ついに理論値1Gbps超え!iPhone 11/11 ProシリーズのLTE通信速度を検証してみた(石野純也)
5Gに非対応だったためか、スペシャルイベントの基調講演では、サラッと流されてしまいましたが、iPhone 11や11 Pro、11 Pro Maxは、昨年のiPhoneと比べ、通信速度も向上しています。Proの2機種は、6波の電波を束ねる「6CC CA」に対応。日本で利用する場合、ドコモ回線では下り最大約1.4Gbps、au回線では1Gbpsと、ついにギガビットを超えました。

とは言え、これはあくまで理論値。帯域幅とアンテナの数であるMIMO、変調方式を組み合わせた結果として導き出される数値に過ぎません。実際のスループットでは、どの程度の速度向上効果が出るのでしょうか。実機を使って、3キャリアぶんの通信速度を計測してみました。なお、速度の計測は、渋谷にある筆者の事務所で行っています。速度測定は3回行い、いずれもSpeedtest.netの楽天モバイルサーバーに接続しています。また、測定は旧モデル代表としてiPhone XS Maxを、新モデル代表としてiPhone 11 Pro Maxを使用しています。

▲どの程度、速度が向上しているかを3キャリアぶんチェックした

スペック向上による恩恵が如実に出たのが、ソフトバンク回線でした。旧モデルのiPhone XS Maxでは3回の平均が約28.5Mbpsだったのに対し、iPhone 11 Proでは、3回の平均が下り最大78.9Mbpsと、50Mbps近く、スループットが上がっていました。何かの間違いかもしれないため、実は平均値を出す3回以上速度をチェックしてみましたが、傾向はおおむね変わりませんでした。

残念ながら、現時点ではソフトバンクが最大速度を公開していないため、理論値同士の差がどの程度スループットに反映されているのかは不透明ですが、これだけ速度が速くなってくると、特にアプリや画像などのデータをダウンロードする際に、違いがはっきり感じられます。


▲iPhone 11 Pro Maxでは、80Mbpsを超えたソフトバンク。平均値も78.9Mbpsとかなり高速

▲iPhone XS Maxは、平均で28.5Mbps。iPhone 11 Pro Maxで、スループットが大きく上ったことが分かる

次に結果がよかったのはau。iPhone XS Maxでは下りのスループットが約21.1Mbpsだったのに対し、iPhone 11 Pro Maxでは50.7Mbpsと、速度が倍以上高くなっています。ただし、ソフトバンクよりも1回ごとの速度にバラツキがあったのは少々気になるところです。それでも、最低で30Mbps以上出ていたため、速度は安定していると言えるでしょう。

auは、iPhone 11シリーズの発表に合わせ、iPhone 11 ProやPro Maxが同社の6CC CAに対応し、下り最大1Gbpsに達したことを明かしています。iPhone XS Maxのときは、下り最大818.5Mbpsだったため、理論値でも約1.2倍程度、高速化しています。これに対し、スループットが2倍以上出ていたため、効果はしっかり出ていると言えそうです。


▲au回線のiPhone 11 Pro Maxは、平均値が50.7Mbps。30Mbps台から60Mbpsを超えたときまで、やや波があった


▲iPhone XS Maxでは、10〜20Mbps台といったところで、平均も21.1Mbps。やはりiPhone 11 Pro Maxの方がスループットが高い

はっきりと速度が向上したソフトバンクやauに対し、あまりふるわなかったのがドコモ。ドコモでも、理論値はiPhone XS Maxの下り最大844Mbpsから約1.4Gbpsにまで上がっていますが、スピードテストでの結果は、新機種のiPhone 11 Pro Maxでもほぼ同じ。細かいことを言えば、わずかではありますが、スループットは落ちてしまっています。数値は、iPhone XS Maxが67.2Mbpsだったのに対し、iPhone 11 Pro Maxが66.4Mbpsになりました。

ただし、これはあくまで3回測って求めた平均値。ドコモ回線では、1回だけですが、今回のテストでもっとも高い111MbpsというスループットをiPhone 11 Pro Maxでたたき出しています。4Gのキャリアグリゲーションや4×4 MIMOといった技術が導入されて以降、組み合わせも複雑化してきています。3回のテストで、常に同じ周波数帯をつかんでいたかどうかも分かりません。

▲唯一iPhone 11 Pro Maxで速度が落ちてしまったのがドコモ。ただし、今回の最高速度となる111Mbpsが出たこともあった

▲ドコモ回線のiPhone XS Maxは、おおむね60〜70Mbps台で安定していた

あくまで仮定の話ではありますが、111Mbpsの結果が出たときだけ、たまたま近くの空いている基地局をつかんでいた可能性もあります。筆者時の事務所付近には、比較的速度の高い3.5GHz帯の基地局が設置されていることを確認しているため、推測ではありますが、ありえる話と言えそうです。また、新旧比較では速度が低下してしまったドコモですが、絶対値ではauよりスループットは高めに出ていたことも付け加えておきたいところです。

通信面では、iPhone XS、XS Max、XRに続いて、eSIMに対応しているのもポイントと言えます。海外では、Pixel 3シリーズなどがeSIMに対応していますが、日本で購入できるスマホとしては、iPhoneがほぼ唯一の存在。海外渡航時に、ローミング専業キャリアや現地キャリアのeSIMを設定して料金を節約するといったことが可能になります。日本でも、IIJがeSIMサービスを設定しているため、2回線目に設定して、割安なデータ通信を利用することが可能になりました。


▲eSIMも搭載しており、対応するキャリアのプロファイルを書き込める

残念なのは、eSIMの場合、機種変更するとSIMの再発行が必要になってしまうところ。iPhoneと言えども、iCloud経由でeSIMの情報まで移すことはできません。そのぶん、セキュリティが高いととも言えますが、キャリアによっては、eSIMの再発行手数料がかかってしまうため、注意が必要。一般的なスマホの利用期間を考えると、昨年のiPhoneから買い替える人は少ないかもしれませんが、念頭に置いておきたいところです。ちなみに、IIJの場合、eSIMの再発行には手数料として2000円がかかります。

さて、冒頭で述べたように、iPhone 11シリーズは、5Gには非対応です。この点をどう評価するかは難しいところですが、すでに5Gが商用化している米国や韓国などでは、5Gに非対応なことがマイナスと捉えられるかもしれません。iPhoneに先立って発表されたサムスンのGalaxy Note 10+は、4G版と同じ筐体で5G版が用意されており、ハイエンドモデルでの5G対応は当たり前になりつつあります。

また、ドイツ・ベルリンで開催されたIFAでは、クアルコムの社長、クリスティアーノ・アモン氏が、5Gモデムをミドルレンジ向けのSnapdragonに拡大する方針を明かしています。こうした情勢を考えると、ハイエンドモデルのiPhoneが5Gに非対応なのは、少々残念な点と言えます。1年1回の発表ペースを崩して派生モデルを投入するなど、アグレッシブな対応が必要になりそうです。

一方で、この評価は国や地域によって大きく異なります。少なくとも、日本では、まったくネガティブな要因にはならないでしょう。上記の通り、4Gでも十分なスループットが出ていますし、何より日本では5Gの商用サービスがまだスタートしていません。当然ながら、競合の端末も5Gには非対応。2020年にスタートし、エリアが全国くまなく広がるまでの期間を考えると、来年はおろか、2年後のiPhoneで対応していれば十分という見方もできます。

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