鹿島の安部がJ1初ゴール決めるなど頭角を現してきた。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ19節]鹿島3-0甲府/7月29日/カシマ/18,413人
 
 強豪セビージャを手玉に取り、一気にその名を上げた安部裕葵が、その1週間後の甲府戦でJ1初ゴール。76分から途中出場すると90分、DFの裏に抜け出し、GKを冷静に交わしてシュートを沈めた。その得点シーンを試合後、本人はこう回想した。
 
「レアンドロが横にワンツーで入ってきてくれて、その時点で勝負ありでした。僕はギアを上げて動く必要もなく、ただただジョギングくらいの感覚で(相手がレアンドロに食いついて空いた)スペースに走っだけ。彼のパスが9割と言っていいくらい、良いところに流してくれた。レアンドロに感謝したいです」
 
 謙虚な気持ちが滲み出ているコメントだが、勝負を分けたポイントを説明する様は頭の良さを感じさせた。その頭脳は、まさに戦術眼そのものであり、76分にピッチに立つまで試合を冷静に分析していたそうだ。
 
「外から見ていた感じではトップ下のスペースが空いていた。そこのスペースは得意でもあるし、思う存分使おうと思っていた」
 
 たしかに、わずか14分のプレータイムのなかで、ボールを受けたスペースはほとんどがバイタルエリアだ。そして、パスをもらっては素早くターンをして前線につなぎ、攻撃の潤滑油となっていた。
 
 そんな171センチの小柄な30番に大岩剛監督も賛辞を送る。
 
「非常にアグレッシブにやっていた。今日は2トップのひとりとして入ってもらったが、得意としている間で受けることや仕掛けるところは彼の良さが出ていた」
 
 確かな成長曲線を描いている安部。優れたサッカーIQと持ち前のドリブルを存分に活かせるようなった最近は、アシストやゴールといった結果もついてきている。数字が出れば慢心もしかねないが、18歳のアタッカーはいたって冷静だ。
 
「得点を取るとメンタル的にも自信になるが、結果が出ている時こそ、内容にこだわる。地に足をつけて、日々の練習を頑張れるようにしたい」
 
 このコメントに対して記者からの「それは常勝軍団・鹿島に入団したことが影響したか?」という質問には、語気を強めてこう述べた。
 
「結果が出ている時こそ足もとを見つめるのは、鹿島に入ってからではなく、自分のポリシー。こういう時こそ得点以外のところにこだわるのが大事。結果が出れば良いけど、上手くいかない時は絶対にある」
 
 サッカーの才能はさることながら、メンタルもひと味違う安部は「僕のような立場の選手が底上げをしないと、リーグ戦で優勝するのは難しいと思う」とスタメン定着へギラギラ感も漂わせる。充実ぶりが窺える鹿島の若武者が、常勝軍団でメキメキと頭角を現してきている。
 
取材・文:志水麗鑑(サッカーダイジェスト)