「ほしい物リスト」をめぐる、リテーラーと Amazon の攻防
消費者の志向変化やデジタルネイティブなスタートアップとの競合激化に対応するべく、多くのリテーラーがウェディング&ベビーレジストリ(ほしい物リスト)のデジタルアップデートに注力している。たとえば、チャットボットといった新たなデジタルツールを導入して従来のギフトに代わる品々を提供したり、実店舗での買い物にモバイルショッピングのオプションを追加したり、といった動きだ。Amazon人気の余波
「ベビーレジストリ作りといえば、スキャナー片手に店内をうろうろ、というのは遠い昔の話」と、妊娠/出産/育児情報に特化したプラットフォーム、バンプ(Bump)の副編集長アシュリー・ニューマン氏はメールインタビューで語る。いまや、レジストリが複数サイトにまたがるのが一般的であり、大規模小売店の商品棚では見つからないギフトを望む者も少なくないという。
これに追い打ちをかけるのが、Amazon人気だ。レジストリ作成にAmazonを利用する者はますます増えており、いくつかの調査結果では、Amazonをウェディングレジストリの作成またはベビー用品の購入の場として考えていると答えた人が、回答者の1/3近くに及んだ。となれば、大規模リテーラー勢としては、Amazonのエンドレスアイルとの差別化を図るしかない――複数のeコマースサイトから商品を選ばせる新興スタートアップとの差異化も然りだ。
これを受けて、リテーラー勢はレジストレーションを可能な限り簡便にする、デジタルショッピングケイパビリティに投資しており、なかには彼らの市場シェアを奪う勢いで台頭するスタートアップとの提携の道を選ぶところもある。
結婚/出産のトレンド
結婚と出産は[米国では]昔から、レジストリ作りの二大機会として一般に浸透している。ベビーレジストリに特化したスタートアップ、Babylist(ベビーリスト)の分析によると、2018年に同社サイトで作成されたベビーレジストリの平均注文価格は2100ドル(約23万円)、品数は121。ウェディングに特化したウェブサイト、Knot(ノット)が公表した調査結果によると、回答者のウェディングレジストリの平均注文価格は4853ドル(約54万円)、品数は125だった。
ターゲット(Target)やウォルマート、ベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)といった大手リテーラーは古くから、ウェディングとベビー、いずれのレジストリ作りの場としても広く利用されてきた。それゆえ、レジストリ作成手段のアップデートには、どちらか一方ではなく、両需要を併せた考慮が不可欠となる。結婚と出産のどちらのレジストリについても、最近では現金、慈善寄付、ギフト券、贈り物に代わる種々のサービスに対する需要が高まっているが、前者のほうがその傾向がより強いと、ノイマン氏は語る。
「近年、結婚に際して、食器や高級キッチン用品を新たに一式揃えないと、と思うカップルはあまりいない。それよりも、多くは共有体験にお金を使いたいと考えている。一方、出産となると話は別で、さまざまな物が必要になる、という事実は避けようがない」。
NFCを利用したサービスも
ターゲットは2017年、レジストリの作成過程を刷新するべく、Pinterestレンズ(lens)を導入、欲しいアイテムを同アプリで撮影するだけでレジストリに自動追加できるようにした。2018年には、Honeyfund(ハニーファンド)――カップルが新婚旅行といった体験に必要な資金援助をギフトの代わりに求められるようにするスタートアップ――と提携し、自社のレジストリ内に新婚旅行用ファンドも立ち上げた。日用品/家具の米小売チェーン、クレイト&バレル(Crate and Barrel)も2018年、ウェディングレジストリに特化したスタートアップのゾラ(Zola)と提携し、自社商品をゾラのサイトで直接販売させると発表した。
ゾラは今年、ニューヨーク市に初の実店舗を構えた。CEOで創設者のシャン・リン・マ氏によれば、4月末まで営業するこのポップアップストアにおいて、顧客が実店舗内でアイテムを容易にオンラインレジストリに加えられるアプリの実用化にフォーカスしているという。これはニアフィールドコミュニケーション(NFC)を活用したもので、バーコードをスキャンせずとも、スマホをかざすだけでアイテムをレジストリに加えられる。
ゾラは2013年にウェディングレジストリ専門サイトとしてスタートしたが、現在では、ベンダーのオンラインディレクトリーや招待状デザインのテンプレートなど、さまざまなウェディングプラン関連サービスも提供している。そこにこそ大手の先に行くための勝機があると、マ氏は確信している。
「大手百貨店の多くがゾラの手法をまねているのは知っている」と、マ氏。「けれど、どこも苦戦しているし、我々がしているようなE2E(エンドツーエンド)の顧客体験を提供しているところは見たことがない」。
Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)
