昨年のリオデジャネイロ五輪で史上初となるシングルスでの銅メダル獲得を果たし、日本卓球界の絶対的エースとなった水谷隼は、今年6月の世界卓球でまさかの2回戦敗退に終わった。しかも、敗れた相手は当時13歳の張本智和だ。

世界卓球で史上最年少でのベスト8を果たした張本は、未来のエース候補として世の中の期待を集めている。では、その張本の躍進の裏で、敗れた水谷は何を思っているのだろうか。

22日放送、テレビ東京『追跡LIVE! Sports ウォッチャー』で、水谷は以前から張本を評価していただけに「遅かれ早かれ自分が負けるのも時間の問題だと思っていた」と明かした。そのタイミングが世界卓球だったのも「ちょっと負けるのが早かったなくらい」の感想だったという。

もちろん、負けた悔しさはある。だが、水谷は何を言っても結果は変わらないとしつつ、「過去の結果や記録は消えない」ともコメント。「今まで自分が積み上げてきたものは一生消えない」「それが残るのであれば別になんとも思わない」と、これまでの実績に胸を張った。

水谷があっさりと敗北を認め、受け入れたのは、負けたことで気づいたことがあったからだ。五輪でのメダル獲得で以前のような“ガツガツ感”がなくなり、「負けてもいいかな」という思いがあったという。様々な大会で優勝し、世界の舞台でメダルを獲ったことで、満足感を覚えてしまったのだ。

これでは、高いレベルで戦っているだけに、高いモチベーションとパフォーマンスを維持し続けるのが難しい。張本に負けたときは、闘志が消えかかっていたのである。だからこそ、「五輪が終わってから甘えていた」という水谷は、敗北も「しょうがない」「自業自得」と受け入れた。

水谷は「張本が勝ってくれたおかげでより引き締まった」と、結果的に自身に喝を入れてくれた後輩に感謝する。「真摯に卓球に向かっている選手が良い結果を残し、自分みたいに1年間ふらついていたら悪い結果になるということを再認識させてくれた」。

未来のエースから変わるきっかけをもらい、日本の絶対的エースは今、再び前を見ている。継続してきたことで五輪でメダルを獲得できたという水谷は、「これから3年間さらに継続してやっていくことで東京五輪での金メダルもみえてくる」とコメント。「大きな試合で結果を残したい」と、完全復活に向けて意気込んだ。