いわゆる「クソリプ」から心を守る方法とは?

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 インターネット上で不特定多数の人とコミュニケーションを取っていると、時に自分の期待と異なる返答にイラっとしたり、罵詈雑言や誹謗中傷に触れて落ち込んだりすることがあります。

 こうした、いわゆる「クソリプ(クソなリプライ)」に対する向き合い方について先日、SNS上などで話題になりました。自分にとって見るに堪えない投稿に触れて怒りのまま返信したり、相手をあおるような反論をしたりすることで、炎上などのトラブルを招いてしまうケースがありますが、相手の投稿の最後に「〜とあなたは思うのですね」「〜ということにしたいのですね」と“心の中”で付け加えることでいら立ちが抑えられ、スルーできるようになるといいます。

 この方法について「プロの心理カウンセリングの理論にも共通する」「仕事や日常生活にも役立ちそう」「スルースキル大事」などさまざまな意見が寄せられていますが、実際はどうなのでしょうか。心理カウンセラーの小松原幸恵さんに聞きました。

リアルに受け止めすぎるから、傷つく

Q.語尾に「〜とあなたは思うのですね」などを付け加えることで、「気にならなくなる」「腹が立たなくなる」といった効果が報告されているようです。

小松原さん「今回のケースはNLP(神経言語プログラミング)の『アソシエイトとディソシエイト』の切り替えを行っているという説明がわかりやすいと思います。アソシエイトは自分自身の視点から、ディソシエイトは相手の視点から物事を捉えることを指します。罵詈雑言や誹謗中傷に触れて落ち込みやすい人は、自分自身の視点から物事を見て『自分が言われているように感じる』『自分が傷つけられているように感じる』のです。

しかし『〜とあなたは思うのですね』などを付け加える行為によって、いったん自分の視点から脱却し、第三者の視点から物事を見つめることができます。そうすると、いわゆるクソリプと自分との間に距離を置くことができ、結果的にいら立ちが抑えられたり、上手にスルーできたりする効果があります」

Q.同様の使い方ができるワードはありますか。

小松原さん「罵詈雑言や誹謗中傷で傷つきやすい人は、よくも悪くも共感力が高く何でも『自分のこと』としてリアルに受け止めてしまう特徴があります。そのため『自分とその物事の間に距離を置くことができる』ワードであれば、どのような言葉でもショックを受けにくくなる効果が期待できるでしょう。例としては、以下の3種類があります」

(1)距離を置く

「〜という人がいるのですね」「〜と言っている人がいたそうだよ」

(2)意味のない文字列のように捉える

「(携帯やパソコンの)画面の中で○○○という文字が見える」「〜という鳴き声の犬がいる」

(3)第三の視点から捉える(視覚的なイメージ力の高い人に効果的) 

「文字と自分の間には頑丈な壁があり、私は文字で傷つけられることはない」「自分という視点から脱却し『パソコンの画面』と『自分』を天井から眺めている」

心を守るセルフカウンセリングの方法

Q.日常生活などで不快な言葉や不本意な相手の反応に触れた時、上手にスルーして自分の心を守るためには、どのような方法がありますか。

小松原さん「まず、前提として理解する必要があるのは『誰でも同じような反応をするわけではない』ということです。つまり、罵詈雑言を見てショックを受ける人もいれば、受けない人もいるということ。

自分自身が『ある発言』を罵詈雑言と感じ『ショックを受ける』『傷つく』という反応が起きた背景には、何らかの原因が潜在意識下に眠っている可能性があります。そのため、まずは自分がどんな発言に何を感じたかを確認していくことによって、自分の潜在意識に潜む原因に気づくことができます。

セルフカウンセリングの技法として行いやすいのは『どのような発言について』『どのような反応を自分がしたか(傷ついた、ショックを受けたなど)』をノートに書き出す方法です。ノートに書くことによって自分の気持ちを再認識できますし『他の人にこんなことを話すのはちょっと…』とためらってしまうような内容でも『自分しか見ない』と決めているノートには安心して書くことができます。

紙に書き出すことよって『意識の方向性の決定(混乱状態からの脱却)』『心理の吐露』『感情の発散』といった心理的メカニズムが働きます。また、書いたものを見直すことによって『アソシエイト(自分自身の視点)からディソシエイト(相手の視点)への切り替え』『第三者視点の取得(俯瞰的に問題を見つめる)』などの効果も期待できます」

Q.ノートに書く際のポイントを教えてください。

小松原さん「自由に書いてよいのですが、慣れないうちは以下の点に答える形で書いてみるとよいでしょう」

・状況を書き出す(いつ、どこで、誰と、どんな出来事や発言があったか)
・その状況に対し、自分の中でどのような反応が起きたか
(感情:怒り、悲しみ、恐れなど)
(身体反応:胃が痛い、胸が苦しい、足が冷たいなど)
(行動:言い返した、何もできなかった、体が震えたなど)
・どのようなことを考えたか
・自分が○○と考えることにどのようなメリット/デメリットがあるか
・○○と考える理由は何か

小松原さん「書き出したものを踏まえ、さらに第三者の視点に立って状況を見ていくと、より効果的です。自分でも相手でもない第三者という立場で、以下の点を考えましょう。第三者視点からの見直しには『意識の書き換え』『気づき』などの効果があります」

・もしも、友人が自分にアドバイスするとしたら何と言うか
・もしも、自分の尊敬する人物が自分にアドバイスするとしたら何と言うか
・もしも、10年後の自分が今の自分にアドバイスするとしたら何と言うか

※参考:今泉智樹著「カウンセリングの技術 クライアントの信頼を深め心を開かせる」(同文館出版、2017年)