Hulu の急成長、その背景に「セット契約」あり:本格化するストリーミング動画戦争
Hulu(フールー)にとって8度目となる「ニューフロント(NewFronts)」でのプレゼンテーションは意思表明だった。動画ストリーミングサービスにユーザーが群がり、D2C(direct-to-consumer:直販)サービスを重視するディズニー(Disney)が新オーナーになったいま、Huluは自身の大きさを認めたうえで、さらに大きく、素早い存在になると宣言したのだ。セット契約などで急成長
ストリーミング動画が人々の日常に浸透するにつれ、Huluは会員数を増やそうと、積極的な配信、料金設定、PR戦略を実行している。たとえば、スプリント(Sprint)は無制限プラン「スプリント・アンリミテッド(Sprint Unlimited)」の利用者を対象に、月額6ドルのHulu広告付きバージョンを無償提供している。「スポティファイ・プレミアム(Spotify Premium)」の新規会員もHulu広告付きバージョンを追加料金なしで入手できる。通常、こうしたセット契約では、ディストリビューターが料金の一部を肩代わりするため、Huluはこうした事業者を通じてサインアップした利用者数に応じて、交渉によって合意した金額を受け取ることができる。ストリーミング動画の世界では、こうした契約は一般的な戦略になりつつある。米国の有料会員数を6020万人と発表しているNetflix(ネットフリックス)も、T-モバイル(T-Mobile)の無線通信顧客の一部に無償提供されている。
このようなセット契約が会員数の増加にどれくらい貢献しているかは不明だが、Huluはここ数年、急成長を遂げている。3年前の2016年5月の会員数は約1200万人だったが、それがいまでは倍以上の2800万人だ。
Huluのニューフロントのイベント後、ある広告持株会社の広告担当幹部は「私が知りたいのは、スプリント経由で獲得した会員がどの程度含まれているかだ」と語った。「AT&TがHBOを傘下に収めたため、T-モバイルはNetflixの無償提供を開始した。そして、スプリントはHuluを選んだ。これらはどのくらい効果があるのだろう?」。
(スプリントとスポティファイの契約についてHuluの担当者に問い合わせたが、原文記事の公開までに回答を得られなかった)
これらの契約の効果にかかわらず、Huluがより多くの注目と時間を獲得している証拠はいくつもある。広告販売担当シニアバイスプレジデントのピーター・ネイラー氏はコムスコア(Comscore)による追跡の結果として、2800万人の会員に加えて、5800万人が広告付きバージョンで動画を視聴していると述べた。これは前年比43%の増加にあたる。Huluによれば、2018年は総視聴時間も75%増加し、会員1人当たりの平均視聴時間も前年から20%以上伸びているという。
より華やかなプロジェクトへ
Huluは視聴者を満足させるため、オリジナル番組の強化を計画している。Disney+という家族向けサブスクリプションストリーミングサービスを持つディズニーも、Huluで大人の需要を満たしたいと考えている。ディズニーのCEOボブ・アイガー氏は2018年後半の収支報告で、「会員数の増加、相対的なブランド力、ユーザー層など、Huluのこれまでの成功を考えると、番組面でHuluへの投資を顕著に増やす可能性は十分ある」と述べていた(フォックスを買収したことで、ディズニーは現在、Huluの60%以上を所有している)。
また、オリジナル番組への投資はより大きく、より華やかなプロジェクトへと向かっている。今回のニューフロントでは、ジョージ・クルーニー主演の「キャッチ22(Catch-22)」、リース・ウィザースプーンとケリー・ワシントンが主役を演じる「リトル・ファイヤーズ・エブリウェア(Little Fires Everywhere)」、ニコール・キッドマン主演の「ナイン・パーフェクト・ストレンジャーズ(Nine Perfect Strangers)」などが発表された。失脚したセラノス(Theranos)のCEO、エリザベス・ホームズを「サタデーナイトライブ(Saturday Night Live)」のスター、ケイト・マッキノンが演じるミニシリーズも大々的に宣伝された。
さらに、Vox Mediaのエンターテインメントスタジオ部門ボックス・メディア・スタジオズ(Vox Media Studios)とオリジナル料理番組制作の複数年契約を結んだという発表も行われた。最初の2番組は、有名シェフのデイビッド・チャンと有名スターのクリッシー・テイゲンが出演する「ファミリー・スタイル(Family Style)」とドキュメンタリーシリーズ「イーターズ・ガイド・トゥー・ザ・ワールド(Eater’s Guide to the World)」。この契約はオリジナル番組とライセンス提供された番組から成る「フールー・キッチン(Hulu Kitchen)」を作る計画の一部だ。ボックス・エンターテインメント(Vox Entertainment)のバイスプレジデント、チャド・マム氏によれば、この契約にはHuluからの「非常に大きな額」の出資が含まれているという。ただし、マム氏は正確な金額を明かしていない。
「ドキュメンタリーシリーズからコンテスト、料理番組まで、あらゆるフォーマットをまたぎ、ネットワークレベルで我々が番組を制作することになる」と、マム氏は語る。「間違いなく、Huluはこの契約に肩入れしている」。
ストリーミング戦争の勝者は?
ストリーミング動画を巡る戦いは本格化しており、大衆娯楽のストリーミングサービスとして成功するには、コンテンツへの投資を強化しなければならない。その結果、会員数が増え、売り上げが伸び、さらにコンテンツへの投資を強化できるのが理想だ。Netflixはかなり積極的にこの戦略を推し進め、ストリーミング動画の会員数を1億4890万人まで押し上げることに成功している。
Huluはその歴史の長さから恩恵を受けている。会員数はすでに2800万人に達しており、猛烈な勢いで顧客を増やし続けている。株式の過半数を取得したディズニーからの支援も期待できるため、今後もストリーミング動画の巨人として優位な立場を維持することになるだろう。
「Netflixはコンテンツ戦争に巨額の軍資金を投じている」と、マム氏は話す(VoxはNetflixのオリジナル番組も制作している)。「それでも、広告面、オーディエンス面でのHuluの成長を見る限り、これからはじまるストリーミング戦争に彼らが勝たないとは考えにくい」。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)
