世界一空調メーカーが欲しい人いらない人
■空調事業世界一ダイキン工業の外国人社員率は82%
2017年末時点で、売上高に占める海外比率は77%、従業員数に占める外国人比率は82%。連結子会社の90%は海外子会社で、事業展開国数は150カ国。空調事業で世界No.1企業のダイキン工業は、いまや多国籍企業といえるほどに世界中で地域に密着し、事業成長を続けている。真のグローバル企業が求める人材とは?
──急激なグローバル化とともに、求める人材も変わってきましたか?
グローバル化だからといって、私たちの求める人材が大きく変わってきているというわけではありません。私たちが昔から変わらずに求めてきたのは、次のような人材です。未知の世界や仕事に好奇心やバイタリティが刺激される人、過去の事例にとらわれず豊かな感性で発想できる人、失敗を恐れず挑戦し、失敗から学んで前進するチャレンジ精神を持つ人、強力なコンペティターに打ち勝つ強さ、逞しさを持つ人。そういった資質は、グローバル化によってこれまで以上に能力が発揮できるのではないかと考えています。
これらに加えて、ここ数年重視してきているのは、変化に柔軟に対応できる人やイノベーションを起こせる人ですね。情報革命というパラダイムシフトの時代には欠かせない資質になってきています。
それから、すぐに身につくものではありませんが、将来的には全体最適を考えられる人に成長してほしいと思っています。
――全体最適とは、広い視野でものごとを捉えるということですか?
任された仕事、部門、事業に一生懸命になればなるほど、どうしても視野が狭くなり、部分最適を考えるようになります。部分最適だけでなく、全体最適から見た部分最適を考える。たとえば、自部門の技術や設備への投資を考えるときには、意識して会社全体を見渡して、本当に最適な投資であるかを見極めることが重要です。
――ここまでグローバル化が進むと、必然的に活躍の場は海外ということになるのでしょうか?
海外も含めたグループ内での人材交流は活発に行われています。現在、日本から約500人が出向や研修で、海外に赴任しています。当社の場合、海外勤務は当たり前。
日本だけでなく、ヨーロッパ、アメリカ、中国などの現場を知ることは、現地の実情を肌で感じたり、消費者のニーズに直接触れたりすることで視野が広がり、全体最適を意識することに繋がると考えています。
■出る杭がないなら、出る杭にする
――AI、IoT時代に対応する人材をどうお考えですか?
今期はAI、IoTの技術者の育成を目的に、通常の新卒採用数に加えて理系学生を100人多く採用しました。大阪大学との提携によって当社のテクノロジー・イノベーションセンター内に開講した『ダイキン情報技術大学』で2年かけて育てていく予定です。
現在、ダイキン本社にAI、IoTの技術を有する人は1%しかいません。人数にして100人程度。これを20年までに1000人体制に持っていきたいと考えています。
空調業界におけるAI、IoT技術の活用は、これから。どういったところに生かせるのか、どんなゲームチェンジャーが現れるのか、異業種への参入はありうるのか。世界の空調メーカーのどこも、まだ手探りの状況です。だからこそ、私たちにとっては絶好のチャンスなのです。
ここで育った技術者が、ダイキン独自の技術や、膨大なデータを使って、新たな事業を提案する強力なスタッフになりうると考えています。
――AI、IoTの導入に積極的になると、仕事を奪われる人たちが出てくることも考えられますが?
単純作業は無人化されていくことになるでしょう。しかし、人間だからこそ付加価値を生み出せることもあります。私たちの場合なら、営業や開発などの分野に活躍の場がシフトしていくことになるでしょうね。
実際、グローバル化を進める現場では経験のある人たちが求められています。空調未開の地に市場をつくり、工場をつくり、その地域のお客様が求める商品やサービスを開発していくのは、まだまだ人間にしかできないことですから。
――約8割が外国人という組織の中だと、個性がなくなったといわれる今の日本の若者が活躍する場がなくなるような気もしますが……。
たしかに、今の若い人たちは体制順応型の人が多いと思います。しかし、それは迎合しているとか、個性がないとかではなく、恵まれて育ってきているからでしょう。
彼らも、必ず自分の意見を持っています。自分を認めてほしい、人の意見を聞いてみたいという思いがあるのです。それを引き出すのは、リーダーの役割です。出る杭がないなら、出る杭にしてあげる。引っ張り上げることです。あえて反対意見を言ってみたり、誘導してみたり、部下との対話の中から、その人の持つ意見を見つけてあげるということです。そのためにリーダーに必要な資質は、人を好きだと思えること。部下を好きになり、一人ひとりを見ることを意識すると、それぞれに個性があることがわかります。そして、その個性を認め、出てきた杭は打たない。この考え方は、生活環境も宗教も異なる環境の中で成果を上げるために必要な、ダイバーシティマネジメントに通じるところがあります。
1 生年月日、出生地
1935年3月17日、京都府京都市
2 出身高校、出身大学学部
同志社高校、同志社大学経済学部
3 好きな言葉
恕(じょ)
4 座右の書
『人を動かす』デール・カーネギー
5 尊敬する人
徳川家康
6 私の健康法
妻の手作り野菜ジュースを飲むこと
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ダイキン工業取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員
同志社大学経済学部卒業後、1957年大阪金属工業(現・ダイキン工業)入社。人事部長などを経て94年、代表取締役社長に就任。2002年、代表取締役会長兼CEOに就任。14年より現職。ダイキン工業を空調でグローバルトップ企業に育てた。
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(ダイキン工業会長 井上 礼之 聞き手・文=洗川俊一 撮影=澁谷高晴)
