2019年12月ごろから、中国の武漢市を中心に新型コロナウイルスが大きな広がりを見せており、世界各国の医療機関が対応に追われています。そんな中、伝染病を拡大させて世界を滅亡させることを目標としたシミュレーションゲーム「Plague Inc.」が大人気になっていることが報じられました。

Video game company urges users to seek information about coronavirus from official sources, not its game - CNN

https://edition.cnn.com/2020/01/26/tech/plague-coronavirus-game-warning/index.html

Fake news can help you kill the world in 'Plague Inc.' | Engadget

https://www.engadget.com/2019/12/05/plague-inc-fake-news-weapon-full-fact/

App games about plague and disaster go viral in China - Quartz

https://qz.com/1789134/app-games-about-plague-and-disaster-go-viral-in-china/

2012年にリリースされたシミュレーションゲーム「Plague Inc.」は、イギリスを拠点とするゲーム開発会社Ndemic Creationsが開発した、iOSおよびAndroid端末向けのゲームアプリです。ゲームの内容は、プレイヤーがバクテリア・ウイルス・寄生虫・生物兵器などを使い、進化を繰り返して病原体を強化しつつ感染を拡大させ、最終的に人類を滅亡させるというもの。



「Plague Inc.」を取り上げたアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、2013年に公開した特集記事の中で「このゲームは、一般の人々が公衆衛生問題につい引き込まれてしまうような、リアルで説得力のある世界観を構築しています」と紹介。Ndemic Creationsの創設者で「Plague Inc.」の開発者でもあるジェームス・ボーン氏は、CDCのインタビューに対し「オンラインでの調査を重ね、感染症などに関する論文を読みあさってリアルなゲームに仕上げました。ありがたいことに、『Plague Inc.』はゲームとして大ヒットしただけでなく、学校や大学などで教育ツールとしても活用されています」と語っています。



そんな「Plague Inc.」が再び脚光を浴びているのは、2019年12月に武漢市で発見された新型コロナウイルスが、世界的な流行の兆しを見せているのがきっかけ。経済紙Bloombergの記者Zheping Huang氏は2020年1月22日に、「現実世界でのウイルスのアウトブレイクが、ゲーマーのブラックユーモアを誘いました。2012年に登場した『Plague Inc.』は、今では中国で一番人気の有料iOSゲームです」とツイートしました。





「Plague Inc.」の中には、フェイクニュースやデマにより、かえって感染症が勢力を拡大させるシナリオも登場。中国のゲーマーからは、「フェイクニュースがはびこる恐怖を肌で感じています」「没入感を得るために、ゲームのスタート地点となる感染症の発生地を中国に設定しました」との感想が挙がっています。



また、「Plague Inc.」のPC版である「Plague Inc:Evolved」も大きな注目を集めています。以下は、PCゲームのプラットフォームSteamが発表した「Plague Inc:Evolved」のプレーヤー数を表す図です。グラフを見ると、新型コロナウイルスが本格的に流行しはじめた2020年1月ごろからプレーヤー数が急増していることが分かります。直近30日間の「ピーク時のプレーヤー人数」は1万7889人で、2019年末の10倍近い人数です。



あまりにもプレーヤーが激増したため、「Plague Inc.」のサイトやマルチプレイ用のサーバーがダウンする事態が発生。





さらに、「Plague Inc.」についてメディアやプレーヤーから問い合わせが殺到したため、Ndemic Creationsは「新型コロナウイルスの発生に関する声明」を発表。その中で「『Plague Inc.』は8年前のゲームですが、病気が流行するたびにプレーヤーの増加を見てきました。私たちはこのゲームを、現実世界の深刻な問題をセンセーショナルにするためではなく、現実世界で役立つように設計しました。ただし、ゲームはあくまでゲームですが、昨今の新型コロナウイルスの流行はリアルな問題です。プレーヤーの皆さんには、お住まい地域や世界各国の保健当局から直接情報を入手することを、強くお勧めします」と述べて、冷静な対応を呼びかけました。