“土下座スケーター”の汚名返上、韓国キム・ボルムの実力は変わらなかった【インタビュー】

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「今の喜びを味わう時間は、それほど長くはないようだ」

去る2月、韓国国民から後ろ指を指された小さな女性アスリートが、その9カ月後に金メダルを手に帰国した。2018-19国際氷上競技連盟(ISU)スピードスケートワールドカップ第2戦の女子マススタートで、金メダルを獲得したキム・ボルム(25)だ。

11月17日に日本で行われた第1戦の帯広大会で銅メダルを獲得した彼女は、去る11月24日の第2戦・苫小牧大会で表彰台の最も高いところに立った。ワールドカップは世界的な選手たちが毎シーズン6回(1〜5回+ファイナル)集まって技量を競う大会だ。キム・ボルムは、今回の第1戦、第2戦の連続入賞で、平昌五輪の痛みを少なからず癒やした。そのときの涙を拭くことができた。

キム・ボルムは2月の平昌五輪マススタートで、日本の高木菜那に続き銀メダルを獲得した。しかし、その数日前に行われた団体パシュートの準々決勝での“ノ・ソンヨンいじめレース”によって世論の非難を受けた。彼女を韓国代表から除名するよう求めた国民請願が、あっという間に署名60万人を突破するほどだった。

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その数日後に食事もとれない最悪のコンディションでマススタートに出場し、銀メダルを獲得したが、オリンピック後は精神科の治療まで受けながら困難な日々を送った。去る5月、文化体育観光部が「女性マススタート予選で特定の選手を故意に締め出す動きはなかった」という結果を発表し、事態は収拾に向かった。

平昌五輪・女子マススタートで銀メダルを獲得したものの謝罪するキム・ボルム

困難はあったが、キム・ボルムの実力は変わらなかった。彼女は心を入れ替えて、再びリンクに戻ってきた。実力で自分自身の存在感を知らしめた。

苫小牧大会を終えてキム・ボルムが韓国に帰国した11月26日、『スポーツソウル』は仁川国際空港で彼女とのインタビューに成功。キム・ボルムは「スケートから逃げるのではなく、ぶつかりながら打ち勝ちたかった」という言葉で、逆境に屈しないことを約束した。

以下、キム・ボルムとの一問一答。

――ワールドカップ第1戦、第2戦と結果を出した。

今シーズンはしっかりとした準備をできなかった。だから期待せずにいた。与えられた環境で最善を尽くそう決心していたが、思ったよりも良い結果が出て良かった。

――コンディションは良くないのか。

コンディションや体力面を最高の状態と比較すると、今は大きな差があると思う。シーズン序盤の1〜2試合は、経験とノウハウである程度、こなすことができるだろう。しかしシーズン後半に行くほど体力が落ちる。そんな準備不足が今後は出てしまうかもしれないと考えている。なるべくしっかりと準備をしていきたい。

――トレーニングの始動がかなり遅かったと聞いている。

9月の後半からだった。例年であれば5月から始める。4〜5カ月遅れてトレーニングを始めたことになる。ただもう始まったのだから、一生懸命やるだけだ。

――マススタートは、他国の選手たちのレベルも上がっている。

数年前と比較した場合、マススタートを理解して試合に勝つことを知っている選手が増えたようだ。以前は最後のスパート時、先頭圏に選手3〜4人がいたが、今は7〜8人が同じように走る。時間の経過とともに、レースが難しくなるようだ。研究して努力しなければならない。新しい試みが必要だろう。

仁川国際空港でインタビューに応じるキム・ボルム

――今シーズンの目標は?

ワールドカップの成績が良いと、その分、多くの牽制も受ける。でもあまりさまざまな状況も考えず、試合一つひとつを大切にしたい。目標は、残りのワールドカップ(3試合)で良い結果を出して、ランキングを維持すること。最終的な目標は、2019世界距離別スピードスケート選手権大会(2019年2月7〜10日、ドイツ・インツェル)で結果を出すことだ。

――女子マススタートは日本の選手が強い。

そもそも日本の選手は1500mや3000mなど、他の種目でも強い。マススタートだけを見ると、強い選手2人がいるので、さらに強そうだ。高木菜那(平昌五輪金メダリスト)もそうだが、佐藤綾乃もワールドカップ1位などがある。

――今年の夏をどう記憶しているか。

またスケートを始めるまで、いや、そう決心するまでがとても大変だった。スケートを1日、2日としながら少しずつ回復したようだ。時間が経つにつれて、厳しい状況から逃げるのではなく、ぶつかって打ち勝とうと思うようになった。私はスケート選手だ。スケートから逃げれば、私の価値が消えるだろう。幸いなことに、周りからも多くの励ましをもらった。だから再び韓国代表になることができた。ワールドカップでも良い結果を出せた。

――今回の2大会連続のメダルは、自分に打ち勝った結果だと思うか。

銅メダルを取ってから、すぐに第2戦があった。1週間後には、ワールドカップ第3戦と第4戦(ポーランド、オランダ)がある。今の喜びを味わう時間は、それほど長くはないようだ。