猪口 真 / 株式会社パトス

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各地で、オリンピック関連のイベントが目白押しだ。特に8月は開催のちょうど1年前ということもあり、各地で盛況だった。

おそらく、この後も様々なイベントや告知が行われ、相当な盛り上がりを見せるには違いない。ところで、このオリンピック、大手の高額なスポンサーはたくさん拝見するが、我々中小・零細にとってはどのように関係してくるのだろう。

少し古いが、東京都はオリンピックの経済効果を32兆円とするようなド派手な予測もあったが、今のところその予兆はあまりない。第二四半期のGDPは、約0.6パーセント増と出たが、国の支出が0.9パーセント増と牽引しているのと、消費税増税前の駆け込みも多少あったのだろう。

つまり大半は税金だ。

このGDPの5パーセントにも及ぶような効果は別として、果たして我々中小・零細で働く身にはどのような影響があるのだろうか。

確かにオリンピックは、4年に1度のそれは大層なイベントであることは間違いない。数々のスポーツが改めて陽の目を浴び、注目されるのも間違いないし、「TOKYO」の名前が世界中で連呼されるのも間違いないし、多くの人が大金はたいて観戦にいくのだから、その周辺含めお金は動くのだろう。

特に大手企業によるスポンサードの契約はすごい。膨大な広告予算が投下されていると聞く。聞けば費用の大きさに驚くが、ブランディング効果は確かに高いのだろう。業界を代表するという証を表明することができるし、まさに一流の証明だといえるのかもしれない。

しかしこれらの投資がどれだけ売り上げとなって返ってくるのかはよくわからないし、こうした国内イベントへの投資がどこまで内需を喚起するのかは、予測しがたいし、むしろこの予算を使うことで、本来使うべきだったこれまでの仕事が減ったという話をよく聞く。すでに、会場の問題などで、会期が変更になったり、縮小しているイベントや展示会も多い。

国や都は、そうしたことを総合的に判断し、オリンピックを選んだのだから勝算があると信じたい。これまでにも国や都はかなりの予算をつぎこんできた。ただ、その源泉はまぎれもなく税金であり、国民の負担だ。しかし、国民が負担しているのに国民は自分のビジネスには利用できない。負担しているにもかかわらず、スポンサード契約外でのオリンピックを使っての広告やビジネスは厳しく禁じられており、多くの中小企業が手を出せる話では全くない。さらに一般人が手を出せるところでもない。

実際、今回のオリンピックでは、どんな経済効果があるのだろう?

64年の成熟前の東京とは明らかに違うし、オリンピックのためにテレビを買う人が膨大にいるとは思い難い。また、選手関係者やマスコミはともかく、観戦に訪れる一般の人たちがどれほどいるのだろうか。日本人でもチケットが取れないのに、外国人枠があるのだろうか。

むしろ私は、オリンピックによる仕事の停滞が怖い。

まず、考えられるのが、大手企業の今年度の経費予算オーバーによる、20下期、21上期の予算縮小だ。オリンピックが直接の内需喚起を起こさないとなれば、当然予算は縮小となる。すでにこうした声は聞こえる。

また、会期中は、さらに大きな不安がある。まず、都心への移動や行動が質量ともに制限されそうだ。首都高速の料金も大きく上がるらしい。つまり、会議や商談の機会、時間が大幅に減少することが予想される。

さらに、明らかにかなりの時間がオリンピックの視聴に費やされる(関心がオリンピックに集中する)ため、仕事の遅延が心配される。

要は仕事が停まり、減少し、翌年も厳しいという現実が待っているのではないかという不安だ。

ではどうするか。

できることなら、都心を回避した仕事の仕方をする。

地方や郊外で仕事できればこしたことはないが、もちろん、ものづくりの現場や顔を合わせないとできない仕事など、その場所以外ではできない仕事も山のようにあるが、オリンピック期間中の対策としては、リモートワークができるように、プロジェクトや業務フローの見直しなどの準備をしっかりと行っておくことも必要だろう。

また、通常業務は動かしにくくなるのは間違いないので、その間は長期的な研究開発や調査などこれまでやろうと思っていたができなかったことに取り組むことも異議あることだ。みんなでリゾートなどに行って、徹底的に教育の時間とするのもいいだろう。

個人的に一番やりたいのは、家族などで、長期休暇を取ることかもしれない。中小・小規模企業の経営者は本当に休みが少ない。この期に思い切って長期休暇を取るのは、最高ではないかと思う。