若手の活躍が目立ち始めた日本人GKの中でも、大きな存在感を放つ仙台の小畑。第8節以降はスタメンを譲っているが、守護神の座を奪取できるか

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若手の活躍が目立ち始めた日本人GKの中でも、大きな存在感を放つ仙台の小畑。第8節以降はスタメンを譲っているが、守護神の座を奪取できるか

約4ヵ月の中断期間を経て、7月4日から再開した今季のJ1リーグは、サガン鳥栖でクラスターが発生した影響で延期試合が出てしまったが、それ以外は順調に日程を消化。早くもシーズンの3分の1を終えた。

8月は予想以上の酷暑が続き、さすがに現場からの悲鳴も聞こえてくるが、ここまではケガ人が続出するような事態もなく、試合のクオリティもそれほど落ちていない。そういう意味では、異例のシーズンを乗り切るべく1試合の選手交代枠を5人に拡大したことや「降格なし」ルールを設けたことが、ここまではポジティブに働いている。

とりわけその好影響が顕著に表れているのが、若手選手の台頭だ。

通常のシーズンであれば、1試合の交代枠は3人しかなく、最終順位の下位2チームはJ2に自動降格してしまうため、監督は若手を育てるよりも、実績のある中堅やベテランを起用して、結果にこだわる采配を見せる。

ところが、今季はどんなに成績が悪くても降格することがないため、若手を積極的に起用して実戦経験を積ませ、来季に向けて選手層を厚くしておきたいという監督の狙いが見て取れるのだ。

また、1試合の交代枠がふたり増えたこともそれに拍車をかけている。伸び盛りの若手にとっては、絶好のチャンスが到来したというわけだ。

そんななか、特に注目の的となっているのが、2001年生まれの"久保建英世代"の若手Jリーガーだ。久保本人は、昨年から名門レアル・マドリーに所属し、レンタル先のマジョルカでプレー。来る新シーズンはビジャレアルを新天地に選び、19歳にしてラ・リーガ(スペイン1部リーグ)の注目選手にもなっている。

そんな久保の活躍ぶりを見て、同世代のJリーガーがライバル心を燃やさないはずがない。実際、今季は久保と同学年の18〜19歳の選手が予想以上の活躍を見せている。

その筆頭が、今季J1に昇格した横浜FCのFW斉藤光毅だ。同クラブの下部組織出身の斉藤は、16歳でトップチームデビューを飾った逸材で、世代別の日本代表としては久保と共に17年U−17W杯のメンバーにも選出されたキャリアを持つ。

そのときは練習中に負傷してチームを離脱する不運に見舞われたが、19年のU−20W杯では飛び級でメンバー入り。17歳で主軸として活躍した。

初挑戦のJ1の舞台でも、リーグ再開後に3バックシステムに変更した横浜FCで、2トップの一角としてプレー。12節終了時点で10試合に出場し、3ゴールをマークするなど、レギュラーの座をがっちりキープしている。

最大の武器であるドリブル突破に磨きがかかり、得点への意識が高まってシュート数が増えていることが成長の証(あかし)だ。積極的に若手を起用する下平隆宏監督が最も成長を期待する斉藤は、8月10日に19歳になったばかり。今後のパフォーマンスも要注目だ。

一方、久保より3日早く生まれた鳥栖のMF松岡大起は、Jリーグデビューを果たした昨季からレギュラーとして活躍し、今季は課題とされた安定感も出てくるなど、右肩上がりで成長を続けている。

特に今季から4−3−3システムのアンカーポジション(中盤の底)に固定されたことで、持ち前のインテリジェンスあふれるプレーが際立ち、調子の波もなくなった。確かなテクニックとゲーム全体を見渡す視野の広さも相変わらずで、すでにチームのコントロールタワー役を担っていることからもわかるように、可能性は無限大だ。

鳥栖には今季からトップチームに昇格した、同学年の攻撃的MF本田風智も台頭しているだけに、お互いを磨き合う環境もプラスに働くだろう。

若手にとって最難関ポジションとされるGKでも、久保世代の有望株が頭角を現している。リーグ再開後の第2節から、4試合連続でベガルタ仙台のゴールマウスを守った小畑裕馬だ。

地元・宮城の出身で、仙台の下部組織で育った小畑にチャンスが訪れたのは、正GKのヤクブ・スウォビィクが負傷離脱したことがきっかけだった。18歳の新守護神は、デビュー戦とは思えないような冷静なプレーを見せ、湘南ベルマーレ戦の完封勝利に貢献。すると、正GKが復帰してからも先発するなど、一躍注目の存在となった。

中断前の開幕戦ではベンチ外だったことを考えると、その急成長は望外ともいえる。そのイケメンぶりも含めて、オールドファンは若くして日本代表正GKに上り詰めた川口能活(現五輪代表GKコーチ)の再来を期待している。

彼ら3人のほかにチャンスをつかんでいる久保世代の有望株としては、西川 潤(C大阪)、染野唯月(鹿島アントラーズ)、鈴木唯人(清水エスパルス)も注目に値する。

19年U−17W杯でその名を知らしめたMF西川は、故障で出遅れたものの、途中出場を果たした柏レイソル戦でJリーグ初ゴールを記録。ルーキーとは思えない堂々としたプレーで、いきなり大物ぶりを発揮した。

FWの染野も、選手層の厚い鹿島で早くも先発2試合を含めた8試合に出場し、ルヴァン杯では初ゴールを記録。また、リーグ再開後にトップ下として3試合連続の先発出場を飾った清水の鈴木も、これまで先発5試合を含む10試合に出場している。

彼らはいずれも18歳の高卒ルーキー。今後も超過密日程のなかで出場機会を増やすことは確実で、その成長ぶりは注目の的となりそうだ。

取材・文/中山 淳 写真/アフロ