今回は、住宅ローンの滞納とその影響について掘り下げます(写真:tonko/PIXTA)

住宅ローンを滞納するとどうなるのか、すぐに競売にかけられてしまうのか、うっかり引き落としされなかったときはどうなるのか……などなど、住宅ローンを組んで家を買った人は、つねに心の隅に不安を抱えているのではないでしょうか。

うっかり残高不足ということは誰にでもありえます。しかし、それ以外にも、リストラ、減給、病気、離婚などさまざまな理由で、住宅ローンを延滞・滞納してしまう可能性は考えておきたいところです。今回は、住宅ローンの滞納とその影響について掘り下げます。

よく耳にする「ブラックリストに載る」とは

返済が滞った際にまず気になるのは、「ブラックリストに載る」「信用情報に傷が付く」状態になったかどうか、ですね。


この連載は今回が初回です。

個人信用情報機関(以下、機関)に載ったらブラックだという表現がされることがありますが、正確ではありません。

というのは、住宅ローンを組んだり、携帯電話本体を分割払いで購入したり、クレジットカードなどの利用を始めた段階で、機関には債務者情報として登録されて、毎回の支払いがつつがなく行われたかどうか記録されているからです。

つまり、延滞していなくても、機関には債務者として情報が載った状態になっているわけですね。

個人信用情報機関は現在3つあり、それぞれの機関が保有しているのは客観的な取引事実を表す信用情報であって、支払いが遅れて延滞となった場合にはその内容が客観的な取引事実として反映される、というだけです。けれども、延滞が続くと話は別です。


3つの機関は通常それぞれで情報を管理・収集していますが、異動情報(3カ月以上の延滞、1〜2カ月の遅延が複数回あった場合など)や事故情報(自己破産など)について、交流する仕組みがあるからです。

多重債務者の発生や過剰貸付を防ぐことを目的に、CRIN(クリン:JICC、CIC、JBAの相互交流ネットワーク)とFINE(ファイン:貸金業法に基づくJICCとCICの相互情報交流ネットワーク)で情報交流しています。あくまで各機関の個別基準によって交流すべきと判断された情報を交流しているので、金融事故情報のすべてが共有されているわけではありませんが、方々で影響が出る状態になることは間違いありません。

ブラックリストなる一覧表は存在しないのですが、「ブラックリストに載る」と表現される状態は、異動情報や事故情報が登録されたり、このように機関をまたいで情報共有されたりする状況という認識でよさそうです。

金融機関に早く連絡したほうがよい理由

住宅ローン返済が1回うまく引き落とされなかったという場合、延滞した事実は機関の信用情報に載り、滞納が解消された後も5年間は消えません。

その影響は、家のリフォームローンや車のオートローン、ショッピングローンといった新たな借り入れの審査や、新しくクレジットカードを作るときの審査などにマイナスに影響します。

ただし、マイナスに評価されたからといって、審査に落ちるとは必ずしもいえません。1回の延滞だけならとくに気にしないが過去に何度か延滞していればダメなど、審査する側が信用情報を読み取って独自の判断基準で総合的に審査する位置づけだからです。

そんな中で、携帯電話の機種を変えて分割払いにしようとしても審査に通らなかったり、前回の記事『災害時の「住宅ローン返済」意外と知らない基本』で触れたように、災害時の返済免除の適用が受けられないといったこともありうるので、甘く考えないことが大切です。

さて、マネー面から言えば、うっかり口座残高不足で住宅ローンを延滞してしまったことに気づいたら、できるだけ早く借入先の金融機関へ連絡するのがおすすめです。電話すれば、いつ返せるのかを確認されて、延滞損害金(遅延利息や延滞利息)を計算し、住宅ローン返済額と併せて指定の口座に振り込むように指示を受けるのが一般的です。

延滞損害金の額は、住宅ローンを借りる際に金融機関と交わした「金銭消費貸借契約書」に明記されていて、通常、年利10%を超える高い利率が設定されています。返済日に引き落としができなければ、遅延損害金は翌日から発生します。住宅ローンは借入額が大きいだけに、返済が遅れるほど、あっという間に数千〜数万円単位のお金がプラスオンされていきます。

せっかく年利1%を切るような低利な住宅ローンを借りているのですから、1日でも早く、催促される前にこちらから連絡したほうが、遅延損害金も少なく、金融機関の心証悪化も防げます。

「延滞」が続いてから「競売」までの道のり

もしも、リストラ、減給、病気、離婚、その他の深刻な事情で住宅ローン返済が困難になりそうだと思ったら、できるだけ早く金融機関に相談することが重要です。その金融機関との調整だけで対応可能な状況であれば、返済期間や月々の返済額を変更するなど住宅ローンの条件変更などの相談に乗ってもらえる可能性があるからです。

ただし、すでに返済の資金繰りに困って消費者金融などの利用に走ってからでは、相談を断られるケースも散見されています。ばれないと思っていても、信用情報を見れば、利用の有無やクレジットカードの多重申し込みの事実を容易に把握できます。借入先の金融機関への相談は、“実際に返済に困る前”のタイミングであることが重要です。

中には、自然災害などで被災してそれどころではないという人もいますが、そうしたやむをえない事情を金融機関に説明すれば返済猶予の道も開けますので、なぜ返済できないのか状況の説明と相談は大切です。

では、実際に延滞が続いてしまったら、どうなるのでしょうか。延滞が続いてから競売までのイメージを下記にまとめました。ここにある書類の名称や、目安の時期は金融機関などによって異なるのであくまで参考としてご覧ください。

■「延滞」が続いてから「競売」までのイメージ

〜2カ月前後:延滞の事実を知らせたり、支払ってほしい旨を記載した位置づけの「支払い請求書」が届く。金融機関から電話による確認・連絡が入る。来店依頼状、住宅ローン返済の催告書が届く。

3〜6カ月:厳しい文面の督促状が届く。「期限の利益の喪失に関する予告書」「代位弁済の予告書」といった書類で、さらに延滞が続いた場合の予告がされる。早いところでは延滞3カ月で期限の利益を失い、売却に向けた手続きが開始される。保証会社を利用している場合には「代位弁済通知書」が届き、一括返済を迫られる。

6〜10カ月:早ければ滞納から半年で競売に向けた手続きが開始される。裁判所から「差押通知書」「競売開始決定通知書」が送られてくる。裁判所の裁判官と不動産鑑定士による自宅訪問・現況調査が行われ、その調査結果である「現況調査報告書」をもとに、競売物件としての価格やスケジュールが確定する。

1年前後:「期間入札決定通知書」が届き、1週間〜1カ月の入札期間を経て、居住用物件の場合、競売開始から明け渡しまでは、4〜6カ月程度が一般的。(注)書類の名称や、上記の目安の時期は、金融機関により異なる

最初の1〜2カ月は、圧着はがきで支払い請求書が送られてきたり、金融機関から電話がかかってきたりします。

それでも滞納が続くと、借入先の金融機関へ来店して事情を説明してほしい旨の来店依頼状や、住宅ローン返済の督促状が送付されてきます。同じ内容の督促状もしくは最終督促状が届いたら危険信号です。「何度も督促したのですがダメでした」という事実を積み上げることで、競売申し立てなどの権利行使に移る方向に舵を切られたことになるからです。

必ず金融機関に連絡を入れ、事情を説明し、返済条件の変更など今後について調整する姿勢が重要です。

何もしないとかなりまずい

何も行動を起こさずにいると、ここからはジェットコースターのように一直線にまずい方向へ加速します。金融機関はマニュアルに則り、競売に向けて手続きを始めてしまうからです。

住宅ローンの滞納が続くと、「期限の利益の喪失に関する予告書」や「代位弁済の通知書」といった書類が送られてきます。これは事実上の“最後通告”です。

「期限の利益」というのは、毎月少しずつ返済するのでお金を貸してくださいという、ローン契約でよく出てくる言葉です。住宅ローンを借りる際に交わした契約書(金銭消費貸借契約書)には、分割して毎月決められた日に少しずつを一定期間にわたって返済するという約束事として明記されています。

そのため、延滞して決められた日に返済できなかったということは、その約束事を債務者側から破ることを意味します。つまり、契約違反と見なされて「期限の利益」を失って分割払いが許されなくなり、その時点での残債と遅延損害金について一括返済を迫られることになるのです。

しかし、毎月の返済でも滞っている状況ですから、数千万円もの残債を、分割ではなく一括で請求されたら払えるはずもありません。そこで、保証会社を利用している場合には、代位弁済が行われることになります。

代位弁済とは、債務者に代わって保証会社が金融機関へローン残債を一括返済することです。住宅ローンを組む際に、諸費用の1つとして数十万円支払ったあの「ローン保証料」は、この仕組みにかかる費用なのです。

「代位弁済通知書」という書類が手元に届いた段階で、保証会社はすでに一括で金融機関に支払い完了しています。つまり、保証会社の利用によって金融機関は残債を無事に回収できるので、債務者はいったん救われるように見えるかもしれませんが、それは誤解です。金融機関に残債を一括返済した保証会社は、銀行に代わって求債権を取得し、期限の利益を失った債務者に残債を一括請求してくるからです。

もちろん、一括返済できないのは目に見えている中、サービサーと呼ばれる債権管理回収業者に求償権が回っていくなど精神的にも追い詰められていきます。最終的に、担保となっている家を売却して、そのお金でローンを返済するしかないため、競売もしくは任意売却する方向にどんどん進んでいきます。

担保となっている自宅はほどなく差し押さえに。差し押さえとは、貸したお金を返してもらうという債権者の権利を守るために、債務者の意志のみで自宅を売却できないようにするための処置のことです。差し押さえとなった旨は登記簿謄本に明記され、債権者の協力なしに競売を回避することはできなくなります。

最終的に、競売や任意売却(債権者の了解の下で担保の自宅を売却)しても払いきれず残った借金については一括での返済を求められ、払えなくて自己破産・個人再生……といった流れになります。

「住宅ローン」は大きな借金

住宅ローン破綻を回避する基本は、滞納を甘く見ないこと、もしものときの貯蓄を生活費とは別枠で備えておくこと、困りそうになったらとにかく早く借入先に相談すること、に尽きます。

先行き不透明な時代ですから、過度に大きな借り入れにならないような購入計画にして、なるべく早く繰り上げ返済していくのが、住宅購入の基本です。住宅ローン返済中は、滞納が続けば、あっという間に「家」も「穏やかな生活」も「家族」も失う可能性をつねに念頭に置いていただけたらと思います。次回は、離婚後の住宅ローン破綻について、取り上げます。