長崎にファンマあり! 初来日から9か月、瞬く間にJ2を代表するストライカーのひとりに。(C)SOCCER DIGEST

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 V・ファーレン長崎が、熱い。
 
 土曜日のJ2リーグ38節、名古屋グランパスとの大一番は、88分にシモビッチのPK で先制されるも、その2分後に追いつく執念の粘りを見せ、1-1のドローに持ち込んだ。歴代2位となる1万2923人の観客を集め、これで9戦負けなし(6勝3分け)。自動昇格枠を争う2位・アビスパ福岡に、勝点で並んだ。
 
 名古屋戦の土壇場で豪快ヘッドを決め、チームの窮地を救ったのが、スペイン人ストライカーのファンマである。
 
 本名はファン・マヌエル・デルガド・リョリア。188センチ・88キロの偉丈夫で、11月17日に27回目の誕生日を迎える。サンビセンテ、CDデニア、アラベスとスペイン3部リーグで研鑽を積み、その後、ギリシャ、スコットランドの1部リーグで活躍。2016-17シーズンの前半戦はハーツ(スコットランド)からスペイン2部のムルシアに貸し出され、今年の1月に長崎の地を踏んだ。
 
 ラガーマンのごとき筋骨隆々の体躯と、プロレスラーのごときワイルドな風貌。しかしながらこちらが拍子抜けするほど当人は礼儀正しく、かつ謙虚だ。入団からの9か月をこう振り返ってくれた。
 
「もともと日本のフットボールにはいいイメージがあって、実際に来てみて、本当に質が高いなと感じている。ここまでの9か月ですでに得難い経験をしてきた。なによりV・ファーレンというチームでプレーできて嬉しいし、ここ長崎はとても暮らしやすい。僕に合っていると思う」
 
 38節を終えて、29試合出場・11得点。チームを昇格争いに導く原動力のひとつとなり、一躍脚光を浴びている。こんな掘り出し物をクラブはどんな伝手で見つけてきたのか。元日本代表FW、高木琢也監督もみずからスペインに赴き、獲得交渉に携わったという。
 
「監督と強化部の方がスペインまで僕のことを観にきてくれて、そこから一気に話が進んだ。V・ファーレンのビジョンやプロジェクトを聞き、これは素晴らしいと思い、日本でプレーしようと決意した」
 
 指揮官はどこをどう評価して、ファンマ獲得の決断に至ったのか。このいきさつがなかなか面白い。
 
「ここまでの(ファンマの)出来は、だいたい思い描いていた通り。行っても10点くらいかなと。彼は二桁取ったシーズンがあまりないんですよ。データは嘘を付かない」
 
 高木監督のインプレッションだ。確かにファンマはゴールを量産するタイプではない。キャリアの中でシーズン二桁得点を奪ったのは、スペイン3部時代と、2015-16シーズンにハーツで記録した12得点の二度だけだ。それでも指揮官は、彼をチームに迎えると決めた。なぜか。
 
「とにかく巧さのある選手。ハマれば点も取ってくれるかなと思ってましたが、むしろ彼を活かしながらシャドーがゴールを奪えるだろうと考えてました。実際にそうなってますよね。得点源がひとつしかないと、抑え込まれた時に厳しくなる。それではJ2は勝ち抜けない。ファンマのボールの収め方は、なかなか日本人にはないもので、細かいところも本当に巧いんですよ」
 
 オフに新助っ人を物色するなかで、高木監督はターゲットマンとなれる大型のストライカーをリストアップした。いくつかの選択肢が浮上するなかで、絞り込んだのがオランダ人とスペイン人の2選手。「ただ大きいだけの選手であれば、日本のディフェンダーはむしろ得意というか、上手く対応できるんですよ。オランダ人はそれこそかなりの長身でしたけど、僕が求めているタイプではなかった」。そしてもうひとつの選択肢であるファンマに、白羽の矢が立った。
 
「ムルシアでのプレーを日本にいながらリアルタイムで観て、かつハーツ時代のも含めて10試合くらいはチェックしましたね。目を見張ったのは、そのディフェンス。どの試合でも本当によくディフェンスをしていた。で、実際に現地で試合を観たら、やはりそこが素晴らしい。加えて足下の巧さがある。獲ろうと決めましたね」