北海道発「光技術専門大学」が示す理想的な“共創”の形
北海道千歳市と聞いて、たいがいの人が真っ先に思い浮かべるのは「新千歳空港」だろう。札幌の中心部まで電車で最短でも40分ほどかかるが、国際的な「北の玄関口」として多数の旅行者や出張者が利用している。
だが、もちろん「千歳=空港」ではない。注目したいのは、空港のほど近くに立地する公立大学法人「公立千歳科学技術大学」だ。1998年に「光科学部」を擁する公設民営方式の私立大学「千歳科学技術大学」として開学、2019年4月に公立大学に移行した。
『光プロジェクトの夢 スペシャリストたちの挑戦』(三冬社)は、その千歳科学技術大学開設とホトニクスバレー構想の実現に尽力した者たちのチャレンジと、開学後の同大学と大学発ベンチャーの軌跡を描くノンフィクション。北海道生まれで札幌在住のノンフィクション作家が、関係者への綿密な取材等をもとに紆余曲折のストーリーを綴っている。
大学開設と構想実現に並ならぬ努力を重ねた、この本の主要登場人物といえるのは3人。当時の肩書きで紹介すると、日立製作所 施設営業本部施設第二部の今村陽一・部長代理、千歳市役所の坂本捷男・地域政策課長、そして慶應義塾大学理工学部の佐々木敬介教授だ。この産(日立)・官(千歳市)・学(慶應義塾)それぞれが出自の3人が出会うことで、構想は具現化に向けて動き出した。
そもそもの始まりは、坂本さんによる千歳市の土地利用計画と、テクノポリス構想に伴う大学誘致の活動だ。後者については、いくつかの大学にアプローチしたものの成立せず、最終的に武蔵工業大学(現・東京都市大学)の誘致でまとまりかけた。しかし、バブル崩壊により大学側の資金の目処が立たなくなり、白紙に戻る。
そこで「せっかくここまで準備したのだから」と、誘致から自力の「新設」への転換が、当時の千歳市長から提案される。その後、議会などからも認められ、新大学設置の構想を固めていくことに。当初は「光科学」はまったく念頭になく、新千歳空港があることから「航空工学」を軸に検討されていた。
ところが文部省(現・文部科学省)に相談したところ、構想した学部学科では設置認可の見込みがない、と言われる。認可されるには、新規性の高い先端科学技術の分野でなければならなかった。残念ながら航空工学はそれに該当しない。
