梅田駅に「変態」が溢れている―― 

2020年5月11日、ツイッターでは突如こんな情報が拡散された。大阪の地下鉄・梅田駅の構内が「変態」だらけになっているとのことだが...どういうことなのか。

その様子がこちらだ。


圧倒的「変態」(画像はみひめかおり@oriori_kaoriさん提供)

「変態変態変態変態...」

何ということだろう。大きく「変態」と書かれた広告が構内をジャックしているではないか。ここまで羅列されると「自分に言ってるのかな」と錯覚すら覚える。とりあえず本物の変態ではなくて良かった...。

実はこれ、京都水族館(京都市)による夏のリニューアルオープンを告知する広告。正確には「変態予告」と書かれており、よく見ると文字を作っているのは海の生き物たちだ。


リニューアルオープンの広告だった(画像は京都水族館提供)

「予告」の部分が隠れているため、「変態」だけが並んでいるように見えたのだ。ツイッターではこの衝撃的な光景に対し、

「なかなか斬新な攻めかたですね」
「今朝の梅田は変態がいっぱい」
「なんだろ?すごく癒された」

といった声が寄せられている。

なぜ「変態」?水族館に聞くと...

Jタウンネットは5月15日、京都水族館の担当者と、この広告のイラストを手掛けた石井正信さんを取材した。

京都水族館の企画広報担当によれば、施設は当初 4 月下旬のリニューアルオープンを予定していた。しかし新型コロナウィルス感染拡大防止のため、2月29日から一時休館。再開日は未定だが、状況が収束することへの期待を込めて広告を掲出した。

広告ではリニューアルを「変態予告」というインパクトあるキャッチコピーで表現したが、時と場合によって「変態」はマイナスイメージにも捉えられる。なぜあえてこの言葉を選んだのだろうか。

担当者に聞いてみると、

「開業から約 8 年、変化する時代や環境の中で、京都水族館がこれまで大事にしてきた『水族館のある暮らしを提供する』という本質的な想いは変わっておりません。
その一方で、京都水族館がこれから新しい形態へ変化していく姿勢を『変態』という言葉で表現しています。今後の京都水族館に期待や興味を持っていただくことが狙いです」

とのこと。狙い通り広告は話題となり、SNSで拡散されたというわけだ。

作者「ある意味『変態』的なイラストを目指した」

広告のイラストを手掛けた石井さんには、描く際に意識したこと京都水族館を通して聞いた。

「『変態予告』というコピーがとても強いので、その言葉に負けない絵にしたいと思いました。(文字を構成する生き物は)細部まで綿密に描いていますが、図鑑的な正確さを目指すより、生き物のフォルムの面白さや奇妙さを出すことにこだわっています。ある意味『変態』的なイラストレーションを目指しました」


泳いでいるようだ(画像は京都水族館提供)

文字を作る魚たちはまるで生きているような、動きある描写が魅力的だ。どんな生き物が隠れているのか探してみるのも面白いだろう。

しかし注目を集めた要因の一つが、駅の構内で「変態」の文字が並んでしまったことだが、こちらは狙っていたのだろうか。

石井さんに聞いてみると「折り重なる点についての表現意図はありません」。さすがに予想外だったようだ。しかしその一方で、

「京都水族館が広告に込めた『変わることへの思い』をインパクト強く伝達できているのではないかと実感しています」

としている。

駅の広告がSNSで話題になったことについて、京都水族館は「話題になっていることに対しては素直に嬉しい思いです」とコメント。広告は梅田駅の他にもJR京都駅や京都市営地下鉄・四条駅、京都市営バスのバス停、商業施設に24日まで掲示される。

(18日11時30分追記)広告の制作体制に関する情報に一部誤りがあったため、修正しました。