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ガイ・グレゴリー

テンペスト・オブ・イングランドからおよそ30km、まるで絵画のように美しいウスターシャーにあるバイトンの村にペンブルトン・モーターカンパニーはある。他の最高のバックヤードビルダーたちと同じく、ここも詳しい説明無しで見つけ出すことはほぼ不可能だろう。

ペンブルトン・モーターカンパニーでは、1910年代から20年代にかけて一世を風靡したサイクルカーと呼ばれる小さく安価な車両の生産を行っており、かつては英国ヒルクライムチャンピオンにも輝いたフィル・グレゴリーは、戦前のサイクルカーや古いオートバイにインスパイアされてこうしたモデルを生み出したのだ。

ガイ・グレゴリー

あまり大きな声では言えないが、素人目にはモーガンの3ホイーラーに見えるこの車両の特徴は、そのフロントに積まれたVツインのエンジンにある。

最初の車両はシトロエン2CVをベースに1999年に誕生している。ペンブルトン・スーパースポーツという名のこの車両に続いて、ブルックランズという名の4輪モデルが登場しており、フィルはキットカーとしておよそ500台を販売している。

スタッフは3人 それぞれに専門分野

4年後、当時20歳だった息子のガイがフィルのビジネスに加わると、ガイは自らの新たなビジョンのもと、18カ月後にはペンブルトンの設計見直しを明らかにするとともに、すべて完成車としての販売に切り替えており、さらにフィルはこの機に乗じて、自らは週に数日だけ働く熟練の組立職人になるべく、ガイに会社の舵取りを任せている。

ジョー・メイソンのまるでジャングルのようなガレージとは異なり、ガイのレンガ造りのワークショップはより近代的で整理されているが、決してつまらないというわけではない。非常によく整理されたふたつある車両組み立てルームには、工具棚や旋盤、作業台などが上手く配置され、組立中や完成した数台のペンブルトンが存在感を放っている。

ペンブルトン・モーターカンパニー

ガイがスタッフを紹介してくれた。ジョニーは正規のメカニカルエンジニアであり、ガイのビジョンを実現するための技術的なサポートを行っている。

サムは名の知られたサンデーレーサーであり、美しく配置されたリアのディスクブレーキや完ぺきな加工が施されたギアシフトリンケージのローズジョイント、さらにはモトグッチ製の750cc Vツインエンジンをペンブルトンに搭載するための対策など、このマシンの詳細な技術要素に対応している。さらに、ペンブルトンの美しく見事な仕上がりを見せるボディの組立も彼の担当だ。

すべてを管理 魅力的な1台

そして、最後のひとりがガイであり、マーケティングと組立スケジュールの管理、そしてなによりも重要なサプライヤーとの連絡調整を行っている。

「エンジン以外、ほぼすべてのパーツは地元サプライヤーから供給を受けており、それ以外もすべて英国製です」と、彼は言う。

ペンブルトン・3ホイーラー その1

つねに3台のペンブルトンの組立が並行して行われており、完成までにはそれぞれ6週から8週間が必要となる。パーツの管理が大変そうだが、ガイはすべてをコントロールしており、「作業がストップすることのないよう、すべてのパーツはストックされています」と、彼は話している。

いま生産が行われている3台はすべて嫁ぎ先が決まっている。乗り出し価格は2万6394ポンド(343万円)というものであり、すべての車両にはオートバイや3ホイーラー向けの英国認証、MSVA(Motorcycle Single Vehicle Approval:モーターサイクル・シングルビークル認証)を取得するためのテストが行われる。

3台のうち、ポリッシュ仕上げのアルミホイールとカッパー色をしたボディの組み合わせに、対照的な明るい赤のレザーを与えられた1台に思わず目を奪われた。

湧き上がる自信 人生の楽しみ

「スペインのマルベージャに住むオーナーのもとへと嫁ぎます」とガイは教えてくれた。このクルマが有名なコスタ・デル・ソルの海岸線へと向かう姿が目に浮かぶようだが、いまはベイトンの村へと向かわなければならない。

試乗車のサイドシルをまたいでペンブルトンへと乗り込むと、ダークレザーのベンチシートに腰を下ろす。キーを廻してスターターボタンを押し込むと、グッチのVツインが目を覚ましエグゾーストから見事な咆哮を響かせる。

ペンブルトン・3ホイーラー その7

ギアシフトはダッシュボードマウントのプッシュ・プル式であり、この慣れない操作には注意が必要だったが、エンジンの豊かなトルクがわたしの下手なシフトをサポートしてくれた。

ステアリングは軽く正確で、乗り心地も柔らかく快適だったが、もっとも驚かされたのは、1輪しかないリアタイヤにまったく違和感がなかったことであり、写真撮影のため周囲を走り回っていると、どんどん自信が湧いてくる。

こうしたクルマをドライブするために人生はあるのだ。