ベンチャーキャピタリストとして1,000以上のビジネスモデルを見てきた三戸政和さんの記事「飲 食店経営の素人が「地獄」に落ちないためのこんな方法、教えます」をテリヤキコラムで抜粋して掲載させていただきます。飲食ビジネスに携わる全ての方に必見の記事になっています。 現代ビジネスより転載2017年10月18日公開の記事

大手に出来ないことを考える

一番大事なことは「大手チェーン店に勝とうとしない」ことだ、と三戸氏は指摘する。
経営管理手法と規模経済を存分に駆使する大手飲食チェーンとまともに張り合おうとすること自体がそもそもの間違いであり、個人経営の飲食店が取り入れるべき施策は、「知り合いを巻き込み、コミュニティー化すること」。大前提の理論として、初めに知人を「お店を愛してくれるお客さん」 として巻き込み、次に、新しいお客さんを呼び込むことが重要。そして、忘れてならないのが徹底したSNS管理(例:FACEBOOKグループ)だ。このコミュニティ管理こそが、個人経営の飲食店だからこそより幅広く、そして深く追求できる強みなのである。
飲食店向けのカンファレンスイベント「FOODIT」で堀江貴文氏が主張した「飲食の究極は人と人とのコミュニ ケーションの場である、ということであり、店主とその場所に集う常連客の『場』を作れるかど うかが重要。場を作ることができれば、友達も、その友達も継続的に来店してくれる」 は、まさに本質である。

人のふんどしで相撲をとる

次に、「初期コストをどう抑えるか」という問題へのひとつのアプローチの有効な手段として、三戸氏は「誰かの飲食店をプレマーケティングに使う」ことを提案した。
時間帯がかぶらない業態同士で組み、朝、昼、夜、深夜で、違う営業をするというやり方を駆使することで、家賃と減価償却(初期投資)をシェアできる。こういう発想をもてば、独りよがりの内装にお金をかけることが愚策であるかが分かるだろう。どんな業態でもユニバーサルに利用できる店づくりを意識した方がよいのだ。あるいは店を持たずに、宅配から始めるといのもひとつだろう。最近では、UberEATSや出前館など、レストランからの宅配を行ってくれるサービスも存在するので、いまならそれが可能だ。いかに設備投資にお金をかけないかを考えることで、 投資回収の罠から抜け出せることができるのである。 (Photo by iStock)

みんなに投資してもらう

3つ目に、「今ならでは」の成功の手法としてクラウドファンディングを提示している。 一昔前なら考えられなかったことだが、いまなら開店資金をクラウドファンディングで集めるこ とが可能なのだ。 まずクラウドファンディングを利用することによって、先行投資額が劇的に軽減される。これは、なによりの魅力である。飲食店の開業コストが1,000~2,000万円程度と考えた場合、オープン前 から1,550万円を集めることがどれだけ有利となるかは容易に想像できるだろう。また、クラウドファンディングに参加した人は「設備投資に参加した」という意識をもつため、開店後、必ず店に足を運んでくれるというメリットも大きい。 さらに、クラウドファンディンは「プレマーケティング」にも使える。クラウドファンディングの時点で注目を集めれば、多くの人の目に触れる。また、寄せられた様々な意見から、自分たちの コンセプトが受け入れられるのかを確認することができる。こんなワインを揃えてほしいとか、 こんなシーンで使いたいなど、店の内装が始まる前に要望を教えてくれるのだ。 (Photo by iStock)

お店以外で稼ぐ、を考える

飲食店をやるうえで、「お店で稼ぐ」という以外の発想を持つことも重要であると三戸氏は説く。 あなたに料理の腕があり、おいしいものを食べさせたいという本心から飲食店を経営したいと考 えているのであれば、自らが相手方におもむき、料理を提供するという方法もある。 欧米ではシェフを自宅に招いてパーティをするという文化が根付いているが、日本でも企業研修 の打ち上げや業界団体の催事などではケータリングが振舞われる。こうした「派遣業」も、立派な稼ぎの柱になる。 このようなパーティや催事は、土日の昼間などに開催されることが多いが、特に日曜日にはほとんどの飲食店が集客に苦労することから、自らが出向く「派遣スタイル」の機会を増やし、全体 の稼働を上げれば良い。シェフ派遣や料理教室で、その場に15人を集め、一人1万円が取れると すれば、1回15万円。コミュニティを変えて月に6回やれば90万円となる。食材以外はコストがか からないことから、原価率を30%に抑えることができる。つまり、63万円がまるまる利益となる のだ。月に6万円を稼ぎ出すのがいかに大変か、は前回述べた通り。この出張サービスがいかに効率の良いものであるかがわかるだろう。 (Photo by iStock)

さて、ここまで述べてきたことは、誰にでもできることではない。誰がやってもうまくいく、と いうことでもない。あくまで、成功している飲食店の実際的な事例を提示しただけである。むし ろ、これぐらいのことを考えないと飲食店で成功するのは難しいのだ、ということを伝えたかっ た。 飲食店経営は、終わりなき戦いであり、あくなき追求が必要となる。経営学の全てをつぎ込んだ 全方位戦略が必要となるビジネスモデルである。そんな戦地で勝ち抜くのは至難の業。そこで人 生を消費するのは、やはり得策とは言えない。 だから、自分の特異な事業領域で戦えばいいのだ。退職後、あるいは脱サラ後の選択肢はひとつ ではない。筆者はこれからも、「飲食店以外の選択肢」を読者の皆さんに提供していくつもりだ。