東口順昭(撮影:岸本勉/PICSPORT)

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2016年3月、アフガニスタン戦でゴールを守ったとき、試合後の東口順昭には失望の色が浮かんでいた。相手が打ったシュートは1本だけ。しかも味方がブロックしていて東口を脅かすことはなかった。そのときから待ち続けた出番は、10日のハイチ戦でやっとやってきた。

日本は17分までにあっさり2点をリードする。これで気が緩んだのは間違いないだろう。またサッカーで2点差が怖いのも間違いない。28分、ゴール前にスルーパスを通され、ケビン・ラフランスに1点を許すと、53分、FKを右サイドでつながれゴール前に入れられたときはマークが混乱していてデュカン・ナゾンにあっさり同点とされる。

さらに78分、今度はナゾンが見事なミドルシュートを東口の頭上を破って決め、日本は逆転された。試合終了間際の香川真司のゴールで何とか引き分けに持ち込み、面目だけは保った日本だが、無様な試合運びになってしまったことは否めない。

東口は苦悩の色を浮かべつつ、それぞれの失点について語った。

1点目は「もうちょっと飛び込みたかった」という。相手がカットインしてきたので、DFにはいろいろな状況が考えられるようになり、中央が空いてしまったのだという。ではなぜ一瞬東口は遅れたのか。実はラフランスのトラップがちょっと伸びたのだそうだ。もし相手が想定していたとおりにきちんとトラップしていれば、また結果は違ったかもしれない。だが、この失点で日本は一気に流れを失った。

2点目は笛でリスタートするのだろうと日本の選手たちは想像していたという。だが、本当に層なのか確認する選手はおらず、しかも予想もしていないというチームとしての未成熟さを露呈してしまった。「ああいう失点をしてたら、これからもう戦っていけない」と臍(ほぞ)を噬む。

3点目はどうか。ナゾンのシュートは見事だったが、誰がDFが詰められれば防げたのか。東口はそれよりも、「あそこに自分が触りたいというもありますし、触れるようになりたいとも思います」と考えていた。「もっともっと、ああいう際どいコースのシュートを取っていかないとワールドカップでは難しいと痛感しました」。東口は苦悩に満ちた表情で語った。

「こういう相手を無失点に抑えて信頼を勝ち得なければいけなかったと思いますし、結果がすべてなので。相手を僕は選べないので、もっともっと……アピールしなければいけない試合でした」

しばらく考えた後、東口は「また切り替えてやるしかないですね」とポツリと言った。次の出番こそ、東口にとって本当の正念場となるだろう。

【日本蹴球合同会社/森雅史】