安部は別格のテクニックで攻撃を牽引。一方で守備での貢献も見逃せなかった。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンチャレンジカップ]U-22日本9-0U-22ジャマイカ/12月28日/トランスコスモススタジアム長崎

 U-22日本代表は、2019年最後の国際試合キリンチャレンジカップのジャマイカ戦を9−0の大勝で終えた。

 率直に言って、ジャマイカはまったく張り合いのない相手だった。時差ボケなのか、長崎の凍えるような寒さに慣れなかったのか、明らかに動きに精彩を欠き、ただただ日本の攻撃を受けるだけの“サンドバック”のようだった。

 そうしたコンディションを考慮せずとも単純に技術的にも劣る相手でもあった。ジャマイカの選手はドリブルが足につかず、パスをしても味方の足もとにつながらない。簡単にボールを日本に明け渡していた。

「低調な相手と戦って何が見えるんだ」「意味のない試合だ」という意見もあるだろう。しかし、9−0で圧勝した日本代表を、素直に評価したい。
 
 日本は5分の中山雄太の圧巻のFKを皮切りに、サイドを度々切り崩してゴールを量産。スペインの名門バルセロナBで活躍するテクニシャンの安部裕葵が、面白いように相手を翻弄してファウルを誘えば、ポルトガルのマリティモで研鑽を積むスピードスター前田大然は、持ち前の快足を遺憾なく発揮し、相手の脅威となった。大学ナンバーワンアタッカーと呼び声高い旗手怜央も鮮やかなボレーシュート2発を決め、初選出の東俊希も鋭いプレースキックでインパクトを残した。

 さらに交代で出場した一美和成、三笘薫、岩崎悠人がいずれも目に見える結果を残し、終わってみれば8人がスコアラーとなるゴールラッシュを披露したのである。

 そして、もっとも素晴らしかったのは守備面だ。相手ボールになれば、すぐさまひとりがボールホルダーにプレッシングを仕掛け、その後ろからは2人目、3人目が連動して囲い込むようにジャマイカの攻撃を遮断していった。終始ゲームの主導権を握れたのは、こうした組織的な守備が出来ていたからだった。

 森保監督も試合後、「ボールを奪われた瞬間に素早く切り替えて、もう一度ボールを奪い返す、あるいは相手に自由にプレーさせることなく自分たちのいい形で守備に移っていくという部分、そういうベースの部分で選手たちは戦ってくれた」と称賛している。
 U-22代表活動は招集の強制力がないため、クラブから拒否されるケースも多い。今回も例に漏れず“急造チーム”と言えた。ベストに近いメンバー構成だった11月のコロンビア戦からは大幅に選手が入れ替わっていて、11月から引き続き招集されたのは、23人のうち、GK谷晃生、DF中山(11月はMF登録)、岩田智輝、瀬古歩夢、MF長沼洋一、高宇洋、鈴木冬一、FW前田の8人。コロンビア戦に出場したのは、そのうち中山、岩田、前田の3人のみだ。しかも今回の活動が始まったのは試合の4日前と、まさに“ぶっつけ本番”だった。

 それでも、前述したように組織的な守備が機能し、一定以上の結果を得ることに成功している。その背景には、密なコミュニケーションがある。

「お互いどうやったら連係連動できるか、意思統一してイメージを合わせていけるか、トレーニングから選手たちが積極的にコミュニケーションを取り、そしてピッチ外でも試合に向けてコミュニケーションを取ってくれていたことが、11月とこの12月の違いかなと思います。

 11月の活動の時にも、おそらく選手たちは『話す』という部分でのコミュニケーションは意識してやってくれたかもしれませんけど、よりピッチ内で活きるサッカーの話をするという部分では、11月の反省を踏まえて、今回の12月の活動は違いがあったかなと思っています」
 
 森保監督のコメントからも分かるように、今回の活動ではより綿密なコミュニケーションが取れていたのは間違いない。