野町 直弘 / 株式会社クニエ

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私はお昼ご飯を一人で食べることが多いです。いわゆる「おひとり様」ランチです。

「おひとり様」ランチをしていると不公平感を感じることが多いです。多くの店ではカウンター席に座らされます。また2人席で相席になることもあるでしょう。また「おひとり様」は食事が終わるとすぐに店を出ます。(私の場合は特に)

つまり、滞留時間とスペースの占有率はとても小さい。

例えば女性の2人連れの場合(あくまでも一般的な話ですけど)食事自体に時間がかかるし、終わっても話をしてなかなか席を立たない人達も少なくありません。もちろんお金を払って食事
をしているのですから当然の権利と言えますが、人気のお店で大勢が行列を作っているのにゆっくりしている人達を見ると「ちょっとは気を遣えば良いのに」と感じたりします。

お店にとって昼食時は時間との勝負ですから、限られた時間で何回転させることができるか、が売上向上のポイントになります。つまり滞留時間とスペースの有効活用ができるかどうかです。そう考えると「値段に差をつける」ことは至極当たり前の考え方でしょう。

例えば滞留時間が20分以内であれば100円割引、カウンター席の場合にも割引する、とか、長時間話したいお客さんには+500円でコーヒーをつけることを条件にする、とか。このように時間や日時、スペースの占有に応じて料金格差をつけてはどうか、ということです。

実際に旅行やイベント、様々なレジャーなどでは既に時間や曜日、日時に応じて値段の差が既につけられています。またそれが不公平だという声も出てきません。ごく当り前に時間の概念を購買条件として受け入れています。

B2Cマーケットでは時間などの要素を購買条件の一つとしているサービスも既にあるのですから、近い将来、昼食の値段も時間やスペースで格差をつけるのが当たり前になってくるかも知れません。

一方でB2Bマーケットはどうでしょうか。B2Bの世界では「一物一価」という言葉がよく使われます。企業によってその概念は異なりますが「一物一価」の法則は元々経済原則です。Webで検索しますと『一物一価の法則、英:law of one price)とは、経済学における概念で、「自由な市場経済において同一の市場の同一時点における同一の商品は同一の価格である」が成り立つという経験則。』とのことです。
しかし完全な自由市場などはそもそも存在しませんし、完全な同一市場(条件)などもあり得ません。

多くの企業では「一物一価」という言葉を同じサプライヤから購入する同一の商品は同一の価格である(べき)」という意味で使っているのが一般的ではないでしょうか。

「一物一価」の概念からもわかるのはB2Bマーケットでは購買条件はあまり多様化していない、ということです。
主要な購買条件はQCDの3つになりますが、B2BマーケットでQ(品質)はコントロール可能であれば、ある程度価格差につながる購買条件になっています。

しかしDの条件によって価格が異なるケースはあまり多くありません。B2Cではアマゾンを始め多くのECで翌日配送で価格差をつけているのが一般的です。しかしB2Bではロット条件(引き取り条件)によって同一商品で価格差をつけているケース位しか聞いたことがありません。時間という概念を購買条件として設定しているケースはあまり多くなく、リードタイムを予め設定した上で一物一価を決めているのが一般的です。

しかし本来はDの条件(特に時間)はコストに大きな影響があります。例えば今は忙しいけど1か月後の納品でよければ生産が平準化できてコストが安く抑えられる、とか、場合によっては今は忙しくないから安く買うことができる、とかです。

また、リードタイムの長さによって同じ商品でも生産効率がよくなるとか、在庫を持たなくてすむ、とかいうケースは必ずある筈です。この場合は、リードタイムが長いとサプライヤのコストが下がります。これはサプライヤのコストを下げることにつながるので売る側にもう買う側にもウインになるのです。

明日の納期だと120円だが一週間先だと100円になるとか、今日納品の方が一週間先よりも安くなるケースも出てくるでしょう。このように購買条件を多様化して捉えることが今後注目されます。

購買条件を多様化して捉えて最適化を図ることはサプライチェーンのサステナビリティ(持続可能性)にもつながるでしょう。またサプライチェーン全体でのローコスト化にもつながります。「いつ買うか」という時間という購買条件だけでなく、もっと様々な購買条件も考えられるでしょう。将来的にはAIを活用した最適購買条件シミュレーションなども実現できる世の中になるかも知れません。

このようにバイヤーはもっと購買条件を柔軟に捉えることで最適化を検討する必要があるのではないでしょうか。