カリフォルニアを本拠とするカジュアルウェアのブランド、アビエイターネイション(Aviator Nation)は、販売の流れを絶対に止めないと決意している。外出禁止令などに負けるわけにはいかない。

「ほんの48時間のあいだに、順風満帆だった私の会社は、事実上、私の手から奪い去られた」。創業14年目を迎えるアビエイターネイションの生みの親、ペイジ・マイコスキー氏はそう語った。

アビエイターネイションは、サウスロサンゼルスの自社工場で働く120人を含め、200人以上の従業員を雇用している。13店舗を展開し、売上の80%は消費者に直接商品を売るリテールで、オンライン販売がそのうちの70%を占める。ソールサイクル(SoulCycle)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、ノードストロム(Nordstrom)、サックスフィフスアベニュー(Saks Fifth Avenue)を含む主要なホールセールパートナーは、いずれも店を閉め、注文をキャンセルしている。マイコスキー氏によると、専門店を通じたオンライン販売はいまのところ安定しているという。

給与のため即座にセール

マイコスキー氏が新型コロナウイルス感染症の影響を実感しはじめたのは、アスペンマウンテンのスキーリゾートが閉鎖した3月14日のことだ。アビエイターネイションも同リゾートに店を構えている。それからまもなく、同社が3店舗を展開するサンフランシスコ市に外出禁止令が出された。だが大打撃となったのは、木曜(3月19日)の夜に発布された、カリフォルニア州全土におよぶ屋内退避命令だった。これにより、アビエイターは、数としてはもっとも多いロサンゼルス市の全店舗と、サウスLAの工場を閉鎖せざるをえなくなった。

「最大の経費は従業員に支払う給料だ」と、マイコスキー氏は語る。「私にとっての最優先事項は彼らを雇用しつづけることだ。州知事による発令後、私はすぐさま従業員に電子メールを送った。『失業者は出さない。給料支払の小切手を受け取れない人も出さない。皆さんはただ安全第一に、外出を控えてほしい。私たちが対策を考える』。利益とかなんとか、そういうことは後で心配すればいい。私は従業員に給料を支払いつづけるし、必ずその方法を見つけるつもりだ」。

マイコスキー氏と彼女のチームはただちに24時間限定セールの準備に取りかかった。セールの売上金は全額、店を閉めているあいだの従業員の給与支払に充てられる。彼らは木曜の夜10時から翌金曜朝の5時まで作業を続け、同社のサイトを同氏言うところの「販売機」に作り替えた。人気商品を配置し、在庫商品を店舗から工場へ一晩かけて発送し、カリフォルニア州が事業主に認めた猶予期間内に注文品をすべて配送できるように手はずを整えた。

顧客には一斉配信メールを送ってセールを告知し、売上金がすべて従業員に支払われることも説明した。ブラックフライデーとサイバーマンデーを圧倒する、会社はじまって以来最大のセールとなった。マイコスキー氏によると、少なくとも従業員の給料ひと月分がまかなえるほどの売上があったという。週末には経営幹部も加わり、工場で働く人々のフルフィルメント作業を手伝った。

通販サイトの営業は継続

このセールに触発されたマイコスキー氏は、通販サイトの営業を継続することにした。商品の出荷は、オースティン市のように、店は閉めているが、封鎖は免れた都市の店舗から行う。アビエイターネイションのホームページ(AviatorNation.com)には、購入商品の出荷に遅れが出ること、購入代金が従業員の支援につながることを説明する告知が掲げられている。

ほかの多くのアパレル企業同様に、アビエイターネイションも月曜日から自社工場で医療用マスクの生産を開始する。これは法律で認められた、日々の生活に欠かせない基本的なサービス、いわゆるエッセンシャルサービスの提供に相当する。生産の移行を安全かつ円滑に行うために、マイコスキー氏は必要な原材料の調達を手配し、工場の入り口に従業員の体温を測定する検問所を設けるなどの安全措置を講じた。

「新しい戦いで毎日がはじまる」とマイコスキー氏は言う。「ほんとうに、戦争に行くようなものだ。従業員からも多くの質問が来る。私はリアルタイムで応答し、ニュースを注視しながら、すべての情報を処理しようとしている。間違いなく、人生でもっともクレイジーな1週間だ。だがいまは、人助けに注力している。ひとつひとつの小さな行いが役に立つ」。

「いまもっとも重要なのは善意」

アビエイターネイションのような中小企業は、より機動性が高く、臨機応変にポジショニングを調整できるため、このような状況を生き抜くことにかけては有利かもしれない。そう指摘するのは、デジタルエージェンシーのPMGでマーケティングとクライアント開発を担当するバイスプレジデントのパークス・ブラックウェル氏だ。

「多くのブランドは、すでに支援や救済に重点を置くメッセージを展開している」と、ブラックウェル氏は言う。「我々は長年にわたり、本物で、正しく、信頼できること、いわゆるオーセンティシティについて語ってきた。このようなときに、信頼に値するオーセンティックな方法で顧客とつながり、彼らに安心感を与えられるブランドが、このさき長く、その善意を有効に活用することができるのではないか。いまこのとき、もっとも重要なのは善意であり、人々は自分たちを助けてくれたブランドと、そして助けてくれなかったブランドを、決して忘れないだろう」。

JILL MANOFF(原文 / 訳:英じゅんこ)