業績改善で汚名を返上した

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丸紅の株価が上昇気流に乗っている。2018年8月28日には08年6月以来、約10年2か月ぶりとなる高値をつけ、その後も大きく崩れず勢いを保っている。

18年4〜6月期連結決算の内容が良かったことに加え、相次いで証券各社が目標株価を切り上げたことも投資家の買いを促しているようだ。商社だけに米中貿易戦争のリスクは残るものの、今のところ投資家心理を冷やすにはいたっていないようだ。

純利益が過去最高を更新

8月2日には決算が発表された。商社の決算では「売上高」などの動向が取り上げられることはあまりなく、もっぱら純利益がさまざまなものさしとなる。「伊藤忠商事が三井物産を抜いた」と言う時、それは純利益のことだ。丸紅の18年4〜6月期の純利益は前年同期比61.5%増の868億円と大きな伸びを見せ、過去最高を更新した。これは市場予想平均638億円を230億円も上回るもので「ポジティブサプライズ」だった。国内発電資産の売却益(110億円)という一過性の利益が押し上げた面もあるが、それを差し引いても十分な業績改善と言える。

株式市場が注目する「通期の純利益予想に対する進捗率」は38%に達し、大手商社5社の中でも最も高いことも投資家たちの評価を高めた。近年、純利益の大きさで伊藤忠が注目される一方、他の大手4社に純利益額で遅れをとった丸紅は「総合商社脱落の危機」などと報道されることもあったが、汚名を返上した格好だ。

もう少し詳しくみてみると、特に好調だったのは「エネルギー・金属」分野で、四半期利益は前年同期比95億円(132%)増の167億円だった。価格上昇の恩恵を得たオーストラリアの石炭事業や採算が改善した石油トレーディング事業が利益を拡大させた。穀物などの「食料」分野は苦戦も目立ち、19億円(32%)の減益だったが、化学品のトレードが復調した「素材」は110億円(81%)増益の247億円だった。「輸送機」「生活産業」も3〜5割程度の増益を記録し、「ほぼすべてのセグメントで万遍なく上振れ、市場期待値を大幅超過」(SMBC日興証券)と評価された。

米中貿易戦争リスク

この第1四半期決算は8月2日の取引時間中に発表され、丸紅の株価は一時、前日終値比2.5%高の902.4円まで上昇した。3日以降も一進一退を繰り返しながらも上昇基調だった。決算発表以降、野村証券やUBS証券、JPモルガン証券が五月雨式に目標株価を引き上げ、外資系2社は1000円を超えた。これが投資家の「買い安心感」を呼び、8月28日には一時、前日終値比1.7%高の932.0円に達し、29日にはさらに934.5円の直近高値をつけた。出遅れていた丸紅の復活が、投資対象を物色していた投資家の目を引きつけたと言える。

ただ、米中貿易戦争という商社にとって避けられないリスクがある。今のところはっきりした影響が出ていないため商社株を大きく下げる材料にはなっていない。だが、貿易戦争のあおりで、例えばエネルギーや穀物などの価格が大きく変動するようなことになれば業績に大きく響きかねず、注意が必要だ。