日沖 博道 / パスファインダーズ株式会社

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弊社が会議を仕切る場合(といっても弊社が関与する仕事の大半がそうなのだが)、会議に臨む参加者には2つのことを強くお願いしている。

1つは、期限までに「宿題」を果たすこと。「宿題」というのはプロジェクトチームまたは参画メンバーに事前に課されたタスクのことで、期限も明確に決められている。大半のプロジェクトでは、元々WBS(Work-Breakdown Structure=作業工程スケジュール表)で示されている上に、毎回のミーティング時の終盤に次のミーティングまでの「宿題」と担当が確認される。この「宿題」をきっちりと果たすことが、参画メンバーに求められる最低限の義務である。

もう一つは、その「宿題」結果を事前に弊社を含むプロジェクトメンバー間で共有すること。大抵は資料ファイルを添付したメールを参加者全員に送るだけで済む。参加者が目を通す時間を確保できるよう、会議が午後一番くらいならその前日までに、最悪でも当日の朝には送ってもらう。たまに「仕上がっていないから」と弱音を吐いて躊躇するメンバーもいるが、それでも途中状態で構わないので送ってもらう。

なぜそれほど事前の共有にこだわるのか。それは弊社コンサルタントを含む他の参加メンバーが事前に目を通すことで理解が進み、意見や質問をあらかじめ持って会議に臨むことができるからである(特に弊社のコンサルタントにはその義務が強くある)。

それだけ会議での発言のレベルが上がり、有用なフィードバックや示唆を得られる可能性が高まる。きちんと前もって送ってもらえば、参加メンバーは全部を通して事前に読んでいるので、(あとのページで説明していることを質問するなどの)余計な箇所で質問を挟む事態が大幅に減る。会議の目的である企画などは着実に前に進み、会議回数も増やさずに済む。

実は弊社クライアントの大半のプロジェクトで、この「事前共有」が最初はなかなかできない。よくて会議直前に言い訳のように送ってくるか、悪い場合は事前にはまったく会議前には音沙汰無しで、会議での発表を促して初めて説明を始める人が続出する(これが普段、社内でやっているやり方のようだ)。

この後者のやり方を小生は「開けてビックリ玉手箱」と呼んで、幣社のプロジェクトではご法度にしている。質問に答えてもらいながら説明して進めることになると、どうしても説明が中心となり、その中身の吟味や「だからどうする」という肝心な話に進むのが遅くなる。まったく生産性が悪いので、二度とそうした直前共有や「開けてビックリ玉手箱」を繰り返さないよう、参加メンバーには改めてきつくお願いすることになる。

中には「中途半端な内容のものを送ると却って皆に迷惑を掛けてしまうと思いました」と言い訳するメンバーもたまにいる。本当に「言い訳」に過ぎないし、そもそも何がより大きな迷惑なのかを勘違いしている。

たとえ完成状態でなくとも、「ここまでは判明しました」とメールで補足してあれば、その事前資料を読んだ人には十分考えるだけの材料を与えられる。もちろん、幣社のコンサルタントはそうした「生煮え」の資料でも読み解いて、適切にフィードバックするだけの力量が求められる。

なぜこうした「開けてビックリ玉手箱」方式が多くの大企業で大手を振ってまかり通っているのだろうか。どうやら上から下まで、そうしたやり方に慣らされてしまっていて、疑問を覚えないようだ。

ではそもそもなぜ、こんな非生産的なやり方をするようになってしまったのだろうか。端的に言って、発表者の自信のなさからくるようだ。それは上司・役員など偉い人に突っ込みを入れられないようにする「逃げ」の心理の現れであり、でも一方では直前まで資料のブラッシュアップを続けていましたと言いたい「アリバイ作り」の心理でもある。

どちらも自分勝手な理屈であって、会社の生産性を上げるためには決して許してはいけない慣例なのだ。


【追記】

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