川崎フロンターレMF三笘薫

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[9.5 J1第14節 横浜FM1-3川崎F 日産ス]

 自慢のスピードでハイラインを攻略し、鮮烈な2ゴールで王者撃破に大きく貢献した。それでも川崎フロンターレMF三笘薫は試合後のオンライン取材で「仕留め切れたところもあったし、決め切れないところもあった。2点は取れたけどまだまだ決められるシーンがあったので満足はしていない」と力強く語った。

 0-1で迎えた前半33分、同点ゴールはブレイクを遂げつつある大卒ルーキーの右足から生まれた。MF大島僚太が落としたボールをMF脇坂泰斗が左サイドに展開すると、フリーになっていた三笘が突破をスタート。猛スピードで詰めてきた名手DFチアゴ・マルチンスとの対峙となったが、小刻みなボールタッチで股を開かせ、その間を見事に通してゴール右隅へ突き刺した。

「前半から相手がハイラインで、スペースがあったのでそこは狙っていた」。もくろみ通りの一撃を沈めた三笘は「カットインからの股抜きは狙っていた。相手に当たって良いところに入ったので運が良かった」と振り返った。

 さらに川崎Fは後半、交代選手を使って一気に畳みかけると、わずか2分で再び左サイドを崩して勝ち越し点を奪取。開始5分には三笘がFW旗手怜央からのパスを冷静に決め、リードを2点に広げた。「怜央が持った瞬間に目が合ったし、彼はあそこに出せるクオリティーがある。待っているだけで決められた」。殊勲の23歳は同期加入のホットラインを誇った。

 このゴールで戦況は決まり、川崎Fが3-1で勝利。昨季の第33節、ホーム等々力で1-4の完敗を喫し、優勝に花を添えてしまったという苦い経験のリベンジも果たした。川崎Fアカデミー出身で、筑波大所属時3年時から加入が決まっていた三笘も「去年ホーム最終節でやられたのはテレビで見ていたし、今年4-3-3に取り組んでマリノスを倒そうと思っていた」と思いを語った。

 なお、三笘はこの日の2ゴールで今季の通算得点数を8とし、小林の7点を抜いてチームトップに立った。出場12試合目でのこの数字はルーキーということを抜きにしても立派すぎる成績だ。しかしそのことについて報道陣から問われると、返ってきたのはチームメートへの感謝ばかりだった。

「もともと得点を取るタイプではなかったけど、チームメートのパスのうまさ、スペースを作る動きがうまく噛み合ってゴールが取れているので、チームメートに感謝しかない」

「プロ1年目とか関係ないし、大卒とか関係なく、23歳若くないので引っ張る意識はある。ここまで得点を取れると思っていなかったし、自分も驚いているけど、得意な形を引き出してくれるチームメートが多いのでそこに尽きる」。

 実際、この一戦でも立ち上がりにDF谷口彰悟からのロングフィードを次々と引き出し、フリーで突破できるチャンスはいくつかあったが、クロス選択やオフサイドでゴールにつなげることができず。また後半にも、カウンターからドリブルで攻め込み華麗なフェイントで相手を抜き去ったが、シュートは相手にブロックされるという場面があった。お膳立てがされているにもかかわらず、ゴールにつなげられていないという思いもあるようだ。

「もっともっと決め切れるところがある」。そう力を込めた23歳は「裏のスペースがあったので得意な形が多かったけど、相手が引いた時にどういうプレーができるかがまだまだ課題」と述べ、さらなる成長を誓った。

(取材・文 竹内達也)