した。そもそもインテリジェンスに富んでおり、現役時代からリーダーシップを発揮してきた。選手心理は十分に理解できるはずで、必要な配慮を欠くとは思えない。

遠藤の加入よりもひと足先に、ジュビロは監督交代に踏み切った。J1で戦っていた昨シーズンに比べると、戦力は小粒になった。それでも、FC東京から大森晃太郎を獲得し、ブラジル人FWルキアンが即戦力となっている。

8月には守備の立て直しのために、山本義道を横浜F・マリノスから獲得した。昨シーズンはツエーゲン金沢でプレーしており、J2を良く知るセンターバックである。

保有戦力はJ2のトップクラスである。ところが、ここまでのところ昇格争いに絡めず、鈴木監督の初陣も京都サンガに競り負けた。現在は7勝9分8敗の黒星先行で、首位の徳島ヴォルティスには勝点18差、2位のアビスパ福岡には16差をつけられている。

勝点48の徳島と勝点46の福岡に加え、3位のギラヴァンツ北九州が勝点45、4位のV・ファーレン長崎が勝点43に達していることから、今シーズンのJ1昇格ラインは勝点80以上になりそうだ。

残り18試合を徳島が9勝9敗で終えても、勝点は75になる。「80」を越えてくることは十分に考えられるはずだ。

ジュビロが勝点80に乗せるには、残り18試合で勝点50(!)を上乗せしなければならない。15勝5分3敗でも勝点50だ。すでに1敗も許されないぐらいまで追い詰められている、と言っていい。

そうした状況のなかで、遠藤はジュビロの一員となる。

不可能に近いミッションに、彼のような経験者が挑む。J2に新たな興味が生まれた意味でも、遠藤のジュビロ入りはJリーグにとってポジティブな要素だ。ガンバを離れることになった経緯よりも、これからに注目するべきだろう。