Googleで検索すると、偽サイトや不正なマーケットプレイスなどによる偽ブランド品が並ぶブランドは多い。Googleが広告分野の拡大とコマースの推進を試みても、ブランドからするとこの偽ブランド品の問題がますます大きくなってきている。

スポーツアパレルのブランドであるファナティクス(Fanatics)で成長およびSEO担当バイスプレジデントだったデニス・ゴーデジバー氏は2017年、スポーツジャージーのオーガニック検索結果に偽ブランド品がいくつも入ることに気づいた

「偽サイトによるSERP(検索結果ページ)汚染と顧客への詐欺の危険に対して、Googleが予防的対策を取れば、大幅に改善するのだが」と、ゴーデジバー氏は述べている。「こうした偽ブランド品販売業者は、検索結果からの排除が、いちばんユーザーのためになるのだ。なぜ、ライセンスされたNFLジャージーの公式販売業者のホワイトリストを作って、そこを上位にしないのだろうか」。

現在も、同じようにウェブ検索をすると同じように問題のある検索結果が返ってくる。





英国のアパレル企業スーパードライ(Superdry)は2018年、さまざまなオンラインチャネルから削除した偽ブランド品の総額が1億6000万ポンド(約224億円)を超えた。

「きわめて重大な問題だ」と、スーパードライの法務責任者であるジェイムズ・スウィーティング氏は語る。Googleの場合、多くの人は情報の発見に使っていて、たとえば単独のオンラインマーケットプレイスの場合のように警戒していないこともあることから、問題が特に大きい。「消費者が騙されるおそれがある。評判にせよ、失われる売上にせよ、ブランドへの影響は重大だ」と、同氏は話す。

Googleは、中立的な検索エンジンとされている立場上、他所のコンテンツに対する取り締まりの拡大に過敏になっている。オープンなウェブのインデックスを自認しているのだ。一方で、Googleはコマース分野への進出を拡大し、アップデートして拡大を続けるプラットフォームへのさらなる投資をブランドに求めることが増えてきている。偽ブランド品に関する問題が全体に及んでいれば、すぐに信用の失墜につながりかねない。Googleは法的措置が取られない限り、Google検索の偽コンテンツの取り締まりは拒否することにしているようだが、Googleがオンライン体験のコントロール範囲を広げる試みを続けるのならば、この問題はGoogleのブランド認知に大きく影響することになるかもしれない。

最大で結果の60%が偽り



ブランド保護のソフトウェアを提供するインコプロ(Incopro)による新しいレポートは、Googleの検索結果に偽物の商品が蔓延していることを浮き彫りにしている。インコプロは、ブランド品に関して一連のオンライン検索を実施し、各結果が偽商品の宣伝ページにリンクされているかどうかを分類した。薬では「Bactrim」、子供向け製品では、ある歯固め製品を検索対象にして、あわせて6件のブランド製品について調査した。このレポートによると、最大で結果の60%が「偽ブランド品またはブランド所有者の権利侵害である消費財を提供するウェブサイトなど」だった。

「偽物問題」は新しい問題ではなく、オンラインスペースの厄介者の取り締まりについても同様だ。AmazonやFacebookなどほかのデジタルプラットフォームは、これまでもこの問題に対策を講じてきた。たとえばAmazonは、偽ブランド品の取り締まりを何度も誓った。しかし、問題はなくなっていない。調査会社ゴースト・データ(Ghost Data)の最近のレポートによると、インスタグラム(Instagram)にはラグジュアリー製品の偽ブランド品がひしめいていた。また、業界団体である米アパレル・フットウエア協会(AAFA)は先日、偽ブランド品を販売しているとしてAmazonを非難した。

インコプロのレポートについてGoogleにコメントを求めたところ、広報担当者は次のような声明を出した。「レポートで説明されている手順は、大多数の人が検索をどのように使っているのかを無視したものであり、そのため、とても誤解を招く結果になっている。検索はウェブのインデックスであり、Google検索の結果にあるサイトをコントロールするのは、Googleではなくそうしたサイトのウェブマスターたちだ」。

「解決の選択肢は多くない」



検索エンジンの結果に偽物があるとやっかいなのは確かだ。ショッピングプラットフォームであるGoogleショッピングで販売されている個々の偽ブランド品はGoogleが取り締まるが、ブランドは販売促進でも知名度向上でもオーガニック検索に依存している。米DIGIDAYの兄弟メディアであるモダンリテール(Modern Retail)が2019年8月に報じたように、テック大手のGoogleは人々がこれからもGoogleのウェブサイトで検索をするように取り組みを進めている。たとえば、取引はGoogleのプロパティ内でできるし、Googleが必須情報を検索結果の上部に集めることが増えている。この変更だけでも、ブランドがGoogle戦略全般を完全に見直す理由になる。トンブラス・グループ(The Tombras Group)のインテグレーテッドサーチ担当シニアバイスプレジデント、ライアン・エドワーズ氏は10月、「(ショッピングに)大きな可能性があることをGoogleはわかっている」とモダンリテールに語った。

「完璧なソリューションはない」と、eコマースマーケティングエージェンシーであるインフロー(Inflow)のシニアSEOストラテジスト、トーリー・リン・グレー氏は語る。オーガニック検索結果の偽ブランド品に対応するブランドは、Googleに直接アクセスできないと窮地に陥ることが多い。やるべきなのは、攻めの態勢を構築して、ブランドの存在を高めつつ、偽ブランド品の問題を顧客に知ってもらうことだ。偽の検索結果の削除をGoogleが拒否しているあいだは、「選択肢は多くない」と、グレー氏は語った。

責任ある行動は犯罪者当人への連絡だという人がいるかもしれない。しかし、インコプロのCEOであるサイモン・バッグズ氏が話すように、偽の商品を販売しているドメインに連絡するのは「少し的外れ」だ。個々のウェブサイトを批判しても「ホストは削除しないか新しいホストに移るかのどちらか」だと、同氏はいう。結果、ブランドが知的財産を守るには、サイトのインデックス削除をGoogleに要求するのが一番だということになる。

Googleによる現在の対応



Googleは現在、この問題を米国の法的障壁に付随する問題として扱っている。たとえば、一部の著作権侵害がデジタルミレニアム著作権法で犯罪になったことで、そうした訴えについてはGoogleも対処をする。しかし、他国の法律でGoogleの検索結果の一部がインデックス化を禁じられているような場合には、Googleはまだ対応をしていない。「(この問題を)米国の法律で求められているものだけで考えるのは間違っている」と、バッグズ氏はいう。「Googleはグローバルなサービスなのだ」。

スウィーティング氏によると、Googleはいずれ同氏の問い合わせに対応するが、個別の対応が基本になる。しかし、重要な問題なのは、Googleが偽サイトをインデックスから完全に削除するのではなく、順位を下げるだけで済ませる点だ。それだけではない。「Googleはこうした問題に受け身的にしか対処しない」と、スウィーティング氏は語る。

Googleが引き続きプラットフォームのショッピング機能を強化し、より多くのブランドをプラットフォームに誘っていくのであれば、この偽ブランド品問題はもっと真剣な取り締まりが不可避だろう。スウィーティング氏によると「問題の規模が大きくなっている」し、オンラインの偽ブランド品に対抗するために用いられるテクノロジーも拡大している。

「現在進行形の問題であり、我々は適応していく必要がある」と、スウィーティング氏は最後に語った。

Cale Guthrie Weissman (原文 / 訳:ガリレオ)