新たな日本語キーボードを導入した「Surface Laptop Go」 - 日本マイクロソフト説明会から
日本マイクロソフトは2020年10月8日、10月13日から発売するPC「Surface Laptop Go」「Surface Pro X」に関するオンライン説明会を開催した。米国本社で製品関連責任者を務めるMicrosoft CVPのMatt Barlow氏は、「生産性の高いモバイルデバイスをあらゆる人、あらゆるワークスタイル、あらゆる場所に提供したい」と述べ、タブレットやスマートフォンがPCを代替するデバイスではなく、1人1台のPCを所有すべきだと熱く語った。
Surface Laptop GoとSurface Pro Xの概要は、別記事『12.4インチ「Surface Laptop Go」発表、リモート需要に応える機能で8万円台から』と『「Surface Pro X」強化、上位構成に第2世代SoC「SQ 2」、プラチナと2色展開』を参照いただくとして、今回の説明会で米国本社であるMicrosoftが、Surface Laptop Goは「学生や新社会人」、Surface Pro Xは「ネットワークへの常時接続を必要とするワーカー」向けであることを明示したことは興味深い。
別稿で筆者はSurface Laptop Goが文教向けPCである可能性に触れたが、日本マイクロソフトは「明確なすみわけは行っていない。高校がSurface Go 2を導入するケースもある。Surface Laptop Goはしっかりとしたキーボードや、大きめのディスプレイを必要とする教育現場の需要に合わせて選んでほしい」(日本マイクロソフト Surface ビジネス本部長 石田圭志氏)と説明した。
Surface Laptop Goは新たな日本語キーボードレイアウトとして、スペースキーの左右、従来の「無変換」キーの場所へIMEを有効にする「あ」キー、「変換」キーの場所へIMEを無効にする「A」キーを配置。Microsoftは1994年に「Win」キーを導入し、それまでとは異なる操作性を提案してきたが、我々のようにPCで日本語を使うユーザーにとって今回の変更は四半世紀ぶりの改革といえるだろう。日本マイクロソフトは「日本語キーボードを訴求するため。使ってみてその利便性を理解していただける」(日本マイクロソフト 業務執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 マイクロソフトデバイス戦略本部 本部長 水田琢也氏)とする。
IMEの制御に用いる「A」「あ」各キーは、それぞれ2回以上押しても動作は変わらないものの、ATOKなど他のIMEでの動作は未検証。Surfaceファミリーや各種キーボード製品の展開は「フィードバックを踏まえて製品開発に反映させたい」(水田氏)と述べる。筆者も実際に使ってみないことには何とも言えないが、Windows 10 バージョン2004は「無変換」「変換」など各キーに対するカスタマイズ機能を備えており、変換操作を必要とするCJKV(中国語・日本語・朝鮮語・ベトナム語)のUX改善に努める姿勢は素直に評価したい。
また、Surface Laptop GoはSurfaceファミリーでおなじみの顔認証ではなく、指紋認証を採用している。その理由としては、「12.4インチのフォームファクターでベゼルを細くするため機能を限定した」(水田氏)と説明する。確かにコロナ禍でマスクを着ける場面が多い現状を考えると、顔認証よりも指紋認証のほうが便利だろう。
第2弾カスタムCPUのMicrosoft SQ2プロセッサー(ARMベース)を搭載したSurface Pro Xは、約5%のパフォーマンス向上や、バッテリー駆動時間が初代モデルと比較して2時間拡大した15時間という特徴を持つ。他のSurfaceファミリーにない機能としては、「アイコンタクト」が挙げられる。
アイコンタクト機能は、視線の先をAI(人工知能)が調整し、自然なオンライン会議を実現するというものだ。多くのオンライン会議やオンラインセミナーに参加している読者諸氏もいると思うが、登壇者が不自然な視線で浪々と語る場面に出くわすことがあるだろう。アイコンタクト機能はMicrosoft SQ1プロセッサーとソフトウェアで実現しているため、初代Surface Pro Xでも利用可能だ。
ただ、現在x64アプリケーションが主体のWindows 10において、ARM版Windows 10を使うメリットは多くないように感じる。日本マイクロソフトは初代Surface Pro Xについて、「消費者観点では、アーリーアダプターに好評。ただ、アプリケーションの対応範囲が弱いのも事実。日本市場ではウイルス対策ソフトなど(のサポートを)本社に要望している」(水田氏)と現状を話す。新Surface Pro Xに対する意気込みとして、「バッテリー駆動時間や常時ネットワーク接続などモバイルワーカーに活用してほしい」(石田氏)と語った。なお、初代Surface Pro Xは新モデルの登場で価格改定が行われているという。
アプリケーション不足が最大の障壁となるSurface Pro Xだが、日本マイクロソフトはMicrosoft EdgeやVisual Studio CodeがARMネイティブで動作し、Ignite 2020で発表したMicrosoft Teamsのネイティブ化の予定があることを強調。また、Microsoftは米国時間2020年9月30日に、ARM版Windows 10によるx64アプリケーションを実行する計画を発表し、x64エミュレーションを提供する。2020年11月以降のWindows Insider Programでファーストリリースする予定だが、日本マイクロソフトは「すべてのx64アプリケーションが使えるわけではない。順次対応範囲を広げつつ、最終的には通常のWindows 10に近い互換性を実現したい」(水田氏)とした。
Surface Laptop GoとSurface Pro Xのマーケティング施策として、法人向けには2020年10月22日16〜18時にオンラインイベントの開催を予定している。また、消費者向けにはオンライン動画の配信や、10月8日から全国42店舗の大型量販店で両デバイスの先行展示を行う(発売は10月13日)。「タレントやインフルエンサーなどにも使ってもらい、Surfaceをよく吟味してほしい」(水田氏)、コロナ禍でも「一歩前に進むためのデバイスとして生活に寄り添いたい」(水田氏)と語った。
著者 : 阿久津良和 あくつよしかず 1972年生まれのITライター。PC総合誌やDOS/V専門誌、Windows専門誌など、各PC雑誌の編集部員を経たのちに独立。WindowsとLinuxをこよなく愛しつつ、PC関連の著書を多数手がける。近年はBtoCにとどまらず、BtoBソリューションの取材やインタビューが主戦場。休肝日を設けず日々飲み続けてきたが、γ-GTP値が急激に増加し、早急な対応を求められている。ご連絡は以下のサイト内設置したフォームからお願いいたします。https://www.cactus.ne.jp/ この著者の記事一覧はこちら
Surface Laptop GoとSurface Pro Xの概要は、別記事『12.4インチ「Surface Laptop Go」発表、リモート需要に応える機能で8万円台から』と『「Surface Pro X」強化、上位構成に第2世代SoC「SQ 2」、プラチナと2色展開』を参照いただくとして、今回の説明会で米国本社であるMicrosoftが、Surface Laptop Goは「学生や新社会人」、Surface Pro Xは「ネットワークへの常時接続を必要とするワーカー」向けであることを明示したことは興味深い。
別稿で筆者はSurface Laptop Goが文教向けPCである可能性に触れたが、日本マイクロソフトは「明確なすみわけは行っていない。高校がSurface Go 2を導入するケースもある。Surface Laptop Goはしっかりとしたキーボードや、大きめのディスプレイを必要とする教育現場の需要に合わせて選んでほしい」(日本マイクロソフト Surface ビジネス本部長 石田圭志氏)と説明した。
Surface Laptop Goは新たな日本語キーボードレイアウトとして、スペースキーの左右、従来の「無変換」キーの場所へIMEを有効にする「あ」キー、「変換」キーの場所へIMEを無効にする「A」キーを配置。Microsoftは1994年に「Win」キーを導入し、それまでとは異なる操作性を提案してきたが、我々のようにPCで日本語を使うユーザーにとって今回の変更は四半世紀ぶりの改革といえるだろう。日本マイクロソフトは「日本語キーボードを訴求するため。使ってみてその利便性を理解していただける」(日本マイクロソフト 業務執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 マイクロソフトデバイス戦略本部 本部長 水田琢也氏)とする。
IMEの制御に用いる「A」「あ」各キーは、それぞれ2回以上押しても動作は変わらないものの、ATOKなど他のIMEでの動作は未検証。Surfaceファミリーや各種キーボード製品の展開は「フィードバックを踏まえて製品開発に反映させたい」(水田氏)と述べる。筆者も実際に使ってみないことには何とも言えないが、Windows 10 バージョン2004は「無変換」「変換」など各キーに対するカスタマイズ機能を備えており、変換操作を必要とするCJKV(中国語・日本語・朝鮮語・ベトナム語)のUX改善に努める姿勢は素直に評価したい。
また、Surface Laptop GoはSurfaceファミリーでおなじみの顔認証ではなく、指紋認証を採用している。その理由としては、「12.4インチのフォームファクターでベゼルを細くするため機能を限定した」(水田氏)と説明する。確かにコロナ禍でマスクを着ける場面が多い現状を考えると、顔認証よりも指紋認証のほうが便利だろう。
第2弾カスタムCPUのMicrosoft SQ2プロセッサー(ARMベース)を搭載したSurface Pro Xは、約5%のパフォーマンス向上や、バッテリー駆動時間が初代モデルと比較して2時間拡大した15時間という特徴を持つ。他のSurfaceファミリーにない機能としては、「アイコンタクト」が挙げられる。
アイコンタクト機能は、視線の先をAI(人工知能)が調整し、自然なオンライン会議を実現するというものだ。多くのオンライン会議やオンラインセミナーに参加している読者諸氏もいると思うが、登壇者が不自然な視線で浪々と語る場面に出くわすことがあるだろう。アイコンタクト機能はMicrosoft SQ1プロセッサーとソフトウェアで実現しているため、初代Surface Pro Xでも利用可能だ。
ただ、現在x64アプリケーションが主体のWindows 10において、ARM版Windows 10を使うメリットは多くないように感じる。日本マイクロソフトは初代Surface Pro Xについて、「消費者観点では、アーリーアダプターに好評。ただ、アプリケーションの対応範囲が弱いのも事実。日本市場ではウイルス対策ソフトなど(のサポートを)本社に要望している」(水田氏)と現状を話す。新Surface Pro Xに対する意気込みとして、「バッテリー駆動時間や常時ネットワーク接続などモバイルワーカーに活用してほしい」(石田氏)と語った。なお、初代Surface Pro Xは新モデルの登場で価格改定が行われているという。
アプリケーション不足が最大の障壁となるSurface Pro Xだが、日本マイクロソフトはMicrosoft EdgeやVisual Studio CodeがARMネイティブで動作し、Ignite 2020で発表したMicrosoft Teamsのネイティブ化の予定があることを強調。また、Microsoftは米国時間2020年9月30日に、ARM版Windows 10によるx64アプリケーションを実行する計画を発表し、x64エミュレーションを提供する。2020年11月以降のWindows Insider Programでファーストリリースする予定だが、日本マイクロソフトは「すべてのx64アプリケーションが使えるわけではない。順次対応範囲を広げつつ、最終的には通常のWindows 10に近い互換性を実現したい」(水田氏)とした。
Surface Laptop GoとSurface Pro Xのマーケティング施策として、法人向けには2020年10月22日16〜18時にオンラインイベントの開催を予定している。また、消費者向けにはオンライン動画の配信や、10月8日から全国42店舗の大型量販店で両デバイスの先行展示を行う(発売は10月13日)。「タレントやインフルエンサーなどにも使ってもらい、Surfaceをよく吟味してほしい」(水田氏)、コロナ禍でも「一歩前に進むためのデバイスとして生活に寄り添いたい」(水田氏)と語った。
著者 : 阿久津良和 あくつよしかず 1972年生まれのITライター。PC総合誌やDOS/V専門誌、Windows専門誌など、各PC雑誌の編集部員を経たのちに独立。WindowsとLinuxをこよなく愛しつつ、PC関連の著書を多数手がける。近年はBtoCにとどまらず、BtoBソリューションの取材やインタビューが主戦場。休肝日を設けず日々飲み続けてきたが、γ-GTP値が急激に増加し、早急な対応を求められている。ご連絡は以下のサイト内設置したフォームからお願いいたします。https://www.cactus.ne.jp/ この著者の記事一覧はこちら