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安価で軽量なロータス史上最高のスポーツカー

text:Malcom McKay(マルコム・マッケイ)photo:James Mann (ジェームズ・マン)translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)

 
1995年のフランクフルト・モーターショーで発表されたロータス・エリーゼ。1973年にシリーズ4へと進化したセブンの製造を終えて以来、ロータスとしては久々の手頃なスポーツカーが誕生した瞬間だった。

英国での価格は、ロータス・エランS2の半額。エスプリ1台の予算で、3台のエリーゼが手に入った。ロータス史上、最高のスポーツカーといっても過言ではない。

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)

ボディのスタイリングはジュリアン・トムソンが、技術面の設計はリチャード・ラッカムが手掛けた。エリーゼという名前は、当時のロータスとブガッティの会長、ロマーノ・アルティオリの娘にちなんだものだ。

アルティオリは発表時、「オリジナルのエリート以来、ロータスとしては最も大胆な技術を搭載したロードカーです」 と、AUTOCARの取材に答えた。それは事実だった。

シャシーはアルマイト加工されたアルミニウム製で、エポキシ接着剤で接合。両端に横長のトルクボックスを備えた、彫りの深いシンプルなタブ型が特徴だ。スチール製サルーン・ボディと同等の剛性を確保していた。

シャシー本体は、ロールバーを除いて68kgと軽量。車重は750kgを切り、不必要に強力なエンジンなしで、驚異的な走行性能を実現した。スチールが用いられたのは、ロールバーと亜鉛メッキ処理のリアサブフレーム、サスペンション・マウントに限られる。

セブンと互角に得られるドライバーの喜び

販売面でも大成功。AUTOCARでもエリーゼの完成度には感銘を受け、3週連続で特集を組んだほど。ケーターハム・セブンと互角のドライビング体験を、高く評価した。

秀逸のフィーリングとレスポンス。繊細なコーナリング能力と、セブンでは得られない快適な乗り心地。エリーゼは見事なバランスを獲得していた。

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)

晴れた日の午後、セブンをドライブすれば満面の笑顔になれるものの、すっかり疲れてしまう。一方でエリーゼなら、同じくらい楽しんだ後でもまだ体力は残り、夕飯の支度もできるだろう。

ローバーKシリーズのエンジンとトランスミッションは、MGFからそのまま譲り受けたもの。エリーゼのシャシーが、一番幸せを感じられる居場所になった。

DOHCの16バルブヘッドを持ち、アルミ製で軽量。ロードカー用というより、レースシーンの方がピッタリのエンジンでもある。それだけに、定期的なメンテナンスも不可欠だ。

エリーゼのオーナーは、一般的に必要な手入れを怠らない。エンジンは、メンテナンスをしていれば不具合の発生は少なく、パワーアップにも耐える堅牢さも兼ね備えている。

シャシーは路面にピタリと張り付き、滑らかに、あらゆるコーナーの路面の乱れを吸収してくれる。ラインを外れてしまうのは、サーキットで許される速度領域に踏み込んだ時くらい。

エリーゼは、スポーツカーとしての乗り心地とハンドリングの、新しいベンチマークを設定した。ドライバーを間違いなく笑顔にしてくれる、稀有な1台だ。

ロータス・エリーゼS1の中古車 購入時の注意点

ハンドリングや乗り心地で精彩を欠く場合、ブッシュとダンパーの交換時期。正しくない改造の影響かもしれない。可能ならサーキット走行や事故の過去がないか、クルマの所有歴や修復歴を調べたい。

シャシーは強固で、接着力は25年では落ちない。一方でボディは経年劣化が進む。フロアが平坦で真っ直ぐで、飛び石の過度な傷がないか、確認したい。フロントのクラッシャブルゾーンは、衝突時の衝撃を一手に引き受ける。

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)

ロータスによれば、治具がないということで、ボディとシャシーが組まれた新しいユニットの提供は終了している。ベアシャシーの購入はできるが、ボディの組み付け作業は困難だ。

ロータスSVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)は、幅広いオプションを提供しており、標準のエリーゼにスポーツ135用などのエンジンや内装を組むことも可能。英国ではロータスの専門ショップが、独自のアップグレード・メニューを用意している。

仕様は価格に反映するが、日常的な運転ならベースグレードが一番乗りやすい。オリジナル度の高さや所有歴、修復歴が、安心できるエリーゼを選ぶポイント。ホンダ・ユニットへ載せ替える改造が人気だった時期もあるが、最近は評価を受けにくい。

タイヤは製造から10年が経過していれば、交換したい。エリーゼは全般的に走行距離が短く、硬くなった古いタイヤが付いていることも多い。

ステアリングは直進時の遊びに注意。ステアリング・ラックの交換には750ポンド(10万円)ほど必要になる。マフラーは交換されている場合がほとんど。巡航速度でうるさすぎないか、確かめたい。

不具合を起こしやすいポイント

ボディとサビ

塗装とFRPの間に水が侵入すると、塗膜が剥離してしまう。ヘッドライトは、リフレクターが腐食する。

ソフトトップの脱着は難しい。完全な防水というわけでもなく、摩耗しやすい。アフターマーケットではハードトップも入手できる。

エンジン

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)

Kシリーズエンジンは、適正に整備され、チューニングを受けたり過酷に回さなければ、32万kmほどは使える。タイミングベルトの交換歴を確かめたい。標準なら8万6000kmか5年毎、チューニングを受けている場合は5万8000kmか3年毎の交換がベター。

ラジエタークーラントとエンジンオイルが混ざっていないか確認する。安定しない水温やクーラントの減り、テールパイプの変色なども、吸気マニフォールドやヘッドガスケットの不具合を示す可能性あり。冷間時のタペット音は、整備不良で起きがち。

フロントに取り付けられたラジエターは、腐食や損傷を受けやすい。アルミニウム製へアップグレードされていることも。

トランスミッション

シフトケーブルは新品でも感触がゴムっぽく、緩むことがある。変速時に引っかかりを感じる場合、リビルドの必要性を疑う。

サスペンション

フロント・トップマウントのスチール・ボビンが錆びると、アルミニウム製のシャシーに電食が起き、錆びてしまう。

シャシー

アルミ製のシャシーは溶接に適さない。不適切な修理痕がないか確かめたい。リア・サブフレームが強い衝撃を受けると、変形したりヒビが入る。亜鉛メッキされ、ダメージを与えない限り腐食しない。

インテリア

乗り降りがしにくく、シートが痛みやすい。シートの位置調整はドライバー側のみ可能。一部で標準装備だったレザー内装は人気。パワーウィンドウの修理は高い。

英国で掘り出し物を発見

ロータス・エリーゼS1 登録:1998年 走行:4万5000km 価格:2万2495ポンド(296万円)

ワンオーナー車で、理想的な内容の持ち主。低走行距離で整備記録が揃い、MMCブレーキに、控えめだが効果的なアップグレードが施されている。

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)

ロータスの本社工場、へセルでのライン上で組まれる写真と2本のキー、純正工具、未使用のスペアタイヤが備わる。新車時からラジオが装備され、ダッシュボードのブランクパネルも残っている。

クラッシュの跡もなく、エポキシ接着剤の接合部分も美しい。気になる点は、リアスポイラーにわずかにあるタッチアップ程度だろう。

明細を見る限り、オーナーは当初レザーインテリアを選んでいるが、すぐに工場でスエード張りのスポーツシートに交換された様子。ロータス製のスポーツ・エギゾーストと脱着可能なモモ製ホイールも付いている。サスペンションはS2のものに変えてある。

エンジンの状態も良く、フルード類も綺麗なまま。タイミングベルトは2011年、3万1900km時で交換してある。始動性も良好で、最近4輪ともにアライメント調整を受けたばかり。きしみ音や異音などもない。水温は83度で安定している。

この金額で、この内容のクルマはなかなか見つからない。走りも素晴らしいだろう。

オーナーの意見を聞いてみる

「以前はスバル・インプレッサやゴルフGTIに乗っていました」 と話す、エリーゼオーナーのクリス・テスター。「1996年に、導かれるようにエリーゼを購入しました。当時は2年で6万4300kmほど走り込みましたが、信頼性は抜群に良かったですね」

「今はS2のエキシージも所有しています。このS1エリーゼは、どうしても欲しくて再び手に入れました。わたしで4オーナー目。当初は約2万kmの走行距離で、購入してから6500kmくらい走っています」

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)

「長期保管されていたクルマで、ショックアブソーバーやブッシュ、タイヤ、エグゾーストなどの交換が必要でした。複合素材のMMCブレーキのほか、高価なアルミニウム製パーツが用いられている初期型です」

「車高が下がる、ナイトロン社製のサスペンションを組んでいます。タイヤはフロントが195/50 R15で、リアは225/45 R16にしてあります。標準サイズの185/55 R15と205/50R16は、提供ブランドが限られるのです」

まとめ

画期的なスポーツモデルとなったシリーズ1のエリーゼも、誕生から25年が経つ。英国では走行距離の短いクルマから長いクルマまで様々。状態の良いものも少なくない。

購入するなら、純正状態にこだわりたい。改造を受けていても、もとに戻せる内容に留めてあると良い。レアなモデルほど、愛好家の間での人気は高い。しかし標準のエリーゼが、結果として一番乗って楽しかったりする。

良いトコロ

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)

素晴らしいスポーツカーで、経済的。エンジンやトランスミッションの信頼性は高く、整備もしやすい。定期的なメンテナンスさえしていれば、余計な費用はかからないはず。

良くないトコロ

高い負荷を掛けられ続けてきたエンジンほど、早く駄目になる。乗り降りはしにくい。ロータス・エクスクルーシブ部品は、高価だ。

ロータス・エリーゼS1(1996年〜2001年/英国仕様)のスペック

価格:新車時 2万2650〜2万6590ポンド
生産台数:1万619台
全長:3726mm
全幅:1820mm
全高:1202mm
最高速度:199−218km/h
0-96km/h加速:5.5〜4.7秒
燃費:9.9−13.5km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:725−755kg
パワートレイン:直列4気筒1796cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:119ps/5500rpm/192ps/7800rpm
最大トルク:16.8kg-m/3000rpm/17.6kg-m/5200rpm
ギアボックス:5速マニュアル