カナダ・モントリオールでの世界選手権で負傷し、連覇や連勝記録が途絶えた体操・内村航平。世界が驚きに包まれたケガから2週間後、練習を再開した絶対王者は何を思っているだろうか。

リオ五輪で44年ぶりの個人総合連覇を果たし、悲願の団体金メダルも獲得した内村は、体操の魅力を伝えようと、日本体操界初となるプロへの転向を決意した。実際、今年の内村は体操教室や体操マンガの監修など、活動の幅を広げている。

一方で、五輪後に「限界が見えてきちゃった」と漏らしていた内村は、苦しみながら4月の全日本選手権でプロ初勝利と10連覇を達成。「歳とった」という率直な感想とともに、連勝継続を「地獄」と表現した。勝利への意欲と「負けたら楽になる」という思いの狭間で揺れる王者ゆえの苦悩だ。

それでも、採点方法が厳しくなったことで、より正確さと美しさが求められるという新たな挑戦が刺激となり、「自分の探求心、無限やん」と内村の闘争心に火がついていく。“体操好き度”が「過去最高」とした内村は「好きと極めたいは一緒」「極めたいのは愛しているということなんじゃないか」「愛していますよ。キモイっすね」と、体操への想いを明かした。

もちろん、目指すは東京五輪だ。「ここで終わりだったらもったいない」「死んでもやりたい」と、母国開催の五輪に強い想いを抱く内村は、「難しいことを1年目からやっていって東京五輪で完成させる」と、3年後に向けて作戦を練っていく。

そして、リオ五輪を上回る過去最高難度の構成を物にし、迎えた10月の世界選手権。2種目目の跳馬でリ・シャオペンを成功させたものの、着地時に左足を痛めた内村は、続く平行棒でも着地で踏ん張ることができず。選手生命への影響を危惧したコーチの勧めに応じ、内村は棄権した。

左足首の前距腓靭帯不全断裂と診断された負傷から2週間後の18日、落胆の色を微塵も感じさせずに練習を再開していた内村は、連勝ストップは「本当に何とも思っていない」と断言。連勝だけを目指していたわけではない自分に安堵したと述べ、「不完全燃焼すぎて、とりあえずなんでもいいから試合やらしてくれっていう感じ」と、復帰への意気込みをあらわにした。

「1種目でも抜けると面白くなくなる」「ずっと6種目でやってきた自負はある」と、個人総合を戦い続けることへのプライドを隠さない内村。限界が見えつつあるとしながらも、「突破してやりたいって気持ちのほうが大きい」と語る王者は、「がむしゃらに、どこまででも、努力してみようかな」と、燃える闘志をうかがわせた。