各業者は強い馬づくりを目指して日夜努力を重ねている

写真拡大 (全3枚)

 秋競馬のシーズンが始まった。今年は無敗の三冠馬ディープインパクトの死、藤田菜七子騎手がJRA女性騎手として初めてG1レースに騎乗するなど、競馬ファンにとって話題が豊富である。華やかな競馬の世界の裏には、それに関わる多くの人たちがいる、競馬界の現状を見てみよう。

JRAの売得金はピーク時の7割に減少も、ここ数年は右肩上がり

 JRA(日本中央競馬会)の売得金を見ると、2018年度は約2兆7950億円と全盛期を迎えた1997年度(約4兆6億円)の約7割にとどまる。しかし、近年は2011年度(約2兆2935億円)を境に、2018年度まで7年連続の増加となるなど、復調の兆しが見え始めた。他の公営ギャンブルと比べると大健闘しており、地方競馬も再び盛り返している。決して悪い状況ではない。

競馬関連業者の特徴

 JRA等の競馬場運営団体以外にも、馬主や競走馬の生産、育成をする業者等、競馬には様々な業者が関わっている。帝国データバンクの企業概要データベースCOSMOS2(147万社収録)から競馬の生産・育成等を担う事業者80社を抽出し、分析した。

 過去10年の業績が判明している58社の収入高推移を見てみると、2017年度までほぼ横ばいが続いている。2018年度(約653億8100万円)に大きく伸びているが、業種柄、年売上高や収益が変動する業者が多いことが要因だと推測される。法人馬主等、各レースでの賞金が主な収入源である場合、所有馬の成績によって業績が左右される。また、生産・育成牧場であっても生産馬・育成馬がG1など主要なレースで勝利を収めることができれば、自社牧場産駒のセリ等における売却価格や預託頭数・預託料が上がることで業績が好転する。そのため、「強い馬」を生産・育成・所有することが業界全体として最大の目標となっており、生産牧場の各事業者は、優良種牡馬との配合による血統の改良や外国産繁殖牝馬の導入など、強い馬を生産するために努力を続けている。しかし、繁殖牝馬や、種付け料など多くの資金が必要であり、この点が活躍馬を生産することが難しい要因の一つになっていると推察される。ただし、小規模牧場であっても重賞レースで勝利するような馬を生産できれば一気に人気牧場となるため、多少苦しくても生産を継続する牧場が多いようである。

 そのようななかで、競走馬自体は固定資産とみなされ、高い減価償却費負担が発生し、営業赤字が続くこともある。所有馬の成績が芳しくなく、減価償却費以上の損失額となってしまっている業者も見受けられた。

 資金現況という面から見てみると、レースでの賞金が主体である場合、回収遅延や回収不能リスクはほぼないようだ。一方で、競走馬を販売する生産牧場の場合、販売するまでの育成期間(約2年)の費用負担があるため、運転資金需要は高くなっている。

スポーツとしての競馬

 競馬はどうしてもギャンブルとしての一面があることは否めないが、スポーツとしての一面もあり、ギャンブルとしてではなく競馬そのもののファンも多い。JRAは人気タレントの起用や、アップテンポの曲を使用したCMを流すなどして競馬のイメージアップを図り、日本の競馬はエンターテインメントとして定着している。

 今週末はクラシック三冠最後の菊花賞。再来週にはG1馬10頭の超豪華メンバーの天皇賞・秋がある。休日の過ごし方の一つに競馬観戦も加えてみてはいかがだろうか。