「コメント数は必ずしも重要ではない」:コメント欄戦略に勤しむ、パブリッシャーたちの思惑
サブスクリプションパブリッシャーは、滞留率を高め、お試しからの購入を決定づけ、読者層を多様化するために、コメント欄により多くの注目を集めている。コメント欄にコメントを書く読者は、読む記事の数もサイトの訪問数も高いことをパブリッシャーたちは理解している。そのため利用者のキープという面からもコメント欄は役にたつ機能だ。しかし、これを証明するデータを獲得することはできても、どのようにパブリッシャーが活かすかは、また別の問題である。
コメント活用法、各社の違い
コメントを記入する人々の行動を5カ月間研究した結果、ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は戦略を切り替えている。コメントを有料会員のみができるようにし、ひとり当たりコメントができる記事の数を制限するようにしたのだ。これによってユーザー間の会話の質と頻度が改善され、結果的にエディトリアルの新しいアイデアが生まれたり、若い読者の会話の参加にもつながった。
ニュースUK(News UK)が所有するタイムズ(The Times)はここ3カ月のあいだ、ページ滞在時間、シェア数、コメントといった多くのコアなメトリックスを研究した。それは、デジタル読者の興味を図るためだ。研究結果は、彼らのコミッション判断につながる。たとえば、ページ滞在時間やコメントといったメトリックスにおいて、ワールド・ニュース分野でもっともパフォーマンスの良い記事は、現地に足を向けている専門家たちによるものだということがわかった。ニュース報道というよりは、深い詳細を分析した記事となっている。その結果、ロンドンのワールド・ニュースデスクは、海外特派員がより多くの分析記事を生み出せるように時間を配分し、外国のニュース報道の記事を増やしている。
北欧のメディア会社であるシブステッド(Schibsted)は、ホームページ上でコメント数が多い記事を紹介している。記事に比べて、これらのコメント数の多い記事は平均して8%、クリック・スルー率が高くなっている。現在、シブステッドはどのトピックが議論を呼び、それに関心を持つ読者層は誰なのかをリサーチしているところだ。ほかの多くの新聞パブリッシャーと同様に、若く男女偏りのない読者を獲得することが主要な目的となっている。
「ログインしたユーザーにとっての会話への参加を限りなく容易にしたいと思っている。その一方で、コメントは、読者がそもそもアカウントを作ろうとする、ひとつの動機にもなっている。ログイン読者はコンバージョン率もはるかに高い。これはもちろん、我々にとって重要だ」と、シブステッドの地方新聞部門プロダクト責任者であるフロード・ホーグランド・ペダーセン氏は言う。ペダーセン氏のチームは10以上のサイトで使われるコメント用プラットフォームを開発した。
コメントの「中身」がより重要
読者収益戦略がますます重要性を増すなか、メディアビジネスを維持するためにコメント欄の重要度が高まってきている。オーディエンスの行動に関するデータを分析するために、パブリッシャーたちはデータ科学部門を強化している。ニュースUKはタイムズとサンデー・タイムズ(The Sunday Times)の記事から代表サンプルとなるものを12カ月の期間から1000記事ほど集めて生成し、研究した。それぞれの記事は、16の詳細なメタデータによってタグづけされた。コンテンツのトーン、記事の種類、ヘッドラインの種類といったメタデータを使って、特定のコンテンツの種類に読者がどのような行動を示すかを理解しようとしたのだ。
「(コメントの)数を増やすことが必ずしも筋ではない。顧客にとっての価値を理解する必要がある。コメントを書く人々が重要だとは限らない。重要なのはコメントを読者が読んだときに得られる価値だ」と、イフラガサート(Ifrågasätt)のファウンダーでありCEOであるグスタブ・ヒヤーン氏は言う。イフラガサートはスウェーデンとフィンランドにおける29の新聞社にコメント機能サービスを提供している。
典型例としては、少数のアカウントユーザーたちがサイト上のコメントの大多数を生み出すというのがある。そのためコメントを記入する人々にフォーカスを与えすぎることにはリスクがある。すでにロイヤルかつアクティブな、小さな読者グループに対するアクションとなってしまうからだ。ただコメントを読むだけ、という行為の重要性が見逃されてしまう。しかし、コメントを読むこと自体にも価値があると示すデータも存在していると、ヒヤーン氏は言う。
ヒヤーン氏によると、あるパブリッシャーは、もっともコメントがついた記事のうち10件を取り上げて調べたところ、記事の長さが同じ程度である他のものと比べて閲覧時間が25%長いことが分かったという。エディトリアル・コラムニストによる論説は、通常はコメントがたくさん付く。平均して、これらの記事の90%にコメントがあり、人間が興味を持つ特集記事の平均50%にコメントがあると、彼は付け加えた。
簡単な荒らし対策のひとつ
コメント欄は、誹謗中傷を大量に書き込む「荒らし」のためだけのものではないと、人々を説得するのは難しい。簡単な荒らし対策のひとつには、自分が誰であるかを特定させるという手段がある。
「5年前、人種差別や暴力的なコメントがあまりに多いために、コメント欄を閉鎖した。いまでは(そのような行為は)見られない。(コメント欄は)多くの場合、非常に建設的で読者たちは良い対話を持つ」と、スウェーデンの日刊紙ボラス・ティドニング(Borås Tidning)の編集長ステファン・エクランド氏は言う。彼はサイトでのコメント機能を1年前に再開したばかりだ。
Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)
