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フジテレビのドキュメンタリー枠『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00〜 ※関東ローカル)。あす4日は、まるで映画のように数奇な運命に翻ろうされた女性にスポットを当てる『私の姪はアラブの王女』が放送される。歴史に埋もれた衝撃的な事実の数々を次々にひも解いていく構成で、目が離せなくなる内容だ。

その女性とは、日本から8,000kmも離れた中東の国・オマーンのブサイナ王女(80歳)。実は彼女、日本に生まれ、日本人の母を持つのだが、われわれ日本人はもちろん、オマーンの人々も、多くがその事実を認識していない。現国王の叔母にあたる最も位の高い女性の1人だが、国民の前に姿を見せることなく沈黙を守り続けているため、現地ではその存在すらほとんど知られていないのだという。

ブサイナ王女の父は、オマーンのタイムール元国王。昭和10年、神戸で日本人女性・大山清子さんと出会い、なんと恋に落ちて結婚した。その2人の間に生まれたのがブサイナだが、清子さんは23歳の若さで病死してしまい、その翌年の昭和15年、元国王が当時3歳の王女を連れて、オマーンに帰国。元国王は、現地でブサイナに財産をつけて帰ってくると言い残していたものの、翌年、日本は太平洋戦争に突入することになる…。

今回の主人公は、清子さんの妹・大山昌子さん(88歳)。つまり、ブサイナ王女の叔母だ。昌子さんは8歳違いの姪・ブサイナと姉妹のように仲が良かったといい、幼少期に一緒に遊んだ日々を鮮明に記憶しているが、戦前に離れ離れになって以降、長年にわたり、消息が途絶えてしまった。

異国の王族が、遠く離れた国で恋愛結婚に――まるで、エディ・マーフィが主演した米映画『星の王子 ニューヨークへ行く』(88年)のようなロマンスが、同映画が公開される半世紀以上前の戦前の日本で実際に起こっていたことに、まずは最初の衝撃。さらに今回の番組は、その後のストーリーがメインで描かれるのだから、息をつく暇もない。

戦後、昌子さんは、日本語を覚えていないブサイナ王女とわずかな時間で再会を果たしたものの、その後は手紙を送っても返事なし。「元気にしているのなら、もう一度、会いたい」――そんな昌子さんの思いを王女に伝えようと、番組は、神戸、東京、オマーンを奔走。外務省の元オマーン大使、さらにはオマーンの大臣など有力者を巻き込んで、何とかコンタクトを取ろうと取材を重ねていく。

その様子は、さながら『ファミリーヒストリー』(NHK)のよう。戦前からの家族の歴史を解き明かしていく構成に加え、王女と接触するために、昌子さんとの血縁関係の証拠が必要ということで、区役所に戸籍謄本を取りに行くのだが、そこで昌子さん自身に関する家系の意外な事実まで判明することになるのだ。

オマーン北東部に広がるワヒバ砂漠

生涯独身で過ごしてきた昌子さん。それだけに、肉親には人一倍の思いを抱いているのではないかと想像するが、今回の密着の中では「私らがなにがしのお金目当てにそうしてると思われたらけったくそ悪い。別に私は向こうの財産目当てにしてるわけでもない。細々と自分で食べていけるんやから、もういらん波風は立ててほしくないから」と、諦めにも近い心境を吐露する場面も。果たして、ブサイナと再び心を通い合わせる奇跡は起こるのか…。

『星の王子 ニューヨークへ行く』のロマンスに、『ファミリーヒストリー』の探究心をくすぐる要素を贅沢に併せ持った『ザ・ノンフィクション 私の姪はアラブの王女』。日曜の昼下がりに、手に汗握ること間違いなしだ。