人・モノ・金・情報の流れの最適化/野町 直弘
今回2か月近い在宅勤務をしてきて、いくつかの気づきがありました。これは一時的なものではなく、まさにコロナ禍をきっかけとした流れや動きの最適化改革と言えるでしょう。
従来、人・モノ・金・情報は重要な経営資源とされてきました。この重要な経営4資源のうち、今回のコロナ禍では特に人の流れや動きに大きな制約があったと言えます。しかし、人の流れや動きに制約があったとしても、思ったほど大きな制約はなく、ほぼほぼ従来通りの業務ができたという印象が残りました。特に、調達購買業務に関しては直接モノに関与する機能・業務以外は、想定以上に業務は回ったというのが大方の感想ではないでしょうか。業務効率も家庭の環境によるところはあるものの、在宅の方が集中しやすく、これを契機にペーパーレスも進んだので、むしろ効率化されたという意見が多いようです。
何故、人の流れや動きが業務の大きな制約にならなかったのでしょうか。これは、人の流れや動きを代替する手段があったことです。例えばモノの流れですが、人が動かなくてもモノが動けば代替されます。もちろんモノを誰かが集中的に動かす、という条件付きです。例えば飲食ですが、自分が食べに行かなくても宅配してくれれば、従来通り美味しい食事を効率的に食べることができます。つまり、モノの流れは人の流れや動きの代替手段になり得るということがわかったのです。
一方で情報の流れも人の流れや動きの代替手段になることが明らかになりました。電子会議やチャットなどのコミュニケーションツールの活用により、今までは何でもかんでも、時間と場所を共有する、従来型のフェースツーフェースの会議をしていましたが、場所を共有する必要性がなくても、コミュニケーションが取れるようになったのです。つまり、情報の流れが人の流れや動きを不要にしました。
このような代替性は、今回のコロナ禍で多くの方が実感したことで、一度変わると元には戻らないでしょう。
金については既にフィンテックにより情報の流れに代替され始めています。今は個人間の金銭の受け渡しも新しい決裁手段で簡単にできるようです。そのうちお正月のお年玉なども単なる情報の流れだけで行う世の中が当たり前になってくるかもしれません。
このように考えていくと人・モノ・金・情報のうち、モノと情報の流れがより重要視され、人と金の流れや動きの代替手段となってきていることが理解できます。もちろん、最低限の人対人のリアルなコミュニケーションや観光やレジャーなどは従来以上に重視されてくるかもしれません。
しかし、それ以外の人の流れや動きは代替が一層進む方向にあると言えます。金の流れはより一層情報の流れに代替され、キャッシュレスはより進むに違いありません。
これらの改革はいわゆる人・モノ・金・情報の流れの最適化と言えるでしょう。
このような状況下で、進めなければならないのはミクロでは代替手段への業種等の転換であり、マクロではそのような産業構造転換を支援する動きです。モノが動けば、従来コンビニが握っていた流通業界の覇権が物流事業者に移る可能性にもつながります。多くの小売業は成り立たなくなり、業態転換を求められます。
また航空会社は従来のビジネスユースの旅客輸送中心の戦略から貨物輸送やレジャー用途中心の戦略に移行せざるを得ないでしょう。
モノの流れは最後までなくなりません。人が動かなければ、モノを動かして人に届けなければなりません。一方で人が動くよりもモノを集中して、誰かが動かせば、より効率化されることは間違いありません。今回の改革が現状の物流の非効率性を是正するきっかけになるかもしれません。
また情報の流れについても様々な新しいビジネスチャンスにつながるでしょう。電子会議はその代表的なものですが、よりリアルなコミュニケーションに近づけるようなVRやARの活用や、旅行や演劇、コンサートなど従来よりも効果的に楽しめるための技術やサービスも出現してくると予測されます。
私は従来ジムのグループレッスンによく出ていたのですが、今回のコロナ禍でスポーツジムは休業になりました。一方一部のジムではインスタグラムやFacebook、Zoomなどでグループレッスンを受けるような仕組みをつくってくれたのです。これによって、私は海外のグループレッスンにも何度か出ることができました。リアルの世界ではうけることができないインストラクターのレッスンを受けることができる、など積極的に捉えればものすごい貴重な機会につながります。
このように従来の人・モノ・金・情報の流れや動きを最適化することが、今回のコロナ禍を踏まえスタートし、今後益々促進することが考えられます。ウイズコロナの時代においては、これらの4要素の流れの最適化とともに産業構造転換や新しい技術、サービスの開発が進んでいくことが予測されます。
次回は特にウイズコロナの時代における調達購買業務の変革について考えてみましょう。