多くのスポーツの話題で盛り上がった2019年。そのなかから、本誌が厳選した10大ニュースをご紹介しよう。まずは、スポーツライター青島健太氏の総評から。

「すごいことが起こったなと思うのは、バスケットボール、NBAの八村(塁)くんですね。まさか、日本人の選手がドラフト1巡目で指名されて、さらにいきなりシーズンで活躍、快進撃を始めるなんて、考えられなかった。

 陸上のサニブラウンくん、テニスの大坂(なおみ)さんも同じで、日本も国際化が進み、非常に素晴らしい身体能力と、日本人のメンタリティを併せ持ち、世界の最高の舞台で活躍している。ある種の隔世の感、新しい時代の幕開けの象徴だと思いますね」

 20代の「新しい時代を担うスターたち」の登場により、“時代の節目” が訪れることに。

「『節目をわかっていたのか』というタイミングで、イチローくんが引退した。多機能ハイスペックな彼のプレースタイルは、日本の文化の真髄。そんな姿に自分を重ねて観ていたから、老若男女問わず、彼に魅了されていたんだと思います。

 ラグビーも時代の節目を感じます。アジア代表でW杯に出場しても、まったく歯が立たなかった日本代表が、初の決勝トーナメント進出。

 なぜ彼らに強いシンパシーを感じたかというと、流行語大賞にも選ばれた『ONE TEAM』。タックルされ倒されながらも、誰かがフォローして攻撃に繋ぎトライを決める。逆境のなかで個々のハンデをチーム力ではね返すのが、日本のひとつのお家芸。ここが琴線にふれ、共感を呼んだのでしょう」

 一方ゴルフ界は、“彼女” の年だった。

「ハッピーをいちばん表現したのは、ゴルフの渋野(日向子)さん。初めてのメジャー大会で、ニコニコしながら初優勝するというのが痛快。本当に見事でした。女性のかわいらしさと強さを全世界に発信した。

 渋野さんがスポーツ紙の1面を飾ることが多いのは、オジサンたちも完全に彼女に魅了されているからでしょう(笑)」

 スポーツが、多様に観られ、楽しまれる時代になり、新しいプロスポーツも生まれた。

「日本の女子卓球は目覚ましい活躍をし、バドミントンは熾烈な五輪代表争いの真っ只中。どの競技にもメダル候補がいる来年の日本スポーツ界は、ますますおもしろくなると思います」

【本誌が選ぶ「2019年スポーツ10大ニュース+1」】※日程順

●東海大学「復路で逆転、悲願の箱根駅伝初優勝」/1月3日

 阪口竜平(22)、鬼塚翔太(22)、館澤亨次(22)、關颯人(22)ら “黄金世代” が入学したときから、優勝候補と目されながら、結果を出せなかった東海大。

 往路2位も8区でトップの東洋大を抜き去ると、大会記録を上回るタイムで初の総合優勝。3年生になった “黄金世代” が、大輪の花を咲かせ、彼らを育てた両角速監督(53)が宙を舞った。

●大坂なおみ(22)「全豪オープン初優勝で日本人初の世界ランク1位」/1月26日

 前年夏の全米オープンで、日本人初の4大大会優勝を果たした大坂。ともに初優勝、初の世界1位を懸けて、ペトラ・クビトバ(29・チェコ)と対戦し、7−6、5−7、6−4で撃破。4大大会を連続制覇し世界女王に。

 その後はコーチの交代もあり、現在の世界ランクは3位。

●イチロー(46)「観客釘づけの最後の勇姿」/3月21日

 東京ドームでおこなわれた、アスレチックスとの開幕第2戦終了後、現役引退を表明。途中交代でベンチに下がる際には、両球団から大きな拍手が起こった。そして再び、イチローがベンチから姿を現わすまで、ドームの観客はひとりも帰らなかった。

 深夜の85分間に及ぶ引退会見では、“イチロー節” が炸裂。日米通算4367安打を放ち、ユニホームを脱いだ。

●サニブラウン・ハキーム(20)「日本人2人目の9秒台、さらに記録更新!」/5月12日

 米大学南東地区選手権の男子100m決勝で、9秒 99を記録。桐生祥秀(23)に続き、日本人2人目の9秒台を達成。さらに6月8日の全米大学選手権の男子100メートル決勝で、9秒97の日本新記録を樹立した。米国に渡り実力を開花させた20歳の大器に、東京五輪への期待は高まる。

写真・ZUMA Press/アフロ

●八村塁(21)「NBAドラフトで日本人初の1巡目指名」/6月21日

 ニューヨークでおこなわれた、米プロバスケットボールNBAのドラフト会議。ゴンザガ大学に所属する日本のエースが、ワシントン・ウィザーズから1巡目、全体9位で指名を受ける。

 日本人初の快挙で同チームに入団した八村は、12月4日の試合でも15得点をマークし大活躍中。

●石川遼(28)「3年ぶりのツアー優勝は初の国内メジャー制覇」/7月7日

 腰痛などに悩まされ、2016年8月以来、優勝から遠ざかっていた。日本プロ選手権は、大雨で初日が順延となり、最終日は36ホールの勝負。驚異的な追い上げで黄重坤(ハン・ジュンゴン/27・韓国)とのプレーオフでイーグルを決めての復活劇。

「夢なのかと」と涙を流した。

●渋野日向子(21)「42年ぶり海外メジャー制覇でシブコフィーバー」/8月5日

 2位と2打差の単独首位で最終日を迎えた、全英オープン。3番で痛恨のダブルボギーを叩き、一時は首位を譲るも、後半に入って4バーディ。これを入れたら優勝という18番で、6メートルのバーディパットをねじ込み、リゼット・サラス(30・米)に競り勝った。

 1977年の樋口久子以来となる日本人海外メジャー制覇。海外でも “スマイリングシンデレラ” は、大絶賛された。

●星稜高校・奥川恭伸(18)「5試合512球の力投も決勝で散る」8月22日

 夏の甲子園5試合では、最速154kmの512球を投げきり、おおいに盛り上げた。履正社との決勝では9回127球、11被安打6奪三振2四死球の3−5で敗れたが、ドラフトでは3球団から1位指名を受けヤクルトに。

 ロッテに入団する佐々木朗希投手(18)との勝負も楽しみ。

●ラグビー日本代表「W杯初の決勝トーナメント進出」/10月13日 

 勝ち点差で決勝トーナメントに進出できなかった、4年前の悔しさを胸に戦った日本代表。福岡堅樹(27)が2トライ、松島幸太朗(26)、稲垣啓太(29)もトライを決めて、28-21でスコットランドに快勝。「ONE TEAM」で予選リーグを全勝、初の決勝トーナメント進出を果たした。

 決勝トーナメントでは南アフリカに3-26で敗れはしたが、日本中がラグビーフィーバーに沸いた、約1カ月だった。

●井上尚弥(26)「レジェンドを破り “世界最強モンスター” に」/11月7日

 ワールドボクシングスーパーシリーズのバンタム級トーナメント決勝。井上の憧れだった、5階級制覇のノニト・ドネア(37・フィリピン)との勝負は、互いに譲らぬ激闘。11回に井上が強烈な左ボディでダウンを奪い、3−0の判定勝利。井上は右目眼窩底骨折も最強王者に。

●【番外編】炎鵬(25)「小さい体で大ブームに」

 2019年、大相撲で大ブレイクした力士といえば、宮城野部屋所属、前頭六枚目の炎鵬だ。身長168cm、体重は幕内最軽量98kgの小さい体ながら、技とスピードで相手の懐ろに潜り込み、大型力士たちを倒していく姿に、場内は拍手と歓声で大盛り上がり。さらにその甘いマスクで、女性ファンのハートを鷲掴みにしている。

あおしまけんた
1958年4月7日生まれ 新潟県出身 慶應義塾大学卒 元プロ野球選手でスポーツライター。日本医療科学大学の客員教授を務める

※文中一部敬称略。年齢は12月10日時点、日付はすべて日本時間

(週刊FLASH 2019年12月24日号)