国産ブドウのみ使用したワインに認められる「日本ワイン」、国内外で人気が高まっている

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世界的に低い日本人のワイン消費、起爆剤としての「日本ワイン」に期待集まる

 国産ブドウのみを使用した国産ワイン「日本ワイン」のセールスが好調だ。国税庁によれば、2017年度における日本ワインの消費量は国内ワイン市場の約4%に過ぎないものの、出荷量は13年度から概ね増加傾向で推移。海外に向けた輸出も好調だ。

 国税庁は2018年10月、国産ブドウのみを使用した国内産ワインのみに限り「日本ワイン」として表示できる新ルールを適用。国内ワイナリー各社は産地や品質をアピールするなど、日本ワインとしてのブランド認知に取り組んできた。日本ワイン専用コーナーを新たに設けるスーパーや量販店もあり、「お客様に手に取っていただける機会は格段に増えた」(販売担当者)。日本人の年間ワイン消費量は750ml当たり約4本と、世界の主要消費国に比べて市場拡大の伸びしろが大きく、起爆剤として日本ワインに対する期待感は大きい。

「増収」ワイナリー4割に、日本ワインへの好感で新たな支持層獲得もプラス

 日本ワイン人気は国内ワイナリーにも追い風だ。帝国データバンクの調べでは、ワイン製造を主業とするワイナリーの2018年業績は増収企業が約4割に当たる39.2%だった。増収割合が最も高い2014年(56.7%)に比べると17.5ポイントの差があるが、2012年以降7年連続で増収ワイナリーが減収を上回り、売上高合計も10年間で約1割拡大した。

 好調の背景には、これまでのコアなワイン支持層に加え、日本ワインを中心に既存のワイン愛飲家、これまでワインを飲まなかった層など、新たな購買層の獲得に成功したことも大きいようだ。長野県産ワインを購入した50代の主婦は「昔に比べ、国産ワインは格段においしくなった」と語る。近年は国際コンクールでも数多くの賞を獲得するなど、品質が大幅に向上した日本ワインが市場活性化に寄与していることもプラス要素だ。

ワイン産業発展に思わぬ伏兵も 「ブドウ不足」解消急務、5社に1社が赤字に

 ただ、国内ワイン産業の発展には課題もある。2018年のワイナリー各社の収益状況では、増益となったワイナリーは約4割となる半面、減益も約5割に上る。また、5社に1社のワイナリーでは最終赤字となるなど、好調なセールスに反して収益力には課題が残る。

 要因の一つに挙げられるのは、良質な原料ブドウの供給が追い付かないことだ。国税庁によれば、ワイナリーが原料として受け入れるブドウの8割超を契約栽培や購入に頼っており、自営農園のブドウ使用量は1割弱に過ぎない。醸造用ブドウの苗木も、取り扱う国内農家も少なく輸入時の検閲も厳しいことから急な増産も難しい。そこにワイナリーの新規開業が相次いだことで、ワイン用ブドウの需要が近年急速に上昇。需給バランスがひっ迫し、結果的に仕入価格が上昇していると感じるワイナリーは少なくない。

 特に新興ワイナリーでは、自社でのブドウ作付けから収穫まで数年を要するケースも多く、その間を外部からのブドウ購入に頼るケースもある。そのため、他のワイナリーに比べ収益がブドウ価格に左右されやすくなるほか、設備投資が先行して赤字になりやすいという装置産業ゆえの弱点も抱えている。

 海外勢が攻勢を強める点も見逃せない。「ニューワールド(新世界)ワイン」の代表格であるチリ産ワインは、安いもので500円前後という手軽な価格と美味しさで大きな人気を集める。フランスやイタリア、スペインなどEU産ワインも、元々有していたブランド力に加え、日欧EPAの発効により関税が即時撤廃に。750ml当たり最大93円安くなるなど価格競争力を武器に、各国で日本市場への輸出増に期待感を示している。そのため、せっかく拡大の機運を見せている国内ワイン市場が、海外勢に奪われることにならないか心配する声も上がっている。

 日本酒や焼酎など伝統的な酒類のほか、「五大ウイスキー」に数えられるジャパニーズウイスキーなど、世界に認められる日本の製造技術。ワイン分野でも、日本ならではの特徴をアピールし、海外産に比肩する競争力を手に入れることができるか。日進月歩で進化する日本ワインのさらなる発展と、国内に眠るワイン潜在需要の掘り起こしに注目が集まる。