有名企業400社への実就職率ランキング。1位は3年連続で東京工業大学。理工系大学の強さが目立つ。

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昨年の6位から4位に順位を上げた電気通信大学。理工系大学の就職率は高い (写真:sunny/PIXTA)

2020年の就活は新型コロナウイルスの感染拡大で、すっかり昨年とは状況が変わってしまった。日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)が新卒採用を中止し、他にも採用見送りの企業が相次いでいる。

会社説明会もオンラインで実施され、就活スケジュールも後ろ倒しになった。学生にとっても合同企業説明会が開催されず、企業からの情報を得にくくなってしまった。企業側も多くの応募者から選びたいのに、その機会が奪われてしまった。2019年の夏から冬にかけて開催されたインターンシップ参加者へのアプローチが中心になったようだ。

就職状況は入試の志望トレンドにも影響

さらに、大学も就活の大切な時期にコロナ禍で入構禁止となり、学内での企業相談会はもちろん、企業情報の活用や就職相談のいずれもできなかった。いずれもオンラインで実施されるようになったが、大学も学生の就活状況を把握できない状況が続いた。企業の採用もオンライン面接中心で、最終面接でやっと企業を訪問する程度だったという。


就職は大学の学生募集にも大きな影響を与えている。将来のことを考えながら、大学、学部を選ぶのは当たり前になってきているからだ。

2021年入試ではコロナ禍による景気後退もあって、理系学部の人気が上がることは間違いない。こういったときには国家資格に結びついた学部が人気になり、その学部は医療系に多いため、自ずと理系人気になる。さらには就職に有利といわれていることを背景に、理工系、情報系が人気になりそうだ。

一方で、国際系の学部を設置する大学は多いが、コロナ禍の影響で留学ができないため、来年入試では志願者が減るのではないかと予測され、狙い目になりそうだ。

今までにない状況となったが、2020年の大学別の就職実績はどうだったのか。「有名企業400社の実就職率」を見てみよう。400社は日本を代表するトヨタ自動車や日立製作所、三菱UFJ銀行など、日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選んでいる。計算式は400社就職者数÷<卒業(修了)者数−大学院進学者数>×100と、大学院進学者数を除く卒業生のうち、有名企業400社に就職した割合だ。なお、卒業生100人未満の大学および、一部が未回答の東京大学と就職者3人以上の企業しか公表しない慶應義塾大学は表から除いている。

トップは3年連続で東京工業大学。有名企業400社への実就職率は54.4%に達した。2位は昨年と同じ一橋大学で52.4%。この2校が5割超だ。東京工業大は学部と大学院をあわせた6年一貫教育を実施している理系の大学だ。就職者の多い企業はソニー33人、キヤノン30人、パナソニック29人、野村総合研究所27人、トヨタ自動車とソフトバンクが各23人などで、製造業中心だ。

2位の一橋大は、商、経済、法、社会の社会科学系4学部の大学だ。就職先は楽天29人、三菱UFJ銀行22人、三井住友銀行17人、大和証券グループとKDDIが各12人、みずほフィナンシャルグループが11人などで、通信と金融が多い。

トップ10のうち6校が理工系大学

東京工業大と一橋大の学部構成は対照的で、就職者が多い企業の顔ぶれが異なるのは当然だ。メガバンクはAIの導入で、一般職の採用を減らしているが、一橋大は昨年と変わりない人数が就職しており、総合職に相変わらず強いことがわかる。楽天がトップなのは、三木谷浩史社長が同校が母校であることが少なからず影響しているかもしれない。ちなみに東京工業大で就職者が多いソフトバンクの一橋大からの就職者は1人だった。

3位は国際教養大学、4位は電気通信大学、5位は名古屋工業大学、6位は東京理科大学だった。トップ10の内6校が理工系の大学だ。しかも9位の早稲田大学には基幹理工、創造理工、先進理工の3学部があり、10位の大阪大学にも理、工、基礎工の3学部がある。11位に芝浦工業大学、19位に豊橋技術科学大学、27位に長岡技術科学大学、31位に京都工芸繊維大学が入っており、理工系大学の400社への就職の強さが読み取れる。

今やメーカーに限らず、あらゆる分野でIT、AI導入は当たり前になっており、自社にITに強い人材を抱える必要性が出てきている。今年は文系学生に人気の5大商社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅)に、東京工業大から11人が採用されている。九州大学(23位)や北海道大学(30位)と同じ採用人数だ。

メガバンクも東京工業大からの採用を増やしている。理系人材をどの企業もほしがっていることがわかる。コロナ禍でリモートワークが当たり前になり、今後も続いていくと見られ、こういった分野の即戦力が求められている。理系人材は引く手あまたになっていきそうだ。

大学別にみると、旧7帝大(北海道大、東北大学、東京大、名古屋大学、京都大学、大阪大、九州大)では、東京大は入っていないが、10位の大阪大がトップ。早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大学、東京理科大学)では6位の東京理科大がトップだ。ただ、3人以上の就職先企業しか公表していない慶應義塾大の公表しているデータだけで集計すると40%を超え、私大トップの4位に入る。

MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)では20位の青山学院大学がトップ、関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)では17位の同志社大学がトップだった。来年、コロナ禍を乗り越えて、就職に実績を残すのはどこの大学か注目される。





■データについて
データは2020年9月3日現在。400社実就職率(%)は、有名企業400社への就職者数÷〔卒業(修了)者数−大学院進学者数〕×100で算出。同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。一部の学部・研究科などを含まない大学もある。大学名横の*印は大学院修了者を含むことを表す。設置の「国」は国立、「公」は公立、「私」は私立を表す。大学院進学者数の「−」はゼロまたは未集計。有名企業400社は、日経平均株価指数の採用銘柄や会社規模、知名度、大学生の人気企業ランキングなどを参考に選定。卒業生100人未満の大学および一部未回答の東京大学、慶應義塾大学は表に含まない。