正規とプレーオフ、2回の18番で静かにこぶしを握ったDJ(撮影:GettyImages)

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米ツアーのプレーオフ第1戦、ノーザントラスト最終日。サドンデス・プレーオフの1ホール目でジョーダン・スピースを下したダスティン・ジョンソンの勝ち方は圧巻だった。
松山英樹はこの大会でまさかの予選落ちに
スピースから3打差の2位で最終日を迎え、4バーディー・ノーボギーでスピースを捉えたこの日のジョンソンの見せ場は72ホール目と73ホール目の18番(パー4)だった。
72ホール目。ティショットを右ラフに入れたジョンソンは、2打目でグリーンを捉えられず、第3打はピン奥5メートルへ。スピースは1メートルのパーパットを残して待っていた。
ジョンソンは5メートルを入れるしかない。だが、すでに夕暮れどきでグリーン上には不揃いに伸びたポアナが複雑怪奇なラインを作り出していた。上からの5メートルがすんなりカップに沈む確率はきわめて低いと思われた。だが、彼はこれを見事に沈め、右こぶしを小刻みに握り締めた。
その生き残り方には執念が感じられ、ずっと昔に見た映画『ダイハード(Die Hard)』が思い出された。死にそうになりながらも決して諦めず、生き残り、復活するあの映画の主人公とこの日のジョンソンがどこか重なって見えた。
そんなふうに72ホール目で辛くも生き残ったジョンソンは、勝敗の決着をサドンデス・プレーオフへ持ち込み、そこで文字通り、勝負に出た。
18番は左ドッグレッグ。72ホール目でティショットが突き抜けてラフにつかまり、窮地に陥ったジョンソン。プレーオフでは安全に3番ウッドやアイアンを握ったかと言えば答えはノー。迷うことなくドライバーを握り、池越えのショートカットで果敢に攻めた。
341ヤードをかっ飛ばし、グリーン手前の花道へ。残り95ヤードをウエッジでピン1メートルへピタリと付けた。一方のスピースはフェアウエイからの182ヤードがグリーンをわずかにこぼれ、パーを取るのが精いっぱい。ジョンソンが余裕さえ漂わせながら沈めた1メートルのバーディーパットが彼のウイニングパットになった。
ジョンソンのハイライトは72ホール目のパーパット、73ホール目のティショット、セカンドショット、そしてウイニングパット。最後の4打すべてにおいて、人々を魅了し、見せ場を作った。
ジョンソンは今季序盤に出場3試合連続優勝を達成し、「僕のキャリアで最高の状態」を自認していたが、4月のマスターズで開幕前日に階段から転落して腰を強打。泣く泣く欠場を決めたあの日以降、成績は振るわなくなった。
腰の回復を待って試合の場に復帰したら「遅れを取り戻そうとして焦りが出た」。空回りが続き、それでも必死に練習を積んだが、積んでも積んでも勝利から遠ざかった。全米プロ後の先週、思い切ってバハマへバケーションに赴き、ダイビングを楽しんで心身ともにリフレッシュ。
そして今週は、苦悩してきたパットを改善するため、昨秋から愛用してきたテーラーメイドのスパイダーツアーを、昨年の全米オープン優勝時に手にしていたスコッティキャメロンとそっくりのテーラーメイド・プロトタイプに持ち替えてみた。
パターチェンジのみならず、打ち方も変えた。「いろいろ考えすぎてメカニカルになりすぎていた。自分のフィーリングで、ただパットすることにした」。それが功を奏して最終日は猛追に成功し、そしてあの72ホール目のスーパーパットにつながった。
73ホール目のドライバーショットは、72ホール目の失敗を反省した上で、さらなる失敗を恐れることなく、攻めの一手で勝負に出た強気の選択だった。今週はウエッジの練習に最も時間を費やしてきたというジョンソン。ドライバーにもウエッジにも自信があったからこそ、攻めのルートを取ることができた。
「やっと自分のゲームが戻ってきた。マスターズ前のあのころに戻って来れたと感じている。この優勝で大きな自信も戻ってきた」。
今季4勝目、通算16勝目を挙げ、春先の絶好調から、夏場の不調を経て、シーズン終盤の大事なプレーオフシリーズに突入した今、再び好調を取り戻したジョンソン。
彼は、やっぱりダイハードである。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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