日本の医療ベンチャービジネス(VB)の育成にあたっては、安全性や有効性を確保しつつ、製品化に向けたスピーディーな支援も不可欠だ。医薬品・医療機器などの承認審査機関である医薬品医療機器総合機構(PMDA)の近藤達也理事長に見解を聞いた。

 ―日本の医療系産業について、どのように感じますか。
 「医療機器の場合、これまでは、リスクを恐れ、部品供給に及び腰になるメーカーがあったり、医師側にとっても、欧米メーカー製の機器をそろえることをステータスとして感じる部分があったりした。そうした考えを払拭(ふっしょく)していくことが大事になる」

 ―自身でも定位的放射線治療装置の開発に取り組みました。日本のモノづくりで重要なことは。
 「日本からモノを積極的に作っていくべきだと考えていた。開発している技術に将来性があるかを判断する目利きの能力が大切だと感じた」

 ―PMDAでは、最新の科学の知見を踏まえて規制をするレギュラトリーサイエンスを重視しています。
 「日本は発明や発見が多いが、人々や社会に、どれほどの影響をもたらすかを考察する『評価科学』はまだまだ。これをもっと強化していく必要がある。可能性があると判断されたものに対しては、いかに社会に出していくかを意識しつつ、適正な規制を考えていくことが重要になる」

 ―海外展開については。
 「国内の医療機器メーカーは中小企業が多くを占める。ただ、国内市場だけではマーケットとして見ても台数は限られてしまう。各社がそれぞれ海外へ販売しても、限界がある。欧米では中小企業が開発した医療機器であっても、大手メーカーのブランドとして販売しているケースが多い。日本の製品はモノが良いだけに、販売方法をどうするかも今後の課題だろう」

【記者の目】
 PMDAで医薬品・医療機器の承認審査の高度化・早期化に取り組んできたのが近藤理事長だ。薬事のノウハウに乏しい大学・研究機関やベンチャー企業を対象に、必要な試験や治験計画を指導する「薬事戦略相談」にも力を入れている。審査機関という立場から医療の革新をけん引してほしい。
(文=村上毅)